片頭痛の治療と予防

片頭痛には、さまざまな新しい対処法が考え出されており、 上手な対処のために知っておきたいポイントは、「閃輝暗点や頭痛の症状で片頭痛を判別する」「トリプタンを服用するタイミングが重要」 「予防薬を積極的に使い、痛みを起こさせない」の3つです。 トリプタンや予防薬によって痛みを調節することで症状が軽減できたり、痛みを予防できるようになった人も増えています。 また、生活の中に頭痛を引き起こす誘因がないかも見直して対処しましょう。


■片頭痛の治療

●薬物療法

治療の中心は薬物療法です。急性期には、「トリプタン系製剤」が主に用いられます。 片頭痛の治療薬であるトリプタンには、三叉神経の周囲の炎症を抑える作用と、脳の血管を収縮させる作用があります。 トリプタンは、片頭痛の痛みが起きたら、すぐに使用すると最も効果を発揮します。 片頭痛の始まりがわかりにくい場合は、頭痛を感じた時に、お辞儀をしたり、頭を左右に軽く振ったりしてみて、痛みが強くなるようであれば、 薬を使用するタイミングと考えられます。 トリプタンには、効果の現れ方によっていくつかタイプがあるので、医師に相談してください。 痛み始めてから痛みが強くなるまでが速い人は効果が早く出るタイプ、頭痛の持続時間が長い人は効果が長く続くタイプが有効です。

トリプタンには、飲み薬の他に水なしで口の中で溶ける口腔内崩壊錠・口腔内速溶錠、 吐き気で飲み薬を使えない人には、液体状の点鼻薬があります。 また、太ももなどに自分で注射する皮下注射薬は、即効性があり、吐いたり頭痛がひどくなってからでも効果があります。 トリプタンは血管を収縮させる作用があるため、脳梗塞狭心症・心筋梗塞などがある人は、病気を悪化させる可能性があるので使用できません。 また、重症の高血圧重い肝臓病などのある人も使用を控えます。 トリプタンを使用できない場合は、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を用いて痛みを抑えます。 なお、妊娠中や授乳中の場合は、薬の使用については専門医に相談してください。 頭痛の薬は適切に使用すれば効果を発揮しますが、自己判断で使いすぎると、薬の使い過ぎによる頭痛を起こす恐れがあるので注意してください。

また、軽い発作なら「鎮痛薬・消炎鎮痛薬」が有効な場合もあります。吐き気を伴う場合は、「制吐薬」も併用されます。


●片頭痛の予防療法

頭痛発作の頻度が高い場合などには、発作を起こりにくくし、治療薬を効きやすくする目的で予防療法を検討します。 片頭痛の予防療法には、「カルシウム拮抗剤」「β遮断薬」などが用いられています。
片頭痛の頭痛発作の頻度が高い場合などには、発作を起こりにくくし、治療薬を効きやすくする目的で予防薬を検討します。 予防薬の使用が検討されるのは、頭痛が1ヵ月に2~3回以上あるなど回数が多い、1ヵ月に1回程度でも頭痛の持続時間が長く日常生活に支障がある、 トリプタンやNSAIDsなどの治療薬が効かない、片頭痛を起こすことに対する不安が強い場合などです。 これらの条件に当てはまり、本人が希望する場合に使用します。 予防薬として使われるのは、主に「カルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、β-遮断薬、抗うつ薬」などの飲み薬です。 予防薬を2ヵ月以上続け、頭痛の回数の減少や痛みの程度の軽減が3~6ヵ月続いたら、徐々に予防薬の量を減らしていき、中止します。


●予防に役立つ頭痛ダイアリー

頭痛が起こるときの傾向を把握して対策を立てる

片頭痛の予防に役立つのが、頭痛ダイアリーです。痛みの程度や持続時間、日常生活への影響、薬の使用状況、吐き気など頭痛に伴う症状の他、 女性の場合は月経、ストレス、寝不足や寝過ぎ、悪天候など、片頭痛の誘因と思われる出来事を記録します。 1ヵ月ほど記録すると、片頭痛の起こるときの傾向がわかってくるので、自分なりに予防策を立てやすくなります。 また、受診する際に持参すると、スムーズな診断や治療に繋がります。


■片頭痛への対処法

片頭痛が起きた時に自分でできる対処法としては、まず痛む部位を冷たいタオルなどで冷やすことです。 患部を温めたり、揉んだりすると、逆効果になることが多くあります。頭痛のある時は、入浴は控えてください。 静かな暗い場所で安静にし、可能なら少しでも睡眠をとると症状が落ち着きます。 痛みがそれほど強くない場合は、市販の頭痛薬で症状を抑えることも可能です。 日常生活に支障がある場合は、まずかかりつけ医を受診しましょう。 症状の改善が不十分な場合は、専門医がいる頭痛外来や神経内科などを受診することをお勧めします。
近年は、医療の進歩とともに、さまざまな治療法や対処法が登場し、苦痛を取り除くことができるようになっています。 上手な対処のために知っておきたいポイントは、次の3つです。


