認知症の介護

認知症の人の不安な思いを知ることで介護の道が開けます。 お互い笑顔で過ごすためには、認知症の原因や生活環境、本人の性格によって、臨機応変に対処していくことになります。 それでも介護の基本をきちんと理解しておけば、決して難しいことではありません。 基本は、認知症の原因となる病気による症状を知っておくとともに、認知症の人の思いをよく理解して、 ”人としての尊厳”を大切にすることに尽きます。 また、BPSDがひどく、介護が身体的・精神的に追い詰められているときは、デイサービスやショートステイなどを利用しましょう。


■認知症の介護

対応の仕方に正解はない。その場その場でで想像し、対応を

認知症の症状のうち、「妄想」「徘徊」「暴力」などの「BPSD」は、 認知症の人の思いを知り、適切に対応することで和らげることが可能です。 認知症をできるだけ早期に発見して、周囲が適切に対応することが重要です。 なるべく早い段階から対応の仕方を工夫していくことで、BPSDが現れるのを防ぎます。

しかしBPSDが現れ、介護に困るようになってからでも遅くはありません。 適切な対応の仕方に切り替えれば、時間はかかりますが、少しずつ症状は改善されていくでしょう。 ただし、数学の方程式のように「〇○という症状にはこの対応法」というわけにはいきません。 認知症の原因や生活環境、本人の性格によって、臨機応変に対処していくことになります。 それでも介護の基本をきちんと理解しておけば、決して難しいことではありません。

●介護の基本

基本は、認知症の原因となる病気による症状を知っておくとともに、認知症の人の思いをよく理解して、 ”人としての尊厳”を大切にすることに尽きます。 「記憶障害」などがあっても、人間としての思いは、認知症になる前と変わることはありません。 記憶障害や、コミュニケーションがとりにくいこと、思い通りに体が動かせないことなどから、 本人は強い不安を感じていたり、”恥ずかしい””かっこ悪い”と思っています。
そのようなときに、周囲の人から「失禁するなんて!」などと叱られたり、不安を訴えてもはぐらかされたりすれば、 怒りたくもなるものです。これが積み重なってBPSDが起こってきます。 介護する人は、本人の言動を自分の身に置き換えて、「なぜその症状が起こるのか」を、 じっくり考えてみることが大切です。そうすれば自ずと、対応の仕方が分かってくることでしょう。


■BPSDがひどいときは

デイサービスや薬などで一時的に問題を回避する

BPSDがひどく、介護が身体的・精神的に追い詰められているときは、デイサービスやショートステイなどを利用しましょう。 必要な場合には、一時的にBPSDを軽減する薬を用いて、認知症の人と家族がお互いに余裕を持つことが重要です。 そして、精神的余裕が生まれたら、改めて対応の仕方を考えて、人間関係を再構築していきます。 BPSDに対する薬は、認知症の人の怒りや不安を抑えることはできますが、笑顔を取り戻すことができるのは 思いを理解したうえでの適切な介護です。次ページから、代表的な症状と認知症の人の思い、対応を述べます。 前述した介護の基本を踏まえつつ、これらをヒントにし、本人に合わせた対応を考えましょう。