高血圧とアルコール

お酒を飲む習慣のある人は、そうでない人よりも血圧が高めで、高血圧の発症率も高いことがわかっています。 アルコールには、血管を拡張させる作用があるので、お酒を飲んだ直後は、血圧が下がるのが普通です。 ただし、これは一時的作用で、酔いが覚めるころには血管が収縮して、お酒を飲んだ翌朝の血圧は、むしろ上昇してしまいます。 そのため、高血圧の患者さんで、お酒をたくさん飲む人は、朝の血圧が高くなる 「早朝高血圧」になりやすい傾向があります。 度を越した飲酒は血圧を上げるので、アルコールは適量にとどめることが大切です。 血圧を下げ、合併症を予防させるためには、節酒が欠かせません。 高血圧があり、日常的にお酒を飲んでいる人は、節酒をすれば、血圧が下がることがわかっています。



■飲酒習慣がなぜ血圧を上げるのか


習慣的にお酒を飲んでいる人に高血圧や早朝高血圧が多い理由は、まだはっきりしていませんが、いくつかの説があります。 一つは、アルコールの利尿作用によって、カリウムやマグネシウムなど、血圧を下げる働きのある物質が尿中にたくさん 排泄されてしまうため、という説です。お酒をよく飲む人に、肥満がある人が多いことも、理由の一つと考えられます。 また、肥満や過度の飲酒によって引き起こされる 「睡眠時無呼吸症候群」が、 高血圧を引き起こしやすいことを指摘する説もあります。
そのほかにも、「アルコールが交感神経を刺激して血管が収縮する」「アルコールの作用で夜間に血圧が下がりすぎて、 腎臓で作られる尿の量が減り、ナトリウムが体内にたまる」ことなども、理由として指摘されています。 なお、飲酒が原因で起こった早朝高血圧には、降圧薬が効きにくいといわれています。

●節酒をすれば血圧が下がる

高血圧があり、日常的にお酒を飲んでいる人は、節酒をすれば、血圧が下がることがわかっています。 降圧効果は、節酒を始めてから1~2週間で現れてきます。 たくさんお酒を飲んでいた人が、急に節酒をすると、一時的に血圧が上がることがありますが、 節酒を続けていれば、血圧は徐々に下がってきます。 毎日のようにお酒を飲んでいる人は、ぜひ節酒を心がけてほしいものです。



■適量を知る

アルコールの1日の適量は「男性30ml未満、女性15ml未満」

飲酒は適量であれば、血管を広げて、血圧を下げます。 また、血液循環がよくなり、心身をリラックスさせる効果もあります。 しかし、飲みすぎると、アルコールの害のほうが大きくなってしまいます。


■アルコールの害

多量の飲酒は、血圧を上げるだけでなく、摂取エネルギー量を増やして、肥満につながります。 おつまみとして食塩やエネルギー量の多いものを摂りがちなことも、血圧のコントロールや体重の維持に悪影響を与えます。 さらに、「心房細動」などの不整脈が起こりやすくなってしまいます。

”赤ワインを飲むと心筋梗塞が減る””焼酎などの蒸留酒なら体にやさしい”と思っている人も多いようです。 しかし、高血圧の場合、問題となるのは含まれているアルコールの量なので、お酒の種類とは関係がありません。 また、どんなお酒でも飲み過ぎれば、肝臓などに悪影響を及ぼします。
寝つきをよくするためにお酒を飲むという人もいるようですが、お酒を飲んで寝ると、途中で目が覚めたりして、 質の悪い睡眠になりがちです。また、このような飲み方をしている人は、寝る前に飲む量がだんだんと増えてきて、 結果的に、体に悪影響を及ぼすことになりかねません。

アルコールの害を被らず、アルコールの良い面だけを得るためには、どんな種類のお酒であっても、 ほどほどの量にとどめることが大切です。

●アルコールの適量

”ほどほどの量”を自己判断するのではなく、具体的な適量を知っておきましょう。 高血圧に害を及ぼさない適量は、純粋なアルコール量で計算して、男性では1日30ml、 女性ではその半分の15mlだといわれています。
お酒の瓶や缶などには、アルコールの濃度(度数、%)が表示されています。 次の計算式に当てはめれば、含まれているアルコールの量を知ることができます。 自分がよく飲む種類のお酒で、計算しておくとよいでしょう。

飲んだ量(ml) × アルコール濃度(%) ÷ 100 = アルコールの量(ml)

概算としては、男性の場合で、1日にビールなら大瓶で1本まで、日本酒なら1合まで、焼酎なら1/2合まで、 ワインならグラス2杯まで、ウィスキーならダブル1杯までが適量です。

●お酒を減らすには

お酒は、ストレス解消や睡眠薬代わりなどにせず、楽しみだけにとどめます。 適量を、ゆっくりと時間をかけて飲む習慣を身に付けることも大切です。 個人差はありますが、アルコールは体内に吸収されるまでに、飲んでから20~30分間ほどかかると言われています。 酔いが回る前に適量を超えてしまって、ブレーキが利かなくなり、ついつい飲み過ぎてしまうという人も多いようです。 最初の1杯を15分程度かけて飲むように、心がけてみましょう。
また、飲酒をした翌朝に、血圧を測ってみることをお勧めします。 そうすると、血圧が上がることが数値として目に見えるため、自分への”戒め”にもなるはずです。 アルコールが健康を害していると自覚していても、どうしてもやめることができないという場合には、 「アルコール依存症」治療の専門医を受診することをお勧めします。



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