親指を動かすとピリッと痛む
『ドケルバン病』

親指の付け根や手首が痛む場合は『ドケルバン病』の疑いがあります。 親指を酷使することで起こりやすく、そのままにしておくと日常生活に大きな支障を来します。 早めに受診してください。

■ドケルバン病の特徴

親指の使い過ぎで手首の親指側に痛みが現れる

親指を動かしたときなどに、手首が傷む場合は、『ドケルバン病』の可能性があります。 腱鞘炎の一種で、親指の使い過ぎなどが原因で起こります。 最近(2019年/3月)は、「スマートフォン・サム(親指)」なども話題になっています。 スマートフォンを片手で持ち、親指だけで操作する動作もドケルバン病の原因になると推測されています。 海外の複数の研究では、ドケルバン病を含めた腱鞘炎を患う人は、人口の1〜2%いると報告されています。 これを日本人の人口に当てはめると、100万〜200万人いることになります。 ドケルバン病は、その中でも一定数を占めると考えられており、多くの人が悩んでいると推測されています。 しかし、実際に受診して治療を受ける人は少なく、痛みを我慢している人が多いと考えられています。 そのままにしておくと、痛みが強くなり、親指を動かすのが難しくなるなど、日常生活への支障が多いため、 整形外科を受診して適切な治療を受けることが大切です。


■ドケルバン病が起こる仕組み

手首にある腱と腱鞘がこすれて炎症が起こる

手首の親指側にはひも状の「腱」が2本あります。これが腕の筋肉と連動することで、親指を伸ばしたり、広げたりすることができます。 腱が通っているトンネル状の「腱鞘」もあります。 腱鞘炎は、手指や手首を繰り返し使うことにより、腱と腱鞘がこすれて、炎症が起こった状態のことです。 痛みや腫れ、熱っぽさなどが現れます。この炎症が手首の親指側に起こるのが、ドケルバン病です。

●痛みが現れる特徴的な動作

ドケルバン病の痛みは、手の痛みの中でも強いといわれています。 初めは軽い痛みでも、親指を使わずに生活することは難しいため炎症は治まらず、次第に痛みが強くなっていきます。 腱鞘付近を押すだけで痛みがある場合は、ドケルバン病の疑いがあります。 また、ドケルバン病かどうかを調べるには、「アイヒホフ・テスト」というチェック法があります。 診断にも使われている方法で、親指を中に入れ手を握り、そのまま手を小指の方に倒します。 痛みのためにこの動作ができない場合は、ドケルバン病の可能性があります。


ドケルバン病


■ドケルバン病が起こりやすい人

出産前後、更年期の女性、糖尿病のある人は要注意

ドケルバン病が起こりやすいのは、親指をよく使う人です。手首を酷使すると余計に腱に負担がかかります。 スマートフォンをよく使う人のほか、パソコンの操作、ギターやピアノなどの楽器演奏、スポーツをする人も、起こりやすい傾向があります。 更年期の女性では、親指や手首を酷使していなくても起こることがあります。 原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンのバランスが乱れることで、手がむくみやすくなることが、炎症と関係すると考えられています。 意外に多いのが、出産前後の女性です。特に、出産後数か月の女性では、首の座っていない赤ちゃんを、頭を支えながら抱っこしたり、 抱き上げるときの姿勢が検証に負担をかけるために起こりやすくなるといわれています。 また、糖尿病がある人も、手足の血流が悪くなっているためにむくみやすく、 更年期の女性や糖尿病がある人は、ドケルバン病だけでなく、他の腱鞘炎や手の痛みも起こりやすいので、手の使い過ぎには注意しましょう。 そのほか、40%くらいの人が、2本の腱の間に壁があり腱の通り道が狭くなっているために、腱が圧迫されやすく、 ドケルバン病を発症しやすい傾向があります。


■ドケルバン病の治療

●治療@薬物療法

薬物療法で炎症を鎮め、痛みを抑える

軽度の場合は、消炎鎮痛薬の湿布薬や塗り薬を使います。炎症を鎮めることで、痛みを抑えることができます。 消炎鎮痛薬で症状が改善しないなどの重度の場合は、患部の腱鞘内に炎症を抑えるためのステロイド薬を注射します。 注射の効果は高く、1回の注射で半年から1年程度、症状が抑えられる場合も多く、結果的にそのまま治まる人もいます。 ただし、注射には注意が必要です。炎症を抑える効果の高い薬を短期間に繰り返し注射したり、量を多く注射したりすると、 腱が弱くなって切れてしまう可能性があるからです。 また、注射によって感染症が起こる恐れもあります。特に、糖尿病のある人は感染症の危険性が高くなるので、医師に相談しましょう。


●治療A手術

薬物療法の効果や希望によっては手術を検討する

手術を検討するのは、薬物療法では改善しない場合や、いったん治ったものの症状が再発して繰り返す場合、 糖尿病があり注射による感染症が心配される場合などです。 そのほか、患者さんが注射よりも手術を希望する場合などにも検討されます。 手術では、手首の皮膚を2〜3cmほど切開し、腱鞘を切ります。 腱が圧迫から解放され、痛みなどの症状がなくなります。 腱鞘を切り開いても、手全体の動きには影響しません。手術時間は5〜30分程度です。 手術で切開した腱鞘は、しばらくすると再生しますが、再発することはほとんどありません。


■発症や再発を防ぐために

親指や手首を長時間使い続けない

ドケルバン病の発症や再発を防ぐためには、日ごろから予防を心がけた生活をすることが大切です。 予防のためにはスマートフォンやパソコンの操作、楽器演奏、親指や手首を使った動作や運動をするときは、 少なくとも1時間につき10分程度は親指や手首を休ませるなど、休憩することを習慣づけるようにしましょう。 また、スマートフォンは片手で操作することを避けましょう。 「痛みが強い」「長引く」「繰り返す」といった場合は、積極的に整形外科を受診することが勧められます。