高血圧と心臓病

高血圧になると、血液を送り出している心臓にも大きな負担がかかります。 心臓病にはいろいろなものがありますが、高血圧とのかかわりで特に気を付けたいのが、 「心肥大」「狭心症」「心筋梗塞」「心不全」の4つです。 心臓の筋肉が厚くなるのが「心肥大」、働きが著しく低下するのが「心不全」、動脈硬化によって起こるのが「狭心症」「心筋梗塞」です。 高血圧になると、血液を強い力で送り出すために、心臓の筋肉が厚くなって、ポンプ機能が低下し、心臓の血管の動脈硬化が促進します。


■高血圧とかかわりの深い心臓病

●心肥大と心不全

血圧が高いと心臓への負担が大きくなり、心筋が肥大する

心臓は、血液を全身に送り出しています。末梢血管の抵抗が増加すると、 心臓はそれに負けない力で血液を送り出さなくてはならず、心臓に大きな負担がかかります。 その負担に耐えられるように、心臓の壁を構成している心筋(心臓の筋肉)は、徐々に厚くなっていきます。 特に、血液を全身に送り出す左心室の壁が厚くなります。 壁の厚さが一定以上になると「心肥大」と診断されます。 心肥大の状態が続くと、心筋が硬くなって、収縮と拡張がしづらくなり、血液を送り出すポンプとしての働きが低下します。 また、肥大した心筋は多くの酸素を必要としますが、それに見合うだけの血流量が確保できないと、心筋は酸素不足になります。 そして、これがさらに進行すると、心臓のポンプ機能が極度に低下した「心不全」の状態に陥ってしまいます。



●狭心症と心筋梗塞

心筋への血流量が不足して心臓の働きが障害される

心臓が働くために必要な酸素は、心臓の表面を走っている「冠動脈」から供給されています。 その冠動脈に動脈硬化が起こることなどによって、心臓の働きに障害が起こるのが「狭心症」「心筋梗塞」です。 冠動脈に「血栓」と呼ばれる地の塊が詰まり、血流が完全に途絶えてしまうのが心筋梗塞です。 血管が詰まった部位の先にある心筋は、時間の経過とともに壊死していきます。 緊急に治療を受けないと命にかかわる、危険な病気です。

◆狭心症

動脈硬化などの要因によって、冠動脈の内腔が狭くなり、心筋が一時的に酸素不足に陥って、 胸の痛みなどの症状が現れる病気です。酸素不足が解消されて、症状が自然に治まることもありますが、心筋梗塞に移行する危険性もあります。

【関連項目】:『狭心症・心筋梗塞』



■心臓の異常を見つけるためには

●異常のサイン

胸の痛みや急な体重の増加は要注意

心臓病は命と直結する病気であるだけに、血圧の高い人は、次のような心臓病のサインに注意しておく必要があります。

▼胸の痛み
狭心症の発作は、胸の強い痛みが特徴です。胸の痛みといっても、"ここが痛い"と特定できるものではなく、 胸全体が圧迫されるような痛みです。"締め付けられるような痛み"と表現する人もいます。 また、「放散痛」といって、肩や腕、首や歯など、胸以外の部位に痛みがあるのも、狭心症の特徴です。 このような痛みがなかなか治まらない場合、心筋梗塞が疑われます。ただちに救急車を呼んで、治療を受ける必要があります。

▼急な体重の増加
心不全が進むと、全身の血液循環がうまくいかなくなるため、水分が体にたまって全身がむくみます。 1日2日で体重が1~2kg増えるなど、急な体重の増加は、何らかの病気によるむくみが疑われます。

▼その他
このほか、少し強く体を動かすと息苦しくなる場合にも、心不全が疑われます。 これらの症状があった時は、できるだけ早く医療機関を受診して、体の状態をチェックしましょう。

●異常を調べる検査

画像検査や心電図検査で心臓の大きさや動きをみる

症状に注意しておくことはもちろん、血圧が高い人は、定期的に検査を受け、 心臓の異常の有無をチェックしておくことが大切です。 次のような検査を、1年に1度は受けておきましょう。

▼胸部エックス線撮影
肺を含めた胸部をエックス線で撮影し、心臓の大きさなどを調べます。

▼心電図検査
心電図の波形を調べることで、心肥大、狭心症、心筋梗塞など、さまざまな心臓病の兆候がわかります。

▼心エコー検査
胸の皮膚から超音波を当て、心臓の動きを見ます。心臓の大きさや壁の厚さがわかり、心肥大の有無や程度が調べられます。

これらの検査で心臓病の疑いがあった時は、簡単な運動をしながら心電図を測る「運動負荷心電図」や、 心筋に集まる性質のある放射性医薬品を注射してから、特殊なカメラで撮影する「心筋シンチグラフィー」などの精密検査が行われます。 精密検査の結果、心肥大と診断されたときは降圧薬による治療が行われます。 狭心症の場合は、薬物療法や血管を広げるカテーテル治療、手術などが行われます。