動脈硬化

動脈硬化はほとんど自覚症状のないまま進行し、突然、 「心筋梗塞」「狭心症」などを引き起こします。 最近受けた検査で、 コレステロール値血圧が高めと診断されていませんか? その原因や対策を知り、改善に取り組むことが、将来の病気からあなたを守ります。 最近では、今後10年間の心筋梗塞や狭心症の発症率が、コレステロールの値から予測できるようになりました。 リスクを知り、動脈硬化による病気を予防しましょう。



■動脈硬化とは?

血管の狭窄や詰まりが起き、心筋梗塞や狭心症につながる

「動脈硬化」は、血管の壁の内側にコレステロールなどが溜まり、 プラークという瘤ができて血液の流れが悪くなった状態です。 動脈硬化が進行してプラークが破れたりすると、血栓という血液の塊ができて血管を防ぐことがあります。 「狭心症」「心筋梗塞」は、 心臓に酸素や栄養を送る冠動脈の動脈硬化が進行して起こります。 冠動脈が狭くなると狭心症に、塞がると心筋梗塞に繋がります。 動脈硬化は、コレステロールなどの 「脂質異常症」 「高血圧」 「高血糖」 喫煙などによって起こり、心筋梗塞などの命に関わる病気を引き起こします。 重要なのは、発症してから対処するのではなく、発症を予防することです。 そのためには、心筋梗塞や狭心症のリスクを知っておくとよいでしょう。


■心筋梗塞や狭心症の発症率

コレステロールや血圧の値などから計算する

心筋梗塞や狭心症(冠動脈疾患)の発症率の予測方法は、吹田研究を基に作成されました。 コレステロールや血圧などの値、年齢、性別などから計算する方法です(下図)。


吹田研究


●コレステロールと中性脂肪

コレステロールは体に必要な脂質です。 肝臓で作られ、血液によって全身の細胞に運ばれます。 その過程で、水に溶けやすい物質に包まれたLDLという粒子になります。 偏った食事や遺伝子の変異などの影響で血液中のLDLが増え過ぎると、血管の壁に侵入して動脈硬化を起こすため、LDLは悪玉と呼ばれます。 一方、プラークや血管壁の細胞から余分なコレステロールを回収するのがHDLという粒子です。動脈硬化を防ぐので善玉と呼ばれています。 空腹時に血液検査を行い、LDLコレステロール値が140mg/dl以上の場合に、脂質異常症と診断されます。 120~139mg/dlは境界域といい、心筋梗塞や狭心症のリスクが高い人は、この段階から対処します。 HDLコレステロール値は、40mg/dl未満の場合が脂質異常症です。 コレステロールとは異なる脂質である中性脂肪にも注意が必要で、150mg/dl以上だと脂質異常症と診断されます。

●高血圧

血液が血管を押す力が強まるので、血管を傷つけたり、プラークに力が加わり血管が破れやすくなります。

●高血糖

血液中のブドウ糖の濃度が異常に高い状態が高血糖です。 増えたブドウ糖がLDLと結合すると、LDLが変性して血管の壁に侵入しやすくなります。

●喫煙

1日に吸うたばこの本数が多いほどリスクが上がり、1日20本を超えて吸う人の心筋梗塞の発症率は、非喫煙者の3倍以上です。 受動喫煙にも注意が必要です。

●加齢・性別

動脈硬化は、加齢とともに進行します。また、男性は、女性よりも心筋梗塞を起こしやすいことがわかっています。 女性は、女性ホルモンの働きによってLDLコレステロール値が低く保たれるので、心筋梗塞が起こりにくいのです。 ただし、更年期以降は女性ホルモンが減少し、LDLコレステロール値が高くなります。 その他に、女性は、男性に比べて糖尿病や喫煙の影響が体に強く現れやすいので、注意が必要です。



■そのほかの危険因子

1つでも該当すればリスクが大きく上がる

心筋梗塞や狭心症のリスクを上げる危険因子は他にもあります。

  • 心筋梗塞や狭心症を起こしたことがあれば、再発のリスクが上がります。
  • 腎臓の働きが低下する 「慢性腎臓病」が進むと、 透析療法が必要になるほか、 脳梗塞心筋梗塞を発症しやすくなります。
  • 糖尿病は、予備軍の段階から動脈硬化が進行します。糖尿病になると、そのリスクがさらに増します。
  • 動脈硬化による脳梗塞を起こしたことや足の動脈が狭窄するPAD(抹消動脈疾患)がある場合、全身で動脈硬化が進んでいると考えられます。
  • 遺伝子の変異による「家族性高コレステロール血症」のある人は、 若いときからLDLコレステロール値がかなり高い状態が続きます。

1つでも当てはまれば、心筋梗塞や狭心症のリスクは大きく上がります。


●そのほかの危険因子

発症率の予測には含まれませんが、 「メタボリックシンドローム」「睡眠時無呼吸症候群」「高尿酸血症」は、心筋梗塞や狭心症のリスクになると考えられています。


●発症率が高い場合

危険因子を1つ減らすだけでも、発症率は確実に下がります。まずは生活習慣を改善し、少しずつでも発症や再発のリスクを減らしていくことが大切です。