脈圧

最大血圧の値から最小血圧の値を引き算して求められる値を脈圧といい、 脈圧が65mmHg以上なら動脈硬化が深刻で、心筋梗塞も多発します。


■「脈圧」とは?

最大血圧と最小血圧との差が大きいほど危険

最大血圧と最小血圧は年齢とともにほぼ平行に上がっていきます。 60歳を過ぎても、最大血圧は年とともに上がっていきますが、最小血圧だけが下がっていきます。 そして、70歳を過ぎた高齢者になると、結果的に最大血圧と最小血圧の差が大きくなっていくのです。 最大血圧の値から最小血圧の値を引き算して求められる値を『脈圧』といい、 60歳以上の人の高血圧では脈圧が大きくなるという特徴があります。 近年の研究で、脈圧が大きい人ほど心筋梗塞による死亡率が高いことが報告され、にわかに危険視されています。 1994年にはフランクリンという研究者のグループが、1997年にはサファーという研究者のグループが、 脈圧が大きい人ほど心筋梗塞が多発するというデータを相次いで報告しました。 こうしたデータの積み重ねによって、脈圧の大きさが注目されるようになりました。



■脈圧が高いのは動脈硬化が太い血管に及んだサイン

脈圧が大きくなるのは何故でしょうか。その主な原因は、太い血管の 「動脈硬化」にあります。 脈圧が大きくなるということは、末端の細い血管(抹消血管)から始まった動脈硬化が、 大動脈につながる太い血管(伝道血管)にまで及んでいることを示します。 通常、動脈硬化はミクロン単位(1ミクロンは1000分の1ミリ)の細い血管から始まりますが、 それらの血管の多くが動脈硬化を起こすと、やがて太い血管にも動脈硬化が及んできます。 すると最小血圧が下がり、脈圧も大きくなるという現象が起こるのです。

例えば、最大血圧が160mmHg(正常は130mmHg未満)、最小血圧が70mmHg(正常は85mmHg未満)の人がいるとします。 最大血圧は基準値を大幅に超えているものの、最小血圧は基準値以下に保たれています。 しかし、脈圧を計算すると、160mmHgから70を引いて90mmHgになります。 これは血圧が正常な人に比べて2倍近く高い数値で、非常に危険な状態だといえます。 ちなみに、健康な人の脈圧は50~55mmHgが目安です。もし、最大血圧が140mmHg以上で、脈圧も65mmHg以上の場合は、 早急に高血圧の改善が必要です。

このように、太い血管に動脈硬化が及び、脈圧も大きくなると心臓の負担が増え、心肥大、心不全、心筋梗塞などの 心臓病や脳卒中も起こりやすくなります。そのため、脈圧の悪化を早めに予防するには、 「平均血圧」で細い血管の状態を知っておくことが大切です。 日ごろから平均血圧と脈圧を調べ、血圧の適切なコントロールを心がけましょう。


■脈圧と血管年齢

脳卒中(脳梗塞・脳出血)や心筋梗塞の原因となる血管の硬さの指標として、 「血管年齢」があります。 そして、血管年齢を老化させ、血管も硬くする最たる危険要因が高血圧なのです。 血管の硬さには動脈硬化と共に、一時的に血管が緊張して硬くなった状態の「機能的血管壁緊張」も含まれますが、 血管の硬さの程度は血圧の数値を見ることで推測できます。 高血圧の人の中には「自分は上の血圧は高いが、下の血圧は低いから大丈夫」と考えている人がいますが、それは間違いです。 最大血圧、最小血圧のどちらが上がっても血管は硬くなり、血管の老化現象は進行していくのです。 むしろ、同じ血圧でも最大血圧と最小血圧の差が大きい人ほど、血管の老化がより進んでおり、 脳卒中や心筋梗塞を招きやすいことがわかっています。