【質問】下肢の血管が瘤のように膨らんでいます
母(80歳)の下肢の血管が瘤のように膨らんでいます。この血管が詰まるなど最悪の事態を避けるために、手術を受けた方がよいでしょうか。 また、日常生活で気を付けることがあれば教えてください。
【答】
お母さまの下肢の症状は、おそらく「下肢静脈瘤」によるものだと思います。 下肢静脈瘤は良性の病気で、下肢の表面から見える血管(表在静脈)が詰まったり、破れたりすることはほとんどありません。 また、脚の血液の大半は下肢の深いところにある静脈(深部静脈)を介して心臓に戻るので、もし表在静脈が詰まったとしても、 抑えると痛んだり皮膚が赤くなったりする「表在性血栓性静脈炎」が起こる程度で、命に関わるようなことは、まずありません。 下肢静脈瘤の治療法には、「圧迫療法」と「手術」があります。 圧迫療法は、起きている間は医療用の弾性ストッキングを装着し、就寝時は膝から足までを座布団2枚分高くして寝ることを繰り返します。 手術には、静脈を抜き取る「静脈抜去術」や高周波やレーザーで静脈瘤を焼いて閉じる「血管内焼灼術」があります (他に「高位結紮術」や「硬化療法」もありますが、瘤のように大きく膨らんだ下肢静脈瘤の治療には不向きです)。 これらの手術は局所麻酔で行えるもので、手術後すぐから歩行や足首の運動を行うのが安全です。 全身麻酔での手術や術後の安静はお勧めしません。 高齢者や他の病気で治療中の方には、まず弾性ストキングによる圧迫療法をお勧めします。 ただ、治療に必要な圧迫力のあるストッキングは装着するのが一苦労で、高齢者には難しい場合もあります。 日常生活では、長時間立ったり椅子に座ったりしない、時々爪先立ちや足首の運動をするなどを心掛けるとよいでしょう。 手術では、最近は血管内焼灼術が注目されていますが、この病気に対する治療に慣れている医師であれば、昔から行われている静脈抜去術も安全です。 ただ、いずれの手術法も血管を処理するものなので、高齢者や他の病気がある場合は、手術当日までに入院し、 手術翌日も術後状態をしっかり診てもらえる施設で手術を受けられるのがよいと思います。
ところで、下肢の静脈に瘤ができる病気には、下肢静脈瘤のほかに、「深部静脈血栓症」の後にできる「二次性静脈瘤」があります。 脚の血液の帰り道である深部静脈に血栓ができたために表在静脈がバイパスになるなるもので、二次性静脈瘤の場合は手術を行うべきではありません。 そのため術前には十分な検査が必要です。手術や検査は、すべて保険診療で受けられます。 静脈瘤治療の得意な外科や皮膚科で診察や検査を受け、十分に説明をお聞きになったうえで治療法を選択されるのがよいでしょう。
(この答えは、2019年4月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)