朝・昼・晩の不整脈予防
血圧や心拍数が急変する朝は、不整脈の多発する魔の時間帯で、防ぐ妙薬は『大の字伸ばし』。 早朝に胸の圧迫感があり、肩・背中まで痛む安静時狭心症の発作を防ぐ特効法『3種のアロマ』 急な温度変化は不整脈を招きやすく、トイレの便座は温めておき、男性でも坐って排尿せよ。 突然脈が速まり強い動悸を感じる上室頻拍の発作は、息を止めて行う『10病息止め』でピタリ消失。 日中に起こる不整脈の予防には横隔膜を鍛えるのが重要で、最高は歩きながら行う『おなか引き』。 体を休める入浴中に不整脈が起こる人も多く、防ぐには湯を40℃、湯面は心臓の高さに保つ。
■朝の不整脈予防
●「大の字伸ばし」
起き上がる前に必ず行おう
午前4時から6時頃までは、「自律神経の嵐」が起こる時間帯といわれています。
自律神経とは、私たちの意識とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経のこと。
自律神経のおかげで、眠っている間も心臓や肺は働き続け、生命を維持させているのです。
ところが、自律神経のうち、副交感神経から交感神経に切り替わる朝は、血管が収縮して血圧や心拍数が変動しやすくなるなど、
体の中に嵐が通り過ぎるような急激な変化が生じます。そのため、朝は心臓に負担がかかって不整脈が多発しやすくなります。
特に気をつけたいのは起床時。朝、急に飛び起きると自律神経のバランスが乱れて不整脈を起こしやすくなります。
これを防ぐためには、布団から出る前に、寝たままの姿勢で、軽い運動を行うとよいでしょう。
お勧めの運動は、大の字になって手足を伸ばす「大の字伸ばし」です。手足を伸ばすときは息をゆっくり吐き、
手足の力を抜くときは息をゆっくり大きく吸うようにしてください。
こうすれば、自律神経の乱れが正され、血圧や心拍数の上昇が抑えられて、不整脈の発作を予防できるでしょう。
●「3種のアロマ」
発作の原因となる自律神経の乱れを正す
安静時狭心症は、静かにしているときに胸や背中などの痛みや圧迫感、息苦しさなどの発作が起こります。 朝方に頻発するのが特徴で、原因は冠動脈が急に痙攣を起こして血管が詰まり、血流が悪くなることです。 安静時狭心症が起こる早朝は、自律神経が乱れている時間帯で、これが発作の引き金になっていると考えられます。 発作を解消するには、大きな原因となる過度な飲酒と喫煙を控え、質のいい睡眠を取ると、起床時の自律神経の乱れが無くなり、 発作が起きにくくなります。また、起床時の発作を抑えるとても簡単な方法があります。 それは、アロマオイル(精油) を利用して起床時間に自分の好きな香りをかぐことでです。 特に、自律神経の乱れを正したり、目覚めをスッキリさせたりする効果を期待するなら、レモングラス、ペパーミント、 ローズマリーを試してみるとよいでしょう。 アロマオイルの香りを発散させるには アロマディフューザーなどの機器を利用します。 最近は、起床時に自動で作動するタイマー機能が付いたものもあるようです。 なお、明らかに安静時狭心症であると診断され、発作の症状が重いようであれば、 「カルシウム拮抗薬」という特効薬があるので、病院を受診して処方してもらうといいでしょう。
●「冬のトイレに注意」
冬のトイレは血圧が上昇する危険な場所
冬の朝は、急な温度変化に体がさらされることが多いものです。暖から寒への急激な変化は、血圧の上昇を招き、 不整脈の発作の引き金になります。特に朝のトイレは心臓に負担をかけやすい危険な場所なので、 不整脈を起こりにくくする工夫が必要です。洋式トイレであれば、暖房付きの便座を用意してあらかじめ温めておくか、 その用意ができない場合は便座カバーをして下さい。できれば小型の暖房器具も置いて、トイレ内を暖かな空間にするように 心掛けましょう。なお、血圧の急上昇を避けるには、排便時に強く息まないことが重要。 また、排尿時は、男性でも便所に座ってゆっくりとした気持ちで排尿するとよいでしょう。 トイレを温かくしても、廊下が寒い場合もあります。トイレに行くときは上着を1枚はおり、スリッパも履くようにしましょう。
