二次性高血圧
特定の病気などが原因となる。
若い人に多く、気付かないことも。
一般に、高血圧と言えば、体質や生活習慣の乱れが重なって起こる「本態性高血圧」を指します。 しかし、特定の病気などが原因となって引き起こされる高血圧もあります。 これを『二次性高血圧』といい、高血圧の1~2割程度を占めます。 本態性高血圧は完治が難しく、”コントロールする”ものであるのに対して、二次性高血圧は背景にある原因に対処すれば、 高血圧も治る可能性が高いという点が大きな違いです。 二次性高血圧は若い人に多くみられ、命にかかわる病気に繋がる危険性も高いため、二次性高血圧のサインを見逃さないことが大切です。 若い世代では、、仕事や家事の忙しさから薬を飲み忘れたり、そもそも高血圧に気づいていないことも多いため、 「脳卒中」や 「心筋梗塞」に繋がることも少なくありません。 合併症を避けるためにも、二次性高血圧のサインを見逃さないことが重要です。
■二次性高血圧の原因
血圧にかかわるホルモンの増加や腎臓の病気などが原因となる。
二次性高血圧には主に、ホルモンの異常で起こる「内分泌性高血圧」や腎臓に病気があって起こる 「腎性高血圧」「血管性高血圧」、脳の外傷や脳炎などで起こる「脳・中枢神経性高血圧」、 薬が原因で起こる「薬剤性高血圧」などがあります。 血圧の値だけを見ていると、本態性高血圧と区別しにくいのですが、二次性高血圧の発症の仕方には特徴があります。 特に、数週間の間に血圧が急上昇したような場合には、二次性高血圧が疑われるため、心当たりがあれば医療機関を受診してください。 すでに高血圧の治療を受けている人であれば、担当医に相談したり、別の医師に意見を聞く「セカンドオピニオン」を求めたりするのもよいでしょう。
- ▼内分泌性高血圧
- 副腎に腫瘍ができて、血圧を上げる「アルドステロン」というホルモンの分泌が過剰になる 「原発性アルドステロン症」や、 「クッシング症候群」 「褐色細胞腫」などがあります。 クッシング症候群は、副腎や脳の下垂体などに腫瘍ができ、「コルチゾール」というホルモンが過剰に分泌されることで生じる病気です。 褐色細胞腫は、副腎や交感神経などにできる腫瘍の一種で、「カテコラミン」が過剰に分泌されるために血圧が上昇します。 このほかにも、「甲状腺疾患」 「副甲状腺機能亢進症」 「先端肥大症」などがあります。
- ▼腎性高血圧
- 腎臓の病気が原因で起こる高血圧で、二次性高血圧の中で最も多くみられます。 血圧と腎臓には"血圧が高いと腎臓が障害され、腎臓が障害されると血圧が上がる"という相関関係があります。 そのため、腎臓病のほとんどは、高血圧を引き起こします。 最も多いのは「慢性糸球体腎炎に伴う高血圧」ですが、腎臓の血管が狭くなったり、詰まったりするために起こる「腎血管性高血圧」もしばしばみられます。
- ▼血管性高血圧
- 「大動脈炎症候群(高安動脈炎)」や 「大動脈縮窄症」による高血圧が、 比較的よく知られています。 大動脈症候群は、大動脈やその周辺の太い血管に炎症が起こる病気です。 大動脈縮窄症は、大動脈が狭くなる病気です。
- ▼脳・中枢神経性高血圧症
- 「脳の外傷」や「脳炎」などが交感神経を活性化させて、高血圧を引き起こす場合があります。
- ▼薬剤性高血圧症
- 血圧を上げやすい薬としては、「副腎皮質ホルモン薬」「非ステロイド性消炎鎮痛薬」「一部の漢方薬」などがあります。 非ステロイド性消炎鎮痛薬は痛み止めとしてよく使われますが、長期間飲み続けていると、血圧を上げることがあります。
- ▼その他
- 「妊娠に伴う高血圧」などがあります。 妊娠に伴う高血圧の多くは、妊娠20週以降に発症します。出産後12週までに自然に正常範囲まで下がることが多いのですが、 妊娠中の高血圧は母体と胎児の両方に悪影響があるため、治療などの対処が必要です。
■副腎が関係する二次性高血圧
「原発性アルドステロン症」などが原因で高血圧が起こる
内分泌性高血圧の原因として最も多いのは、副腎の病気です。 副腎などに腫瘍ができたり、副腎が肥大して、血圧を上げる働きのあるホルモンが過剰に分泌されると、血圧が高くなります。 具体的には以下のような病気があり、過剰に分泌されるホルモンの種類がそれぞれ異なります。
●原発性アルドステロン症
