■妊娠を機に血圧が高くなりました
7年前、長女を妊娠した際に、「妊娠中毒症」になり、高血圧と足のむくみで立つこともできないほどでした。
出産後も症状が改善しないまま、2年後に第2子を出産しました。その後5年経ちましたが、血圧は高いままで、収縮期血圧が150mmHgあるときもあります。
足も膝から下がむくみ、脛を指で押すとくぼんで、しばらくは元に戻りません。
子育てや父の介護で十分な睡眠時間が取れないのが原因ではないかと思っているのですが、何か病気が潜んでいるのではないかと気になっています。
●40歳代・女性
【答】
「妊娠中毒症」は、現在、医学用語としては「妊娠高血圧症候群」と病名が変わっており、妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧がみられる場合、 または、高血圧にたんぱく尿を伴う場合に、妊娠高血圧症候群と呼ばれています。 かつて妊娠中毒症では、浮腫(むくみ)が重要な兆候の1つとされていましたが、現在は高血圧とたんぱく尿が重要な指標になっています。 妊娠高血圧症候群として妊娠が終了していったん兆候が消失しても、二人目の子供の妊娠時に再発する傾向は明らかにあるとされています。 また、妊娠高血圧症候群の発症者は、そののち長期にわたり高血圧を発症するリスクがあることもよく知られています。 ご質問者が一人目のお子さんを出産した後、高血圧が治ったのでなければ、”妊娠中毒症”ではなく、いわゆる一般的にいわれる”高血圧”へと 病気が移行したものと考えます。高血圧が持続すると、次回の妊娠時には再び妊娠高血圧症候群が出現して、さまざまに悪化することが知られています。
高血圧には種々の原因があります。その多くは「本態性高血圧症」で、遺伝的背景や環境因子で発症します。
しかし中には、腎疾患、甲状腺疾患、その他の内分泌疾患による高血圧などがあり、これらは
「二次性高血圧」と呼ばれており、
高血圧を主訴に来院された患者さんから前述の疾患が見つかる場合があります。
ご質問者は、浮腫が足にあるとのことですが、これらの二次性高血圧でも浮腫が顕著に現れることがあります。
また、浮腫自体は、下肢の静脈血栓(「深部静脈血栓」)でも起こり、静脈血栓は、「抗リン脂質抗体症候群」という自己免疫疾患などでも起こります。
血栓は、血管内にできる血液の塊で、この血栓が血管に詰まって血流が悪くなる状態を血栓症といいます。
血栓症と妊娠高血圧症候群との関連性も指摘されています。
ぜひ、まずは高血圧疾患の専門医(循環器内科、腎臓内科など)の受診をお勧めします。
また、過労や睡眠不足なども症状の悪化に関係します。子育てや介護のため十分な睡眠時間が取れないとのことですが、
日常生活を工夫してできるだけ体を休めることも大切です。
(この答えは、2017年4月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)