コレステロールとメタボリックシンドローム

冠動脈疾患を招くメタボリックシンドローム

近年、メタボリックシンドローム が注目されていますが、 ”ちょっと値が高いだけだから大丈夫”と思っていませんか? これは、単なる”お腹ポッコリ”などではなく、「コレステロール値」が高い状態と同様、 「動脈硬化」を進行させ、 「心筋梗塞」などの 冠動脈疾患を招く大きな危険因子なのです。


■メタボリックシンドローム

高LDLコレステロール血症と並ぶ冠動脈疾患の危険因子

「内臓脂肪型肥満」に加えて、 「脂質」「血圧」「血糖」のうち2つ以上の項目が診断基準に当てはまる状態を、「メタボリックシンドローム」といいます。 このように動脈硬化の危険因子が複数集まっていると「冠動脈疾患」を起こしやすいため、 最近では、冠動脈疾患の予防を考えるうえで、欠かせない危険因子として注目されています。

【"ちょっと高め”が集まると危険】

動脈硬化を促進して冠動脈疾患を起こす危険因子の代表的な存在が、「高LDLコレステロール血症」です。 また、「喫煙」も動脈硬化を進めて、冠動脈疾患を引き起こしやすくします。 しかし、冠動脈疾患を起こした患者さんのすべてが、高LDL血症や喫煙歴を持っているわけではありません。 そこで、”冠動脈疾患を引き起こす別の危険因子があるのではないか”と考えられ1960年代から様々な検証が行われました。 その中で注目されたのが、「肥満」 「高血糖」 「インスリン抵抗性」「高中性脂肪症」などです。 これらは単独でも動脈硬化の危険因子になりますが、基準値を超える程度の状態でも、集まると重大な危険因子となることがわかってきました。


■メタボリックシンドロームの概念

高LDLコレステロール血症以外の危険因子が集積すると危険

複数の危険因子が集まると、動脈硬化が強く促進されるという考え方は、1980年代末ごろから相次いで提唱されました。 その代表的なものに、「シンドロームX」「死の四重奏」「インスリン抵抗性症候群」などがあります。 ただし、当時はまだ具体的な診断基準は示されていませんでした。
1999年になると、WHO(世界保健機関)が初めて「メタボリックシンドローム」という名称を提唱し、 具体的な診断基準が提案され、さらに2005年には、IDF(国際糖尿病連合)からも独自の診断基準が発表されました。 日本では、人種ごとの特性や体質の違いなどからWHOなどの診断基準をそのまま採用するのではなく、 日本人に合った独自の診断基準作りが進められてきました。そして、2005年4月に、日本人のための診断基準が発表されたのです。 日本の診断基準の特徴は、腹腔内に「内臓脂肪」が蓄積することによる内臓脂肪型肥満を基準に置いていることです。

【特定健診は内臓脂肪の蓄積を重視している】

2008年4月から、生活習慣病の予防を推進するための施策として、40~74歳の人を対象にした「特定健診」が開始されました。 特定健診にも、内臓脂肪の蓄積による内臓脂肪型肥満に着目した日本のメタボリックシンドロームの考え方が反映されています。


■メタボリックシンドロームの危険性

冠動脈疾患の危険度は高コレステロール血症とほぼ同じ

冠動脈疾患や「脳卒中」による脂肪の危険度が、危険因子を多く合併しているほど高くなることは、日本全国で行われた大規模研究でも証明されています。 「肥満」「高血圧」「高血糖」「高中性脂肪」「低HDLコレステロール血症」の5つの危険因子について、 持っている数が多い人ほど、 「心筋梗塞」「脳卒中」などを起こしやすい傾向が見られました。 北海道の端野町(現・北見市)と壮瞥町で行われた研究によると、メタボリックシンドロームのある人では、 心疾患血管を発症する危険度がそうでない人の約1.9倍でした。 一般に、高LDLコレステロール血症は、心血管疾患を発症する危険度を1.5倍~2倍程度高めるといわれています。 つまり、メタボリックシンドロームの危険度は、高LDLコレステロール血症と同程度と考えられるのです。
現在メタボリックシンドロームは、高LDLコレステロール血症や喫煙と並んで、 冠動脈疾患の独立した危険因子の1つとして位置付けられています。 これらの危険因子を併せ持つほど、冠動脈疾患を併せ持つほど、冠動脈疾患の発症リスクは高くなっていきます。 冠動脈疾患の予防には、LDLコレステロールはもちろん、それ以外の危険因子にも注意することが大切です。


メタボリックシンドロームの危険性