【質問】激しい肩の痛みを繰り返しています
8年ほど前に右肩が痛くなり貼り薬で対処しましたが、眠れないくらいの痛みになったので受診したところ「石灰化滑液包炎」と診断されました。
その2年後にも同様の痛みが起こり、受診しました。いずれも注射とナイキサンの処方を受けてよくなりましたが、
今も時々鍵を回すのもつらいほどの痛みが起こります。激しい痛みを繰り返さないための対策はありますか?
●60歳代・女性
【答】
「石灰化滑液包炎」は正式には「石灰沈着性腱炎」といいます。
お手紙の内容からご質問者の肩の痛みは「肩石灰沈着性腱炎」の可能性が高いと思います。
肩石灰沈着性腱炎は40~50歳代の女性に多く発症する傾向がみられる病気で、
加齢によって変性した肩腱板にリン酸カルシウム結晶からなる石灰が沈着して肩の痛みや運動制限が起こります。
石灰の状態は泥状、練り歯磨き状、石膏状などさまざまですが、石灰沈着があっても無症状のこともあります。
肩石灰沈着性腱炎はは発症のしかたにより、急性型、悪急性型、慢性型に分類されます。
急性型は炎症による激痛で肩をほとんど動かせない状態になることもありますが、
多くは1~2週間で軽快します。悪急性型は軽度の鈍痛が数か月間持続し、時折痛みが強くなることがあります。
慢性型は半年以上症状が持続し、安静時痛はないか、あっても軽微ですが、腕を挙げると90度前後で引っ掛かり感とともに痛みが生じるのが特徴です。
治療ですが、急性型の場合は非ステロイド系消炎鎮痛薬の内服と、石灰沈着部、または肩峰下滑液包内へのステロイド薬の注射で劇的に症状が改善します。
悪急性型と慢性型の場合は石灰沈着部が膨隆して骨や靭帯とこすれ、肩峰下滑液包炎を生じやすくなっているため、
肩峰下滑液包内へステロイド薬の注射をしたり、エコーで確認しながら石灰沈着部に針を刺し、局所麻酔剤を注入しながら、石灰を吸引したりします。
沈着した石灰が石膏状になっている場合は吸引しにくいため、関節鏡手術で摘出することもあります。
ただし、石灰沈着があっても症状と関係しない場合や、最初の痛みの原因が石灰沈着性腱炎でも、
その後の痛みが別の原因で起こっている可能性もあります。
中高年で肩の痛みを生じる場合は、整形外科を受診し、身体所見、画像所見、血液検査所見などを総合して診断をしたうえで、
適切な治療を受けることが大切です。
(この答えは、2024年6月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)