■呼吸や自分の声が耳の中で響きます

4年ほど前から右耳の中に空気が充満した感じがあり、呼吸のたびに耳の中がウォー、ウォーと響きます。 また、発声すると耳の中がスピーカーのように響き渡って気分が悪くなります。 症状があるときに頭を下げたり横になったりすると即座に症状は消えますが、元の姿勢に戻るとまた症状が現れます。 受診した3つの病院ではいずれも「耳管拡張症」と診断され、有効な治療法はないと言われました。 原因や治療について教えてください。
(78歳・男性)


【答】

音は空気を振動させ、耳の中の鼓膜に伝わります。鼓膜を振動しやすくするためには、鼓膜の内側の中耳圧を外気圧と同じように調節する必要があります。 この調節をしているのが、中耳と鼻咽腔(鼻の奥の方)をつなぐ「耳管」です。 耳管は通常閉じていますが、物を飲み込む、あくびをする、鼻をかむなどの動作で開き、中耳圧を調節します。 この耳管の開きが悪くなると「耳管狭窄症」、耳管の閉まりが悪くなると「耳管開放症」が起こります。 なお、耳管拡張症という病名はないので、耳管開放症のことだと思います。 耳管開放症の特徴は、@症状として耳閉感、呼吸器聴取、自声強聴がある、A症状は臥位(寝た状態)や前屈位(前屈みの状態)などに体位を替えると改善する、 というものです。ご質問者には、@右耳の中に空気が充満した感じがする(耳閉感)、呼吸のたびに音が響く(呼吸音聴取)、 発声するとスピーカーのように響く(自声強聴)症状がある、A頭を下げたり横になったりすると即座に症状が消える、という特徴的な症状がそろっているので、 典型的な耳管開放症と考えられます。 耳管開放症の原因ははっきりとはわかっていませんが、発症前に急激な体重減少を経験しているケースが多く見られます。 ダイエット、ストレス、大きな手術などによって体重が減少し、耳管周囲の脂肪が減少することが関係していると考えられています。 中耳炎の後遺症として発症することもあります。

治療では、ストレスやダイエットなど体重減少に繋がる生活スタイルの改善が大切です。 点鼻薬や漢方薬などが試されることもありますが、特効的な薬はありません。 ある種の薬を耳管内へ直接投与することで耳管粘膜に炎症を起こして耳管を狭くする治療や、鼓膜の過剰な振動を抑えるために、 鼓膜にテープを貼る治療などが行わられることもあります。 また、最近では、鼓膜を切開し、鼓膜側から耳管を狭くするためのシリコン製の「耳管ピン」を挿入する医師主導治験が行われており、 その成果が期待されています。これらの新しい治療は耳管開放症を専門的に診察する施設に限られているので、担当医に相談してみてください。

(この答えは、2019年3月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)