■昼の不整脈予防
●「10秒息止め」
医療機関でも行う安全な方法
「上室頻拍」とは、心臓の鼓動が突然速まって強い動悸を感じ、しばらくすると元に戻るという不整脈です。 心臓に流れる電気信号の通り道の異常が原因であることがわかっています。 私たちの心臓は、心臓を動かすための電気信号が心臓の中を隅々まで正しく伝わることで、規則正しく脈打っています。 正常な状態であれば、洞結節(電気信号の発生場所)という場所で発生した電気信号は、一方通行で心臓中を伝わって、 消えていきます。ところが何らかの原因で異常な電気回路ができたり、生まれつき余分な電気回路があったりする (WPW症候群)と、突発的に電気信号が空回りを起こし、脈が速くなるのです。 発作の時間は数秒から数時間で、起こる回数も様々です。発作の時間が短い場合は動悸を感じる程度ですが、 発作が長時間に及ぶと、息苦しさやめまいを伴って、やがて手足が冷えてきて顔面が蒼白になり、 さらにひどくなると意識が遠のいたり、吐き気を感じたりします。
上室頻拍は、発作による命の危険はありませんが、繰り返し症状が現れたり、生活に支障が出たりするようであれば、 薬などを使った予防治療が行われる場合があります。しかし、重症の心臓病がなく、発作の頻度が少ない場合には、 自律神経の一つである副交感神経に働きかける「迷走神経刺激」を行います。 迷走神経というのは、脳神経の一つで副交感神経と深い関係があります。 実は、迷走神経を刺激すれば副交感神経が優位になるため、不整脈の発作が抑えられるのです。 迷走神経を刺激するには、「頸動脈をマッサージする」「顔を冷水に浸ける」など、いくつかの方法があります。 これらの中でも、いつでもどこでもできて、極めて効果的で安全な方法が「10秒息止め」です。 10秒息止めは、息を大きく吸ってから止め、10ほど強く息むというもの。専門的には「バルサルバ療法」といい、 迷走神経を刺激して脈拍を低下させる効果があります。医療機関でも行う方法なので、上室頻拍の発作で悩んでいる人は、 ぜひ試してみてください。
●横隔膜の動きが悪いと不整脈を招きやすい
不整脈の発作を起こす人の中には、交感神経が優位になって、呼吸筋の一つである横隔膜の動きが悪くなっている場合がよくあります。 このような人は、活動量の多い日中に息苦しさが強まり、不整脈の発作も起こりやすくなります。 ですから、横隔膜を鍛えて自由に動かせるようにする必要があります。 そこでお勧めなのが「おなか引き」です。 これは、息を吸うときも吐くときもお腹をひっこめる運動で、横隔膜が強まって呼吸がしやすくなります。 また、副交感神経も優位になるので、不整脈の発作を起こりにくくすることができます。
■晩の不整脈予防
●シャワーを使ってお湯をためるといい
一日の疲れを取る入浴は、心身をリラックスさせてくれますが、入り方を間違えれば、不整脈を多発する危険があります。
そこで、発作を回避する入浴法のポイントを紹介しましょう。
まず、急激な温度変化を避けるため、脱衣所や浴室は温めておき、湯船に入る前には、足元から徐々にかけ湯をするようにしましょう。
寒い時期には、脱衣所には暖房を設置します。シャワーを使って浴槽にお湯をためるようにすれば、浴室内も暖まります。
また、湯が熱すると、交感神経を刺激し、血圧や心拍数を上げることになるので、湯温は40℃程度にします。
浸かるときは、湯面と心臓の高さが同じくらいになるようにすると、心臓への負担がかかりません。
そのほか、飲酒後すぐに入浴しない、長湯は避けるといった注意も発作予防には重要です。