慢性骨髄性白血病

『慢性骨髄性白血病』は、自覚症状のないまま見つかることの多い病気です。高齢者に多く起こります。 慢性骨髄性白血病は、薬で治療し、進行を防ぐことができる病気です。 生活や仕事も発病前同様に続けられます。

■慢性骨髄性白血病とは?

血液を作る造血幹細胞に異常が起こる病気

血液癌は、他の癌と同様に高齢になるほど起こりやすく、高齢者の増加により患者数が増えてきています。 代表的なものは、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫です。


●病気の仕組み

私たちの血液の中には、白血球、赤血球、血小板、リンパ球などの血液細胞が流れています。 それらは、骨の中の骨髄にある「造血幹細胞」が分化・成熟して作られます。 大本の造血幹細胞に異常が発生するのが『慢性骨髄性白血病』、 造血幹細胞が分化した骨髄芽球が癌化したものが「急性骨髄性白血病」です。 急性骨髄性白血病が週単位や月単位で症状が進むのに対し、慢性骨髄性白血病は、年単位でゆっくり進行します。 慢性骨髄性白血病で造血幹細胞に異常が起こると、白血球に分化・成熟するまでの各段階で未成熟な細胞が増え続け、 血管内に癌化した白血球(白血病細胞)が充満していきます。 白血球数の基準値は4000〜8000個/mL程度ですが、2万、3万と極端に増えれば、白血病が疑われます また、そこまで数値は高くなくても、健康診断などで年々数値が上がっている場合にも注意が必要です。


●主な症状

慢性骨髄性白血病を発症しても、白血病細胞の一部は、正常な機能を持っているので、自覚症状はほとんどありません。 そのため、慢性骨髄性白血病は、健康診断や他の病気の検査で、自覚症状がないまま見つかるケースが大半です。 しかし、治療をせずに放っておくと、発症から3〜5年ほどで急性白血病に変わります(急性転化)。 急性転化を起こすと治療が困難になるため、慢性のうちに発見し、治療を始めることが大切です。




■検査

染色体や遺伝子検査まで行い、診断が確定する

白血球の異常を指摘された場合は、血液内科などで、血液検査、骨髄検査、染色体検査、遺伝子検査を行います。

▼血液検査
造血幹細胞に異常が起こると、白血球のほぼすべての細胞が異常を起こします。 なかでも、好中球が最も増えるので、白血球の種類を調べ、未熟な好酸球があるなど白血病が疑われれば、骨髄検査を行います。

▼骨髄検査
骨盤を形成している腸管に針を刺し、少量の骨髄液を採取し、白血病細胞の有無などを調べます。

▼染色体検査
私たちの細胞には23対の染色体があります。慢性骨髄性白血病では、9番と22番の染色体の一部が切断され、入れ替わっています。 入れ替わりが起きた22番の染色体を「フィラデルフィア染色体」と呼びます。 この検査では、フィラデルフィア染色体の有無を調べます。

▼遺伝子検査
フィラデルフィア染色体上には、本来は離れているBCR遺伝子とABL遺伝子が結合した「BCR・ABL遺伝子」という異常な遺伝子が存在しています。 染色体や遺伝子検査でこれらが見つかれば、診断が確定します。

■治療

4種類の分子標的薬から適切な薬が選択される

慢性骨髄性白血病の治療の基本は、「薬物療法」です。 最近は少なくなりましたが、若くて体力のある患者さんには、「骨髄移植」なども検討されます。 以前は、慢性骨髄性白血病になると、はとんどの場合が数年で急激に悪化し、移植以外では治療が困難でした。 しかし、2001年に「イマニチブ」という「分子標的薬」が登場して以来、薬を飲み続ければ、糖尿病や高血圧などの慢性病と同様に、 症状がコントロールできるようになっています。イマニチブを使った場合、5年生存率が89%という高い結果が得られています。

●分子標的薬の働き

フィラデルフィア染色体のBCR・ABLという異常たんぱくが作られます。 そこにエネルギー物質が結合すると、白血病細胞が無尽蔵に作られます。 分子標的薬は、このBCR・ABLたんぱくと結合して、エネルギー物質の結合を妨げることで、白血病細胞の増殖を防ぎます。 ただし、この分子標的薬は、大本の癌化した造血幹細胞を死滅させることはできません。 そのため、薬を飲み続けて、病気の進行と急性転化を防ぎます。


●分子標的薬の種類

イマチニブを第1世代とすると、第2世代として、2009年にニロチニブダサチニブ、2014年にボスチニブという分子標的薬が登場しました。 健康保険の適用上、最初の治療では、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブの3剤から選択されます。 最近では、ほとんどの場合、イマチニブより効果が高く、副作用が少ない第2世代の薬から使い始めます。 しかし、一つの薬を長く使っていると、BCR・ABL遺伝子が変異し、薬の効果が弱くなることがあります。 3か月ごとにBCR・ABL遺伝子の減少度を調べて薬の効果を判定し、効果が十分でない場合には、他の薬への切り替えが検討されます。 4種類の薬はそれぞれ構造や副作用が異なるので、BCR・ABL遺伝子の変異に応じ、有効な薬を選択していきます。


●分子標的薬の副作用

副作用としては、発疹、貧血、むくみなどの症状が現れる場合がありますが、いずれも軽度で、重篤な副作用はほとんどありません。 不快な副作用がある場合にはほかの薬に替えたり、症状を緩和する薬を追加できたりできるので、担当医に相談してください。 これら4種類の薬が効かないタイプの慢性骨髄性白血病にも効果を発揮するのが、ボナチニブという第3世代の薬です。 すでにアメリカでは使われていて、日本でも1年後(2016年)ぐらいには健康保険の適用になると思われます。


このように画期的な薬の登場で、患者さんの生活は大きく変わりました。 これらの薬は飲み薬なので、外来で治療を受けることができ、それまでと変わらずに仕事や家庭生活を続けることが可能です。 ただし、薬を飲み忘れると効果が落ちてしまうので、きちんと飲み続けることが大切です。
一方、最近の研究では、白血病細胞が消えてから2年間イマチニブを飲み続けた後で服用を中止したところ、 約4割の患者さんが再発しなかったという報告もあります。 このような研究が進めば、将来的には、服薬をやめることも可能になると期待されています。