高血圧に関連する病気

血管はもともと圧力がかかっても痛みを感じないようにできていて、高血圧があっても特に症状は現れません。 しかし、放っておくと、 「脳卒中」「末期腎不全」のような大きな病気を発症することがあるので注意が必要です。 高血圧に関連する病気には 「動脈硬化」 「心臓病」 「腎臓病」 「糖尿病」 「睡眠時無呼吸症候群」などがあります。



■高血圧に関連する病気

動脈硬化
動脈硬化とは、血管の柔軟性が失われ、硬く、もろくなって、血管壁が厚くなり、内腔が狭くなる状態をいい、 血圧が高いと血管壁が傷つき、動脈硬化が起こりやすくなります。 動脈硬化が進むと「末梢血管抵抗」が増加し、血圧が上がります。 高血圧は自覚症状に乏しく、その危険性を十分に認識している人は多くありません。 高血圧が続くと動脈硬化を促進し、危険な合併症を引き起こしやすくなります。 そこに高血圧の怖さがあるのです。

脳卒中
脳卒中とは突然脳の血管に異常が生じて命を奪ったり、失語症や半身不随などさまざまな後遺症を残す病気の総称です。 脳卒中の最大の危険因子は高血圧ですので「高血圧性脳血管障害」とも呼ばれます。 現在脳卒中の年間発症患者数は年間29万人。 脳卒中が原因で要介護者となった人の割合は要介護者全体の30%を越えて第1位で、後遺症を抱えて不自由な人生を送っている人は非常に多いのです。

心臓病
高血圧になると、血液を送り出している心臓にも大きな負担がかかります。 心臓病にはいろいろなものがありますが、高血圧とのかかわりで特に気を付けたいのが、 「心肥大」 「狭心症」「心筋梗塞」 「心不全」の4つです。 心臓の筋肉が厚くなるのが「心肥大」、働きが著しく低下するのが「心不全」、 動脈硬化によって起こるのが「狭心症」「心筋梗塞」です。 高血圧になると、血液を強い力で送り出すために、心臓の筋肉が厚くなって、ポンプ機能が低下し、 心臓の血管の動脈硬化が促進します。

腎臓病
腎臓は血圧との関係が深い臓器で、腎機能が低下すれば血圧は上がり、 逆に血圧が上がれば腎機能にも影響が出ます。 高血圧で腎臓が障害されると、糖尿病や心筋梗塞などの危険性も高まります。 腎臓病には、血液を濾過する腎臓の血管に動脈硬化が起こり、腎臓が硬く小さくなる「腎硬化症」と、 それが進行して腎機能が著しく低下した「腎不全」があります。 高血圧があると、腎臓の濾過機能が酷使されて、腎機能が低下していきます。

▼末期腎不全
腎臓の働きが低下する腎不全は初期には、自覚症状がないため、気が付かないうちに進行し、腎臓がほとんど機能しなくなり 透析療法が必要になる末期腎不全になることがあります。 末期腎不全のリスクは、血圧が120/80mmHg未満の場合に比べて、「上の血圧が140mmHg以上または下の血圧が90mmHg以上」の場合には、 男性では約8倍、女性では約2倍になります。「上の血圧が180mmHg以上または下の血圧が110mmHg以上」の場合には、男性では約17倍、 女性では約8倍にも上昇します。そのほかにも、高血圧の診断基準である上の血圧が140mmHg以上または下の血圧が90mmHg以上を超えると、 心筋梗塞認知症などの病気のリスクが上がることが報告されています。

糖尿病
糖尿病とは血糖値が高い状態が続くことで、様々な合併症を起こす病気です。 糖尿病と高血圧は、どちらも「インスリン抵抗性」という共通した背景があるため、 糖尿病と高血圧の両方を持つ人が多くみられ、合併すると、命にかかわる病気を起こす危険性が高まるので、 血糖・血圧とも、早期からきちんとコントロールすることが大切です。

睡眠時無呼吸症候群
高血圧がある人は、睡眠中に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」を併せ持っていることがしばしばあります。 睡眠時無呼吸症候群になると、「無呼吸」による酸素不足を補おうとして、心臓が強い力で血液を送り出すため、 心臓や血管にかかる負担が大きく、突然死を招くこともあります。

●脳・心臓・腎臓は影響を受けやすい

このように、高血圧は脳・心臓・腎臓に悪影響を及ぼします。これらの部位の構造には共通点があります。 例えば腕などの血管は、太い動脈から細い動脈、毛細血管へと徐々に細くなるため、血管にかかる圧力も徐々に弱まります。 しかし、脳では直径約3~6mmの血管から約0.1mm以下の穿通枝に、心臓では直径約2.5cmの大動脈から直径約2~3mmの冠動脈に、 腎臓では直径約3~5mmの動脈から約0.05mmの細い動脈に、それぞれ枝分かれします。 血管が急に細くなる構造のため、太い血管にかかっていた圧力が、そのまま細い血管にかかります。 高血圧があると、これらの細い血管にさらに大きな負担がかかり、血管が壊れて、脳卒中や末期腎不全などの重大な病気に繋がってしまうのです。 すでに高血圧がある人でも、生活習慣の改善や薬で血圧を下げれば、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが下がります。 血圧を管理することは、脳や心臓、腎臓を守ることに繋がるのです。