【質問】軟らかい便が漏れることがあります

5年ほど前から、軟らかい便が漏れるようになり、週に数回、パッドを使ってケアしています。 手術が必要だとしたら、簡単にできるものでしょうか。
●82歳・女性


【答】

無意識に、または、自分の意思に反して肛門から便が漏れる症状を 「便失禁」といいます。 通常は、直腸に便が溜まると腸壁を刺激し、それが神経を介して脳に伝えられて便意が生じます。 この時腹圧をかけると肛門を閉じている肛門括約筋が反射的に緩んで、排便が起こります。 この仕組みのどこかに不具合が生じ、排便をうまくコントロールできなくなると、便失禁が起こってしまいます。 便失禁の原因で最も多いのは、加齢に伴う肛門括約筋の衰えです。

便失禁の治療で最初に行われるのは、生活改善や薬物療法などの保存的療法です。 便が柔らかいと漏れやすいので、食事では便の状態を整える働きをする 食物繊維を積極的に摂り、香辛料の多い食品や乳製品などは控えるのがポイントです。 代表的な治療薬であるポリカルポフィルカルシウムは腸内で水分を吸収して膨らむ性質があるので、便を固形化して下痢を防ぐ働きがあります。 それでも便が固まらない場合は下痢止めを使う場合もありますが、便秘にならないように量を加減することが重要になります。 また、骨盤底筋を収縮する訓練によって便失禁を改善させる「骨盤底筋訓練」があります。 コツは腹筋を収縮しないように呼吸を続けたままの状態で行うことです。 「肛門をお腹側に引き上げた状態を10秒間保ち、20秒休む」のを10~20回行うのを1セットとし、1日3~5セットを目標に行います。

外科治療は、保存的治療で改善しない場合に検討します。肛門や直腸の感覚や働きに関わる神経に電気刺激を送ることで便失禁を改善させる 「仙骨神経刺激療法」の手術は2段階に分けられます。 1回目の手術では、仙骨神経の近くに刺激リードを留置し、体外式刺激装置を用いて刺激電流を流して便失禁の回数や程度を記録します。 約2週間の評価期間を経て効果が認められた患者さんには、神経刺激装置を埋め込む2回目の手術を行います。 効果がない場合は、刺激リードを抜去します。

便失禁の患者さんの多くは、薬物療法による効果が期待できますが、十分に改善しない場合は、専門的検査や外科治療が必要になります。 その場合は肛門科で相談することをお勧めします。

(この答えは、2019年10月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)