漢方薬で症状改善『胃腸のトラブル』

胃腸のトラブルに対しても、漢方薬はよく使われています。 最近、漢方薬がなぜ効くのかが、科学的にわかってきました。


■胃腸のトラブル①胃もたれ、胃痛

胃もたれや胃痛などの胃の症状があるときに、まず注意しなければならないのは、 「胃癌」「胃潰瘍」などの病気で起こっている可能性があることです。 まずは、医療機関で内視鏡検査などを受けて、こうした病気がないかどうかを調べてもらいましょう。 原因となる病気が見つからないのに、胃もたれや胃痛などの症状が続くのであれば、 「機能性ディスペプシア」が疑われます。 これは、以前なら慢性胃炎や神経性胃炎といわれていた状態のことですが、その原因はよくわかっていません。 このように、原因がはっきりしない症状の改善には、漢方薬が向いています。 実際に、機能性ディスペプシアの治療において、漢方薬は治療の柱の一つになっています。 患者さんの症状や体質などによって向いている漢方薬の種類はさまざまですが、特によく使われているのが「六君子湯(りっくんしとう)」です。 近年、六君子湯が胃の症状に対して効果を現す仕組みが、科学的に証明されつつあります。 六君子湯を飲むと、胃壁の筋肉がリラックスして広がりやすくなることがわかってきたのです。 胃が広がると、胃の中の食べ物が腸へと移動しやすくなり、胃もたれなどの症状が改善されます。 このほか、食欲を増進するグレリンというホルモンの分泌量を促して食欲不振を改善する効果や、 胃粘膜の血流を促し胃痛を和らげる効果もあることがわかってきています。

◆自分に合った漢方薬を見つけるために

漢方薬は、一つの症状に対して、他の症状や全身の状態、体質などを考慮して、さまざまな種類の物から、最も合う薬が選ばれます。 例えば、「とにかく胃が痛い」という場合でも、他に食欲不振や胃もたれなどの症状もあるかによって、合う漢方薬は異なります。 自分に合った漢方薬の処方を受けるためには、医師に自分の症状を詳しく伝えることが大切です。


機能性ディスペプシアに対する処方例


■胃腸のトラブル②便秘や下痢

器質的な病気はなくても、体質的に「便秘」下痢が起こりやすい人がいます。 市販薬を使っても、やめるとまた便秘や下痢になってしまうという人も少なくありません。それは、体質が関係しているからです。 このような体質の改善にも、漢方薬は役立ちます。ただし、同じ「便秘」あるいは「下痢」という症状でも どのような体質が原因で起こっているかによって、合う漢方薬は異なります。

便秘や下痢に対する処方例


◆過敏性腸症候群の場合も

検査をしても腸に炎症や潰瘍などの異常が見つからないのに、腹痛や腹部膨満感を伴う便通異常(便秘や下痢)を繰り返す場合、 「過敏性腸症候群」の可能性があります。 過敏性腸症候群は、主に便秘が起こる「便秘型」、主に下痢が起こる「下痢型」、便秘と下痢のどちらも起こる「交代(混合)型」などのタイプに分けられます。 いずれのタイプも、ストレスによって自律神経のバランスが乱れ、腹痛が起こると考えられています。 漢方薬は、過敏性腸症候群のようなストレスが大きく関係する症状の改善にも役立ちます。 心と体は一つであり、心の状態が体の症状として現れると考えます。そのため、心身両面が治療の対象になります。

過敏性腸症候群に対する処方例


◆漢方薬を使う際の注意点

漢方薬を飲んでいても、おなかを冷やすような生活をしていては胃腸の症状はなかなか改善しません。 漢方医学では、腸の働きを整えるためには、おなかを温めることが大切だと考えます。 できるだけ温かい飲み物や食べ物を摂ったり、おなかを冷やさない服装を心がけたりするようにしてください。