機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)

胃の不調が続くと、食事がおいしく取れなかったり、気分が沈んだりしがちです。 放置せずに、適切な治療を受け、生活を楽しめるようにしましょう。


■機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)とは?

内視鏡では異常は見つからないが、胃もたれなどの不快な症状がある

日本人の4人に1人は、月に2回以上、胃もたれや胃の痛みなど胃の不快な症状を感じているという報告があります。 また、胃の不快な症状を訴えて受診した患者の半数は、内視鏡検査を行なっても異常が見つからないとされています。 このように、内視鏡検査では胃に潰瘍や癌などの異常が見つからないのに、胃の不快な症状が続く状態を総称して 『機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)』と呼びます。

機能性胃腸症では、何らかの原因によって、胃の機能低下などが引き起こされ、さまざまな症状が起こると考えられています。 これまでは「胃下垂」「胃痙攣」「神経性胃炎」と呼ばれてきたものが、機能性胃腸症に含まれます。 まだ解明が進んでおらず、はっきりした原因が特定できないことも多くあります。 以前は”病気ではない”と考えられ、適切な治療を受けられないこともありましたが、 最近では、「QOL(生活の質)」を低下させる病気として、積極的に治療を受けることが勧められています。


●胃の働き

胃には、次のような機能があります。

  • 胃壁が食事に際して風船のように伸びて大きく膨らみ、食道から入ってくる食べ物を受け入れる。
  • 筋肉が収縮して波打つように働きながら(蠕動運動)、食べ物と胃液を混ぜ合わせ、消化しながら、 十二指腸の方へと運ぶ。
  • 十二指腸へ送り出す。

胃の機能が正常であれば、胃もたれや胃の痛みなどを感じることはありません。


●主な症状と起こる仕組み

胃の機能が低下する原因としては、主に「加齢によって、自律神経の働きが低下する」 「内視鏡ではわからない微細な炎症が、粘膜やその奥にある筋肉(筋層)に起きている」ことなどが考えられます。 胃の機能が低下した場合、食事に伴って起こるの次のような症状です。

▼胃もたれ
胃全体の動きが悪くなり、食べ物が胃の中に残ってしまうために、もたれたように感じたり、 重苦しく感じたりします。

▼飽満感
少し食べただけで”お腹いっぱいになった”と感じます。胃壁が十分に伸びず、 十分な量の食べ物を受け入れることができないために起こります。

▼みぞおちの痛み
みぞおちに痛みを感じるようになります。食事と関係して痛みがある場合は、機能性胃腸症よりも胃潰瘍などが 考えられます。

▼みぞおちが焼けるような感じ
みぞおちが焼けるように感じます。胸焼けと勘違いされることがありますが、 胸焼けは、みぞおちより上の胸の辺りに起こります。

●ストレスの影響

ストレスも機能性胃腸症の原因となります。ストレスがあると、脳からは「ストレスホルモン」の一種が分泌され、 その作用によって、次のことが起こると考えられています。

  • 脳の機能に影響し、症状を感じやすくなる。
  • 胃や十二指腸の機能に影響し、機能低下や知覚過敏症を引き起こす。

十二指腸には、粘膜の酸性度を感知する働きがあります。胃酸の混じった食べ物が流れてきて、粘膜の酸性度が高くなると、 その情報が脳に送られ、脳は十分に食べたと判断します。しかし、ストレスの影響で、十二指腸の知覚過敏が起こると、 十二指腸は、酸性度がそれ程高まっていないのに、”高まった”と感知してしまいます。 そのため、実際には少ししか食べていないのに、脳は十分に食べたと判断してしまい、食欲が低下することがあります。 多くの人が、自分のストレスに気付いておらず、仕事などで頑張りすぎて、ますます悪化させていることもあります。


●その他

▼患者の傾向
機能性胃腸症のうち、胃の痛みは比較的若い人に多く、胃もたれは中高年に多く見られます。 性別では、どちらかというと女性が多いといわれています。 また、一般に「快眠」「快食」「快便」の3つがそろうと、健康を実感できるとされますが、 機能性胃腸症の患者では、快食が損なわれるだけではなく、快眠や快便も損なわれている傾向があります。

▼消化管運動改善薬の効果
消化管運動改善薬の一種である「クエン酸モサプリド」についての臨床試験が行なわれています。 それによると、約600人の機能性胃腸症の患者のうち、クエン酸モサプリドを服用したグループでは、 慢性胃炎治療薬としては一般的な「テプレノン」を服用したグループより、胃もたれ、胃の痛みの改善度が高く なりました。また、「よくなった」という満足感を持った患者の数も多かったと報告されています (日本国際消化管運動研究会「JMMS」)。