●ポイント①閃輝暗点や頭痛の症状で片頭痛を判別する

慢性頭痛は、エックス線検査やMRI検査などの画像検査で診断することができません。 そのため症状によって診断しますが、2013年に、慢性頭痛の国際診断基準もでき、決め手となる症状がはっきりして、診断がつきやすくなってきました。


◆閃輝暗点は特有の症状

片頭痛に特有の症状に、閃輝暗点があります。本などを見た時、視野の真ん中あたりに、キラキラした光のギザギザが見え、 それがだんだん広がっていき、やがて視野から消えます。 その間、5~20分程度です。閃輝暗点が消えると、60分以内に、頭痛が始まります。 この閃輝暗点を前兆とする頭痛は、片頭痛と診断できます。 閃輝暗点が現れるのは片頭痛の患者さんの1~2割で、大多数は片頭痛特有の前触れ症状はありません。 そのため診断しにくかったのですが、現在は、①片側に起こる、②ズキンズキンと拍動性の痛みがある、③痛みが強い、④動くと痛みが悪化する の4つのうち2つ以上当てはまることが片頭痛の診断基準になっています。

◆光・音に過敏なほどの症状でも判別する

片頭痛では、吐き気を伴うことや、音や光に敏感になることもあります。 そこで、これらの症状の場合も、診断基準になっています。
前述した4つの症状のうち2つ以上当てはまることに加え、「吐き気」「光・音に敏感」のどちらかがあれば、片頭痛と診断されます。


■ポイント②トリプタンを服用するタイミングが重要

治療には、頭痛治療薬トリプタンの内服薬を使います。 片頭痛は、理由は不明ながら、脳の中にある太い血管が拡張し過ぎることなどによって起きます。 トリプタンには、この拡張した血管を元の状態に戻す作用があります。 三叉神経の興奮を抑える作用も、鎮痛効果に関係します。 トリプタンを効果的に用いるためには、使用のタイミングが重要になります。 頭痛が起きる前に飲んでも、痛みが深刻化した後に飲んでも、あまり効果は期待できません。 最も効果的なのは、ズキンズキンと痛みが始まったが、まだ吐き気までは起きていない、軽度の段階で服用することです。 前兆として閃輝暗点がある場合は、閃輝暗点が消え、頭痛が治まったらすぐに薬を服用します。 なお、トリプタンは血管を収縮させるため、脳梗塞・狭心症など、血管が収縮すると発作が起こる可能性のある病気を持つ人は、使えません。 そのほか肝機能が低下している人、重度の高血圧の人てんかんがある人なども、使用できません。 この場合は、非ステロイド系抗炎症薬で、痛みを抑えます。使用するタイミングは、トリプタンと同じです。


■ポイント③予防薬を積極的に使い、痛みを起こさせない

トリプタンや非ステロイド性抗炎症薬を、月に10回以上使用していると、薬の使い過ぎによる頭痛を起こす可能性があります。 頻繁に薬を使用しないと症状が抑えられない場合は、予防薬を積極的に用いて、頭痛の回数や程度を減らしていきます。 予防薬としては、カルシウム拮抗薬、抗てんかん薬が使われることが多くなっています。 そのほか、β-遮断薬、抗うつ薬が使われることもあります。カルシウム拮抗薬とβ-遮断薬は、高血圧の薬として、よく使用されますが、 片頭痛に使うカルシウム拮抗薬は血圧にはほとんど影響がありません。 ただし、予防薬を飲み始めても、すぐに効果は現れません。少なくとも、2ヵ月以上、使用を継続していく必要があります。 効果が現れ、頭痛が少なくなってからも、3~6ヵ月ほど服用を続けます。頭痛が月に1~2回に減ったら、予防薬を少しずつ減らしていきます。 予防の対象になるのは、片頭痛の発作が2回以上ある人です。 なお、予防薬を使いすぎても、別の頭痛が起こる心配はありません。


■それぞれ頭痛を引き起こす誘因がある

片頭痛を引き起こす誘因がないか、これまでの生活を振り返ってみましょう。 誘因は、その人によってそれぞれ異なります。ストレスや、月経前などホルモン変化のあった時、気温などの気候が変化する前、 人混みや騒音など、さまざまなことが誘因になります。人によってはワインやチョコレートなどの特定の食品が誘因になることもあります。 自分の誘因が見つかった場合は、できるだけそれを避けて、頭痛が起こるのを予防します。 ホルモン変化や気候など、避けられないものであれば、うまく予防薬や頭痛治療薬を用いて、頭痛を上手にコントロールしていきましょう。


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