高血圧と動脈硬化

動脈硬化とは、血管の柔軟性が失われ、硬く、もろくなって、血管壁が厚くなり、内腔が狭くなる状態を言い、 血圧が高いと血管壁が傷つき、動脈硬化が起こりやすくなります。 動脈硬化が進むと「末梢血管抵抗」が増加し、血圧が上がります。 高血圧は自覚症状に乏しく、その危険性を十分に認識している人は多くありません。 高血圧が続くと動脈硬化を促進し、危険な合併症を引き起こしやすくなります。 そこに高血圧の怖さがあるのです。


■動脈硬化とは?

動脈がもろくなる。進行すると合併症を招く。

血管は、もともと柔軟性の高い組織です。しかし、何らかの要因で血管が変化して、血管壁が硬くもろくなったり、 血管壁が厚くなって内部の空間(内腔)が狭くなったりした状態を「動脈硬化」といいます。 動脈硬化は、加齢に伴って進行していきますが、高血圧や糖尿病、高脂血症、喫煙といった動脈硬化を促進させる要因があると、 進行が速まり、若い世代でも「心筋梗塞」「脳卒中」など、動脈硬化症の病気を引き起こしてしまうことがあります。



■動脈硬化のタイプ

動脈硬化と一口に言っても、いろいろなタイプがあります。

▼粥状動脈硬化
血管壁の内側にコレステロールなどが入り込み、アテローム(粥種)と呼ばれる、柔らかい塊を作るタイプです。 アテロームが大きくなると、血管の内腔が狭くなり、血流が低下します。脳や心臓などの比較的太い血管に起こりやすく、 心筋梗塞や脳卒中の原因になります。一般に"動脈硬化"という場合、多くはこの粥状動脈硬化のことを指します。

▼細動脈硬化
血管壁が厚くなり、血管の内腔が狭くなるタイプです。腎臓や目などの非常に細かい血管に起こります。

▼中膜石灰化硬化
主に加齢によって、血管壁の「中膜」と呼ばれる層にカルシウムが付着して、硬くなるタイプです。

高血圧との関係から、特に注意したいのは、粥状動脈硬化と細動脈硬化です。


■動脈硬化が進行すると

心筋梗塞や脳卒中など、命にかかわる病気を引き起こす

動脈硬化は、全身の血管に起こります。進行すると、周囲の組織に酸素や栄養が行き届かなくなって、 さまざまな合併症を引き起こします。


●太い血管に起こるもの

▼心臓の血管
心臓の表面を走る「冠動脈」に動脈硬化が起こると「狭心症」「心筋梗塞」を引き起こします。

▼脳の血管
脳の血管が詰まって脳細胞が壊死する「脳梗塞」や脳の血管が破れて出血する「脳出血」などが起きます。

▼胸部・腹部大動脈
心臓と直接つながっている「大動脈」の壁が傷んで、こぶのように膨らむ「大動脈瘤」や 壁の中膜が縦に裂ける「大動脈解離」が起こります。

▼足の血管
脚の太い血管に動脈硬化が起こる病気を「閉塞性動脈硬化症」といいます。 脚への血流が不足して、脚が疲れやすくなったり、痛みが生じます。 悪化すると足に「潰瘍」ができることもあります。


■細い血管に起こるもの

▼腎臓の血管
腎臓は、細い血管が集まってできています。この血管に動脈硬化が起こると、次第に腎臓が硬く小さくなって (腎硬化症)、腎臓の機能が低下します。
目の奥(眼底)にある網膜には、無数の細い血管が走っています。ここに動脈硬化が起こると、 血管が破れて出血しやすくなります(眼底出血)。重症の高血圧の人に多く見られます。

■高血圧と動脈硬化

高血圧が動脈硬化を促進し、動脈硬化が進むと血圧が上がる

高血圧は、動脈硬化を促進する重大な危険因子です。血管壁に高い圧力がかかり続けると、血管壁は傷みやすくなります。 このようにしてできた傷から、コレステロールなどが血管壁に侵入して起こるのが、粥状動脈硬化です。 高血圧は、粥状動脈硬化の下地を作っているのです。
また、動脈硬化が進むと、血管の内腔が狭くなり、末梢血管の抵抗が増加します。 すると、体の隅々まで血液を送るために、人間の体は自然に血圧を上げます。 そして、血圧が上がると、さらに動脈硬化が進み、それが原因となって、血圧はますます上がってしまうのです。

このように、高血圧と動脈硬化は、"一方が進めば、もう一方も進む"という、悪循環の関係にあります。 これを断ち切るためには、血圧管理が欠かせません。


■動脈硬化を見つけるためには

血管の状態を定期的に調べて、早期に発見することが大切

動脈硬化は、自覚症状がないまま静かに進行します。 一般に、血管の内腔が、本来の25%程度まで狭くならないと、狭心症などの症状は現れないといわれています。 つまり、症状が現れた時には、血管はかなり深刻な状態になっているといっても過言ではないのです。 動脈硬化による病気を防ぐためには、高血圧のある人は、症状のないうちから、動脈硬化の進み具合を チェックしておくことが大切です。次のような検査を、1年に1度は受けるようにしましょう。


●動脈硬化の検査

▼頸動脈超音波検査
首の太い動脈に、皮膚の上から超音波を当てて、血管壁の厚さを調べる検査です。 アテロームの有無などをチェックすることで、比較的初期の動脈硬化を発見できます。

▼脈波伝播速度検査
脈の波が血管を伝わっていく速さを測ります。動脈硬化で血管が硬くなると、速度が速くなります。

▼微量アルブミン尿検査
尿に含まれる、たんぱく質の一種である「アルブミン」の量を調べます。 通常の尿検査ではわからない、ごく微量のアルブミンを検出できるため、初期の腎機能障害を発見できます。

●血管に異常が発見されたときは

検査によって治療の必要があると診断されたときは、高血圧の治療と並行して、血流を改善する治療が行われます。 例えば、「抗血小板薬」や「抗凝固薬」などの薬を使って、血流を改善します。 狭くなった血管に「カテーテル」という細い管を入れたり、手術をして血管の内腔を広げることもあります。 治療法は、血管の状態や患者さんの希望をもとに選ばれます。


■関連項目