長寿のための栄養素

65歳を過ぎたら”低栄養対策”を。「魚や豆腐」から「肉」を意識した食事に変更するなど、健やかな老後を過ごすために、食事の摂り方を見直してみましょう。 エネルギーやたんぱく質、さまざまな栄養をしっかり摂る1日のメニューは、1日2000kcal弱、たんぱく質80g弱、塩分7g弱になります。

たんぱく質

高齢者はもっと「肉」を食べよう

たんぱく質は、筋肉や臓器など、体を作るために必要な栄養素です。 たんぱく質を構成するアミノ酸のうち、体内で合成されない9種類は食事から摂る必要があり、 そのうち、バリン、ロイシン、イソロイシンの3つは、併せて「BCAA」と呼ばれ、特に重要です。 たんぱく質が不足すると、痩せて筋肉量が減るばかりか、血管がもろくなったり、免疫の働きが低下して病気にかかりやすくなったりします。 また、たんぱく質にはストレスを和らげる役割があることもわかってきました。

たんぱく質は、魚や大豆製品などにも含まれていますが、特に65歳以上の人は「毎日肉をもっと食べる」ことを意識してください。 肉はより効率よくたんぱく質を摂取できます。筋肉量の維持に必要な毎日の摂取量の目安は、体重1kg当たり1gとされていますが、 すでに痩せすぎていたり、筋肉量が減っている場合は、少し多く摂る必要があります。 体重が60kgなら70gといった具合に、体重の数字プラス10gが目安です。 食品に含まれるたんぱく質の量は、食品の種類や部位などによって異なります。100g当たり豚もも肉で20.5g、牛ヒレで19.1g、鶏ささ身で24.6gほどです。


ビタミン類

高齢者の体の機能を維持するのに不可欠

ビタミンAビタミンCビタミンE
この3つは、「抗酸化物質」としても知られる重要なビタミンです。 抗酸化とは、体内に生じた有害な活性酸素を無害化することで、抗酸化物質はアンチエイジングにも役立ちます。 緑黄色野菜や植物油などに含まれます。

ビタミンD
カルシウムの吸収をよくし、骨を強くします。 不足すると骨粗鬆症や骨折を起こす危険が高まります。 免疫の働きを調整する働きがあるため、アンチエイジングにも有用といわれています。 最近、筋肉を増やす作用があることもわかり、たんぱく質と一緒に摂ることが勧められています。 魚やキノコ類などに含まれています。

ビタミンB群
ビタミンB1・B2・B6・B12などのビタミンB群は、 それぞれが協力して炭水化物や脂質などの代謝を高めるほか、脳や神経系、免疫系、皮膚や粘膜など、様々な部位の活性化に関わっています。 どれも高齢者にとって重要な働きです。野菜や果物などに含まれています。

コエンザイムQ10
コエンザイムQ10は、ビタミンではありませんが、 ビタミンと同じように働くビタミン様物質の一つです。 体内のエネルギー産生に関わるほか、抗酸化作用を持つことで注目を集めています。 肉や青魚などに含まれますが、量が少ないため食事だけで摂るのは大変かもしれません。


ミネラル

さまざまな働きで健康を維持

栄養素として必要なミネラルは、現在15種類。 体をつくったり、神経系や筋肉の働きを調節するなど、その働きは健康維持に欠かせません。 ミネラルは体内で作ることができないため、食事から摂る必要があります。 日本人の食事の場合、ナトリウムやリンは摂りすぎる傾向が、カルシウムや亜鉛は不足する傾向があります。 ミネラルのうち、ナトリウム、 カリウムカルシウムマグネシウム、 リンなどは、体内に比較的多く存在しますが、 、 亜鉛などはなどはごくわずかで、少しでも不足すれば欠乏症、過剰になれば過剰症になることがあります。

亜鉛
亜鉛は、免疫の働きを高めたり、アンチエイジングに役立つといわれています。 不足すると、例えば味覚障害になることが知られています。 それだけでなく、亜鉛は細胞の修理や修復、免疫機能など、体内で起こる数多くの反応に関わるほか、抗酸化にも役立ちます。 牡蠣や納豆などには、亜鉛が多く含まれています。

