肥満と高血圧

血圧を上げる要因が複雑になり、治療が困難になる

肥満高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の引き金になります。 特に内臓脂肪型肥満は要注意で、生活習慣病の対策として、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防が指摘されています。 したがって、肥満の予防・対策として、体重管理に取り組む必要があります。 かつて日本人の高血圧は、塩分の摂りすぎや遺伝的な体質が要因となるケースがほとんどでした。 しかし、近年は肥満のある人が増え、肥満を主な原因とする高血圧も多くなっています。 肥満の有無は、「BMI(体格指数)」で判断されます。BMIは、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」の計算方式で求められ、この値が25以上だと肥満です。 高血圧には、血管がギューっと高まる「血管収縮タイプ」と、血液量が増えてパンパンになることで血圧が高まる 「血液量過剰タイプ」があります。肥満がある高血圧の人は「両方の混合型」といえます。 そのため、高血圧を引き起こしている要因が複雑になり、治療が難しくなってしまうのです。



■肥満が血圧を高める理由

血圧を上げるホルモンが、増えたり塩分が体内にたまる

肥満がある人は食べる量が多いので、腸管は常に消化活動を行い、脂肪細胞には脂肪が溜め込まれていきます。 このような状態に対応するため、体を防御する働きを持つ「交感神経」は、意志とは無関係に活発になります。 そのことにより、腸管の消化活動が低下したり、脂肪の燃焼が活発になったりするのです。 このとき、「ノルアドレナリン」というホルモンが体内で増えます。 ノルアドレナリンには血管を収縮させる作用があるため、血管収縮タイプの高血圧の要因になります。 交感神経は腎臓にも作用し、「レニン」という酵素を大量に分泌させます。 そのことによって、血管を収縮させる「アンジオテンシン」というホルモンが増え、血圧が高くなります。 交感神経が活発な状態が続くと、腎臓は「外敵と戦わなくてはならないような重大な状況が生じた」と判断し、 生命維持に重要な物質である塩分を体内にため込みます。そのため、血液量が増え、 血液量過剰タイプの要素も加わってくるのです。
このように、肥満があると、血管収縮タイプと血流量過剰タイプの両方を持った高血圧が起こりやすくなります。

●「メタボリックドミノ」を招くことも

肥満の影響を、「ドミノ倒し」に当てはめて考えることもできます。 最初の牌が肥満で、これが倒れることをきっかけとして、いろいろな病気の牌が次々と倒れていくというものです。 肥満があると高血圧になりやすく、「食後高血糖」や「脂質異常症」なども起きてきます。 肥満にこのような要素が加わった状態が 「メタボリックシンドローム」です。 メタボリックシンドロームがあると、「動脈硬化」が進行しやすく、 「慢性腎臓病」「腎不全」 「脳卒中」や「心不全」も起こりやすくなります。

肥満があるまま年齢が高くなると、腎臓の働きが低下し、血流量過剰タイプの要素が強くなります。 また、他の病気も起こりやすくなるため、高血圧の治療はより難しくなります。 肥満がある高血圧の人は、できるだけ早い時期に減量に取り組み、肥満を解消することが大切です。



■その他

肥満症
4000万人が陥る高血圧症は脳卒中・心臓病から腎不全・大動脈瘤・失明まで招き、 サイレントキラー(寿命を縮める殺し屋)といわれています。 血圧こそ血管や内臓・脳など全身の若さと寿命を決める最大指標ですが、 日本人の大半は高く低く乱れて突然死が多発しています。 高血圧症を改善して重大な病気を防ぐためには、血圧のコントロールが不可欠ですが、 血圧をコントロールする上で、まず第一に行わなければならない高血圧症対策が、「肥満の改善」です。

メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとは、日本人における死因の1/3(悪性腫瘍とほぼ同じ) を占める心血管系疾患の発症の原因として肥満を中心に捉えた概念で、 内臓脂肪型肥満から生じる糖質や脂質の代謝の変化が、 糖尿病、脂質異常症、高血圧症と診断されるほどの病的な異常状態ではないが、完全に正常でもない状態をいいます。