「アルドステロン」が過剰に分泌されます。 一方の副腎にのみ腫瘍がある場合は、「腹腔鏡」という内視鏡を使った「腹腔鏡下手術」で腫瘍を摘出すれば、血圧も下がります。 腫瘍がなく副腎が肥大している場合や、両方の副腎に腫瘍がある場合は、 アルドステロンの働きを妨げる「スピロノラクトン」や「エプレレノン」などの薬を使います。
●クッシング症候群
「コルチゾール」が過剰に分泌される病気で、女性に多く発症します。 腫瘍が副腎にある場合と、脳の「下垂体」にある場合があります。 副腎に腫瘍があれば、腹腔鏡下手術によって腫瘍を摘出します。 下垂体に腫瘍があれば、上唇の裏側を切開し、鼻の奥のあたりにある副鼻腔の「蝶形骨洞」を経由して、腫瘍を取り除く手術を行います。
【関連項目】:『クッシング症候群』
●褐色細胞腫
「カテコールアミン」が過剰に分泌されます。 急激に重症化して合併症を起こしやすいので、突然の頭痛や動悸、吐き気などが現れたら、早急な治療が必要です。 原因となっている副腎などの腫瘍を手術で摘出するのが基本ですが、手術が行えない場合には、 降圧薬の中でも交感神経に作用する「α遮断薬」を用います。
【関連項目】:『褐色細胞腫』■腎臓が関係する二次性高血圧
「腎実質性高血圧」や「腎血管性高血圧」があります。
●腎実質性高血圧
◆症状と原因
腎臓そのものに障害があるために、高血圧が起こっている状態のことです。 二次性高血圧全体の大半はこの腎実質性高血圧です。 尿検査や血液検査を行って本態性高血圧との判別をし、早めに対処することが大切です。
◆原因
原因となる病気は 糸球体腎炎、 慢性腎盂腎炎、嚢胞腎、 糖尿病性腎症、 ループス腎炎、腎結核、腎腫瘍、腎梗塞、 水腎症、 外傷による腎臓への圧迫など多岐にわたります。 病気によって、両方の腎臓が障害される場合と、片方だけの場合があります。
◆治療
原因となる病気の治療を行うことが第一です。 さらに並行して 「ACE阻害薬」や 「AⅡ受容拮抗薬」などの降圧薬を使った高血圧の治療も必要です。
これらの病気は完治が難しいため、食事を制限したり、薬を使ったりしたりして、症状を抑える治療が中心になります。
●腎血管性高血圧
◆症状と特徴
腎臓に血液を送り込む血管が何らかの理由で狭くなり、腎臓への血流量が不足すると、腎臓から「レニン」が過剰に分泌されます。 その結果、血圧が上がって腎臓への血流量は増えるとともに、全身的には高血圧になります。 レニンは血管を収縮させる作用を持つアンジオテンシンⅡという物質を作り出します。 この仕組みをレニン-アンジオテンシン系といい、血圧を上げることによって腎臓に大量の血液を送り込もうとするのです。 症状としては本態性高血圧とほとんど変わりませんが、腎動脈が競作しているために、聴診を行うと腹部血管雑音が聞こえることがあります。
◆原因
腎動脈の狭窄を引き起こすのは粥状動脈硬化、繊維筋性異形成、動脈炎などの病気です。 日本では、粥状動脈硬化、繊維筋性異形成が同程度、動脈炎が比較的多いとされています。
◆治療
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬や ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)などの降圧薬を使い、血圧をコントロールする化学療法を行います。 動脈硬化が原因の場合は、 その原因となる脂質異常症や 糖尿病の治療を行います。 また、外科療法としては、経皮的腎動脈拡張術(PTRA)という手術を行い、血管内でバルーンを膨らませて競作した 手術では、太ももの付け根から「カテーテル」という細い管を血管の狭くなっている部分まで通し、 カテーテルの先に付けた「バルーン(風船)」を膨らませ、狭窄した腎動脈を広げるという方法が主に行われます。
■その他の二次性高血圧
甲状腺の病気や薬による二次性高血圧
甲状腺機能亢進症は、
内分泌性高血圧の一つで、甲状腺ホルモンが増加して血圧が高くなります。
甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬を使ったり、甲状腺が大きくなっている場合には、甲状腺の一部を残して摘出したりします。
これらの治療を行えば、血圧も下がってきます。
非ステロイド性抗炎症薬や経口避妊薬、甘草を含む漢方薬などが原因となって、血圧が高くなる場合があります。
薬を変更して対処できることもあるので、担当医に相談してください。
●甲状腺機能亢進症
●薬剤性高血圧