■甲状腺の治療薬は飲み続けても大丈夫でしょうか?

8年前に受けた検査で、甲状腺が大きく、甲状腺ホルモンが不足していることがわかり、それ以来ずっと甲状腺ホルモンを補う薬を服用しています。 薬を飲み始める以前も現在も、特に自覚症状はないのですが、このまま薬を飲み続けなければならないのでしょうか。 薬を少しずつ減らしていく、あるいは症状が出た時に飲むというような使い方はできないのでしょうか。
●50歳代・女性
●使用中の薬はチラーヂンS


【答】

お手紙から、ご質問者は 「橋本病(慢性甲状腺炎)」 という病気と診断されます。橋本病は、甲状腺疾患の中で最も多く、代表的なものです。 ご質問者の場合、8年前、甲状腺ホルモンが不足していたために甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を内服しました。 その時にはまだ早期であったためか、甲状腺ホルモンの不足がそれほどでなかったために、自覚症状はありませんでしたが、 甲状腺ホルモン剤を内服することで甲状腺ホルモン値は正常になったようです。 しかし、病気の原因が根本的に治ったとは言えないので、ここで内服薬を中断すると甲状腺機能低下の症状が出てくる可能性がありますので、 基本的には現在量を内服してください。

橋本病は、甲状腺の組織を抗原と誤って認識し、抗体を作り破壊してしまう自己免疫疾患です。 その結果、甲状腺ホルモンを十分に産生できなくなり、甲状腺機能が低下します。 しかし始めのうちは、甲状腺ホルモンが不足したことを察知した脳の下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、甲状腺ホルモンの不足分が補充されます。 そのため、この病気に特有の首の腫れが現れていても、自覚症状がないことがよくあります。また、軽度のホルモン不足では症状が出ないこともあります。 診断は、血液検査で自己抗体が陽性なら橋本病といえます。しかし、進行して甲状腺ホルモンが不足してくると、疲れやすい、眠くなる、無気力、 むくみ、脈が遅くなる、冷え性、便秘などの症状が出てきます。さらに進行すると、筋痙攣、心嚢液貯留、心不全などの重大な症状を起こします。

治療は、甲状腺ホルモン値が正常なうちは治療不要で、年に1回程度の検査を受けていれば大丈夫です。 しかし、甲状腺ホルモン値が不足してくると、いろいろな自覚症状が出てきます。 その場合には甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を飲んでください。もともと体にあるホルモンですから副作用はほとんどありません。 内服によって体調は改善されますが、橋本病自体が治ったわけではないので、内服は続けてください。 しかし、自己抗体が減少してくれば薬を減らすことも可能ですので、担当医とよく相談してください。 最後に、進行した橋本病では、ヨードを多く含んでいる昆布を多く摂ることやうがい薬の多用は控えてください。

(この答えは、2017年4月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)