家族性高コレステロール血症

家族性高コレステロール血症では、遺伝子の変異によって LDLコレステロール値が非常に高くなります。 病気に気付かず、見逃されていることが多いため、病気の特徴を知り、早期発見に繋げましょう。


■家族性高コレステロール血症とは?

遺伝的にLDLコレステロール値が高くなる

脂質異常症の多くは、長年の生活習慣や加齢によって起こります。 しかし、家族性高コレステロール血症は、生活習慣や加齢とは関係なく、遺伝子の変異が原因で起こります。 そのため、産まれた時からLDLコレステロール値が高いのです。 原因となる遺伝子の変異にも種類があります。その中で最も多いのがLDL受容体の遺伝子の変異です。 コレステロールは、LDLという粒子に含まれて全身を巡り、細胞に取り込まれたり、肝臓に回収されたりしています。 このときLDLは、細胞の表面にあるLDL受容体に結合して細胞の中に入っていきます。 家族性高コレステロール血症では、LDL受容体に変異が起こります。 そのため細胞の中に入っていくことができず、血液中のLDLが過剰になってしまいます。 この過剰なLDLが、血管の壁に侵入すると、動脈硬化が起こります。


●動脈硬化の進行が早い

ある研究では、脂質異常症の患者さんのLDLコレステロールの平均値が150mg/dL前後だったのに対し、 家族性高コレステロール血症がある場合は200~300mg/dLの場合が多く、平均すると約257mg/dLと高い数値でした。 家族性高コレステロール血症がる人は、産まれた時からLDLコレステロール値が非常に高い状態が続いているので、動脈硬化が早く進行します。 そのため、治療を受けずにいると、男性は30~50歳くらいで、女性は50~70歳くらいで 心筋梗塞狭心症を発症することが多いとされています。 家族性高コレステロール血症がある男性の約66%、女性の約55%が、心筋梗塞などの冠動脈疾患が原因でなくなっています。 特に、男性の死亡年齢は平均約61歳と早いため、適切な治療を早期に受けることが重要です。


●原因となる遺伝子の変異とは?

通常、遺伝子は、両親から1つずつ受け継ぎ、2つで1組になっています。 家族性高コレステロール血症に関わる遺伝子も2つ1組で、変異が1つだけの場合をヘテロ型、 2つとも変異している場合をホモ型といいます。 例えば、両親のどちらかがヘテロ型だと、その子供は1/2の確率でヘテロ型となります。 家族性高コレステロール血症のほとんどの患者さんがヘテロ型で、ホモ型は非常に稀です。 日本人の家族性高コレステロール血症は、200~500人といわれ、稀な病気ではありません。 しかし、この病気があっても、正しく診断されている人は少なく、日本人の場合は1%未満との報告もあります。 そのため多くの人が、十分な対策をせずに心筋梗塞や狭心症を起こしていると考えられています。


■診断基準

コレステロール値、家族歴、黄色腫の3つをチェックする

家族性高コレステロール血症は、遺伝子を比べなくても見付けることができます。 そのためには、次の3つの診断基準をチェックします。 診断基準の1つ目はLDLコレステロール値が180mg/dL以上と非常に高いことです。 特に、若いのに値が高い場合や、薬を飲んでもなかなか値が下がらない場合は、注意が必要です。 2つ目は、2親等以内の家族が、家族性コレステロール血症と診断されていたり、若年で心筋梗塞や狭心症を発症した場合です。 この場合の若年とは、男性で55歳未満、女性で65歳未満を指します。 3つ目は、皮膚の下にコレステロールが溜まる黄色腫で、アキレス腱によく起こります。 通常アキレス腱の太さは6mm程度ですが、黄色腫があると9mm以上になります。 炎症や、痛みが起こる場合もあります。ただし、若い人や女性の場合は、アキレス腱が太くなっていないこともあります。 黄色腫が手の甲や肘、膝などにできることもあります。黒目の周りに白い輪ができる角膜輪が、50歳未満で現れた場合も要注意です。 医療機関では、3つのうち2つ以上当てはまると、家族性高コレステロール血症と診断します。 黄色腫などがある場合は、内分泌・代謝内科を受診します。糖尿病内科でも診療している場合があります。 また、家族の誰かにこの病気が見つかった場合は、家族全員が検査を受けることをお勧めします。


■治療方法

目標値の達成に向けて薬物療法を積極的に行う

治療の目標は、LDLコレステロール値を100mg/dL未満に下げることです。 心筋梗塞や狭心症を発症した場合は、70mg/dL未満が目標です。 もともとの値がかなり高い場合は、まずその半分を目標にします。 目標を達成するためには、薬による治療が積極的に行われます。 最初に使われる薬が、肝臓のコレステロール合成を抑えるスタチンで、脂質異常症の治療でよく使われます。 不十分な場合は、エゼチミブ、レジン、プロブコールなどの薬を併用します。妊娠中や授乳中はレジンだけが使われます。 2016年に登場したのがPCSK9阻害薬です。2~4週間に1回注射をする薬で、スタチンと併用します。 スタチンとの併用でLDLコレステロール値が平均70%低下することがわかっています。 家族性コレステロール血症のある人にスタチンと併用するにしたところ、心筋梗塞のリスクがさらに低下したとの報告もあります。 食生活の乱れなどが重なるとLDLコレステロール値はより高くなります。生活習慣も改善し、禁煙は必須です。 症状の重いホモ型は、薬が効きにくいこともあるため、LDLアフェレシスが治療の中心となることもあります。 機械を使って血液を一旦体の外に出し、LDLを取り除いた後体に戻す治療法で、1~2週間に1回行います。 ヘテロ型でも重症だと行われることがあります。


■子供の場合

15歳未満の場合は、診断基準や治療法が異なる

15歳未満の子供の診断基準は、LDLコレステロール値140mg/dL以上が目安です。 家族の病歴を参考にするのは、成人と同じです。黄色腫は、現れにくいので診断基準に含まれません。 治療の目標はLDLコレステロール値140mg/dL未満で、まず生活習慣を改善します。成人になっても障害禁煙するよう、指導が行われます。 薬での治療は、10歳以上でLDLコレステロール値180mg/dL以上が続く場合に行われることがあります。 第一選択薬はスタチンです。10歳ごろから急速に動脈硬化が進行するといわれており、子供の場合もできるだけ早い対策が必要です。