高血圧と腎臓病

腎臓は血圧との関係が深い臓器で、腎機能が低下すれば血圧は上がり、逆に血圧が上がれば腎機能にも影響が出ます。 高血圧で腎臓が障害されると、糖尿病や心筋梗塞などの危険性も高まります。 腎臓病には、血液を濾過する腎臓の血管に動脈硬化が起こり、腎臓が硬く小さくなる「腎硬化症」と、それが進行して腎機能が著しく低下した「腎不全」があります。 高血圧があると、腎臓の濾過機能が酷使されて、腎機能が低下していきます。


■腎臓病とは?

腎臓の機能が障害されて、体内の水分量が調節できなくなる

腎臓は、体内の水分量を調節して尿を作る臓器です。老廃物を含んだ血液を濾過して、体内で生じた老廃物や余分な水分、 ナトリウムなどを尿として排泄します。きれいになった血液は心臓へ戻り、再び全身を巡ります。 血液中のたんぱく質などを分解するのも、腎臓の重要な役割です。
こうした腎臓の機能が低下している人では、「心肥大」などの心臓の異常や、動脈硬化などの血管の異常が多くみられます。 腎臓は、血液の調節をはじめとする体のさまざまな仕組みと、相互に関わっています。 そのため、腎機能が低下すると、高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病や肥満、そしてそれらが複合した 「メタボリックシンドローム」などを併発しやすくなります。

●高血圧で起こる腎臓病

腎臓は、「糸球体」という、血液を濾過する小さな器官が約100万個集まってできている臓器で、左右に1つずつあります。 高血圧によって、糸球体に出入りする血管に動脈硬化が起こると、血液を濾過しにくくなります。 そのため、より強い圧力をかけて濾過しなければならなくなり、次第に糸球体が疲弊して、腎臓は硬く小さくなってしまいます。 これを「腎臓硬化症」といいます。腎臓硬化症が進むと、やがて腎機能の大半が失われ、 「腎不全」に陥ります。腎不全になると、人工的に血液を濾過する「透析療法」を行わなくてはならなくなります。



■血圧と腎臓との関係

腎臓の働きは血圧に大きな影響を与える

腎臓は、主に次の3つの点から、血圧の調節に深くかかわっています。

①体内の水分とナトリウム量の調節
腎臓は、体内の水分とナトリウムの量を調節して、血液の量を一定に保っています。 しかし、その機能が低下して、体内の余分な水分を十分に排泄できなくなると、血液の量が増え、血圧が上がります。

②血圧の調節に関わるホルモンの分泌
人間の体には、いくつかのホルモンの反応によって血圧を上げる「レニン・アンジオテンシン系」 という仕組みが備わっています。この仕組みの中で上流に位置し、血圧の上昇に重要な役割を果たしている 「レニン」という酵素は、腎臓から分泌されています。

③末梢血管の抵抗
腎臓は、無数の細い血管から成っています。腎臓の血管に動脈硬化が起こると、血液の流れが悪くなり、 末梢血管の抵抗が増加して、血圧が上がってしまいます。

その他
このほか、腎機能が低下すると、「インスリン」というホルモンが腎臓で分解されにくくなり、 血圧や血糖、血液中の脂質に悪影響を及ぼします。

このように、腎臓と血圧には深い関わりがあります。"腎機能が低下すると血圧が上がり、血圧が上がると動脈硬化が進んで ますます腎機能が低下する"という、悪循環の関係にあります。

●急激な血圧上昇は要注意

大動脈から分かれて腎臓に入る「腎動脈」という比較的太い血管の内腔が、動脈硬化などで狭くなると、 急に血圧が上昇する「腎血管性高血圧」が起こります。"正常だった血圧が急に上がった" "降圧薬でコントロールできていた血圧が急に上昇した"という場合は、この病気が疑われます。