■脂質

高齢者には、優れたエネルギー源

脂質は1gで9kcalと、高齢者にとって非常に効率のよいエネルギー源です。 しかも、エネルギー代謝によって生じる老廃物の量が少ないという特徴があります。 同時にホルモンや細胞膜の成分になったり、ビタミンの吸収をよくしたりする働きもあります。 脂質を構成する脂肪酸には、ごま油などに多いリノール酸、α-リノレン酸、レバーなどに多いアラキドン酸など多くの種類があり、働きも様々です。

n-3系脂肪酸
青魚の油に多いDHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(エイコサペンタエン酸)、 えごまやシソ油に多いα-リノレン酸などは、n-3系と呼ばれます。 これらには、血中脂質のバランスを整え、免疫の働きを高める効果があるといわれます。 脂質の摂り方では、n-3系とリノール酸やアラキドン酸などn-6系をバランスよく摂ることが大切です。

▼中鎖脂肪酸
最近注目されている脂質です。中鎖脂肪酸は、素早く消化・吸収されて効率よくエネルギーになるため、 医療現場では患者さんの栄養補給に使用されるほか、食が細くなった高齢者にも適しています。 ココナッツなどに含まれる成分で、油やパウダーとして市販されています。 料理にかけたり混ぜたりして使います(⇒ココナッツオイル)。

食物繊維

しっかり摂って腸内環境改善

野菜キノコ類海藻類などに多く含まれます。現代人は不足がちなので、高齢者も気を付けて摂るようにしてください。 水に溶けない「不溶性」と水に溶ける「水溶性」の2種類があります。 不溶性には、腸を刺激して働きをよくし、便通を改善するほか、腸内の環境を整える働きがあります。 一方、水溶性は、糖質やコレステロール、塩分などの吸収を穏やかにしたり、免疫の働きを高めたりする効果があります。 最近わかってきたのは、腸内の乳酸菌などの作用により、 水溶性食物繊維の一部が発酵・分解され、「短鎖脂肪酸」と呼ばれる脂質の成分が作られることです。 短鎖脂肪酸は素早く大腸から吸収され、大腸の粘膜上皮細胞のエネルギー源として利用されたり、肝臓や筋肉で利用されたりします。 短鎖脂肪酸が作られると、乳酸菌などの善玉菌が増殖しやすく、悪玉菌が増殖しにくくなって、腸内環境が改善されます。


■機能性成分

栄養素以外にもある、ぜひ摂りたい成分

抗酸化やアンチエイジングに役立つ機能性成分には次のようなものがあります。

ポリフェノール類
赤ワインやチョコレートに含まれるポリフェノールが動脈硬化の予防に効果があるとされ、 一躍脚光を浴びました。ポリフェノールは、植物性の色素などの成分で、多くの種類があり、共通の働きとして、高い抗酸化作用があるとされます。 代表的なものにブルーベリーやブドウなどに含まれるアントシアニン緑茶紅茶などに含まれる カテキン、 ショウガに含まれるショウガオール、玉ねぎやリンゴなどに含まれる ケルセチン大豆などに含まれる イソフラボンなどがあります。

オリゴ糖
いろいろな種類がありますが、消化・吸収されにくく大腸まで届くフラクオリゴ糖や ガラクトオリゴ糖は、ビフィズス菌を増殖させ、腸内環境を整えます。

乳酸菌類

腸の調子を整える

腸には、体に良い影響を与える「善玉菌」と、悪い影響を与える「悪玉菌」が共生しています。 善玉菌の代表・乳酸菌やビフィズス菌の働きとしては、便通の改善、腸内環境を整える、悪玉菌の繁殖抑制などです。 近年、腸内環境の改善は、免疫の働きを高めたり、 血圧コレステロールの上昇を抑制するなど、 高齢者にとって有益な様々な作用があることが明らかになってきました。ヨーグルトなどで摂れます。


■その他

糖質制限って大丈夫?
炭水化物のうち、食物繊維以外のものが糖質です。糖質はエネルギー源として重要な栄養素で、ご飯、パン、麺類、イモ類などに多く含まれています。 消化・吸収されやすいため、摂取してから短時間で、効率よく利用することができます。 糖質が不足するとエネルギー不足から、体力が低下したり、筋肉が減って肝臓の働きが低下したりします。 したがって、最近は糖質制限が話題になっていますが、高齢者には極端な糖質制限をすることは勧められません。