高血圧のタイプ
「診察室血圧/家庭血圧/白衣高血圧/仮面高血圧(早朝高血圧・夜間高血圧・職場高血圧)」

血圧は、測定する場所や時間帯、測定するタイミングや環境などで大きく変動します。 以前は、医療機関で測った「診察室血圧」で「正常血圧」と「高血圧」の2つに大きく分けられていましたが、 家庭用血圧計の普及に伴い、さまざまなタイプがあることがわかってきました。 現在は、医療機関で測る「診察室血圧」と自宅で測る「家庭血圧」によって、 「正常血圧」「白衣高血圧」「仮面高血圧(早朝高血圧・夜間高血圧・職場高血圧)」「高血圧」という4つのタイプに分類されます。 毎日できるだけ同じ環境で測定して、自分の平均的な血圧を知っておきましょう。



■高血圧の3つのタイプ

前記のように、高血圧にはいくつかのタイプがありますが、診察室血圧に加えて家庭血圧を測ることで、自分のタイプを知ることができます。

●高血圧

診察室血圧、家庭血圧ともに高い状態です。 診察室血圧の場合は、「収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上」だと高血圧と判定されます。 家庭血圧は診察室血圧より基準値が低く、「収縮期血圧135mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上」が高血圧に分類されます。

●白衣高血圧

診察室血圧は基準値を超えているのに、家庭血圧は基準値を超えていないタイプです。 医師や看護師の前では、緊張によるストレスのため一時的に血圧が上がってしまうのです。 白衣高血圧は通常、すぐに治療する必要はありませんが、白衣高血圧の約1/3は、将来本当の高血圧に移行するといわれているので、 ”高血圧予備軍”として経過観察が必要で、家庭血圧の測定を続けることをお勧めします。 家庭血圧の測定を続けながら、定期的に受診するようにしてください。

●仮面高血圧(早朝高血圧・夜間高血圧・職場高血圧)

診察室血圧は基準値を超えていないのに、家庭血圧は基準値を超えているタイプです。 昼間に測る診察室血圧は正常で、朝や夜に、あるいは日中に職場で、自分で測ると高血圧になります。 治療が必要なタイプで、40歳以上の約10%が仮面高血圧という報告もあります。 見逃されやすいうえに、心臓や腎臓などの臓器へのダメージや 脳卒中心筋梗塞のリスクは 一般的な高血圧と同程度なので危険なタイプだといえます。 仮面高血圧は、いくつかのタイプに分けられます。昼間高血圧は職場や家庭などでのストレスが原因で日中の血圧が高くなる場合があります。 特に注意が必要なのは早朝高血圧夜間高血圧です。

血圧は、1日の中でも大きく変動しています。通常は、起床の前後に緩やかに上昇をはじめ、 日中の活動時間帯には高くなって、夜眠っているときは下がる、という動きを日々繰り返しています。 健康な人では、日中の血圧が最も高い状態にあり、それが医療機関などで血圧測定を行う時間帯と重なるので、 自分の血圧が正常範囲内にあるのか高血圧なのか、正しい診断を受けることができます。 ところが、医療機関などで測定する「診察室血圧」は正常範囲なのに、夜間や早朝のみ、あるいは職場でのみ高血圧になる人が数多くいます。 このように、診察室血圧が正常範囲、家庭血圧が高血圧の場合、「仮面高血圧」と診断されます。 「正常な血圧」という仮面をつけた高血圧という意味で、「隠れ高血圧」とも呼ばれます。 仮面高血圧の場合、高血圧とは診断されないため、本来は治療すべきであるのに見逃されてしまい、 自分自身も生活習慣の改善などに気を配ることをしないまま過ごしてしまいがちです。 そして、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす可能性が高まってしまうのです。

仮面高血圧に特に注意が必要なのは、 糖尿病脂質異常症肥満などのある人や 喫煙者です。 こうした人は、仮面高血圧があると、 心筋梗塞脳卒中などの命に関わる病気をより発生しやすくなります。 また、過去に心筋梗塞や脳卒中、 心肥大狭心症、腎障害などを起こしたことのある人も要注意です。 どのタイプの仮面高血圧も、診察室血圧を見るだけでは見つけることができません。 仮面高血圧は診察室血圧が正常であるため、見逃されやすいので、自宅など医療機関以外の場所で、 自分で血圧測定を行う「家庭血圧」を調べなければなりません。 現在では、広く普及している家庭用血圧計 を活用することで、仮面高血圧を見付けやすくなっています。 仮面高血圧になってしまうと、知らず知らずのうちに血管は確実にダメージを受け続け、 突然死の危険性が大きくなるので注意が必要です。

早朝高血圧
朝、目覚める前後に血圧が急上昇するタイプです。朝に血圧が上がるのは生理的な現象ですが、早朝高血圧のある人では、急激に上昇することが問題です。 高齢者や動脈硬化が進んでいる人では、急激な血圧上昇により脳卒中や心筋梗塞が起こりやすくなります。 冬の寒い朝や早朝の激しい運動など、血圧が上がりやすい環境が加わると、さらに危険度が増すので注意してください。 早朝高血圧による危険を防ぐには、日常生活で、寒さや冷たさを避ける工夫が有効です。 また、高血圧の薬物療法を行っている患者さんの場合、起床のタイミングまで確実に薬の作用が持続するように、 飲み方や薬の種類を替えるなどの工夫をすることも可能です。ただし、自己判断で行わずに、必ず担当医に相談してください。

▼夜間高血圧
本来血圧が下がるはずの就寝中も、血圧が下がらずに高いままになっているタイプです。 高血圧の状態が長時間続いてしまうため、血管に負担がかかります。 すると、動脈硬化が進行したり、脳卒中や心筋梗塞、腎不全などのリスクが高まります。 慢性腎臓病 睡眠時無呼吸症候群、 糖尿病、心不全などがある人は夜間高血圧には特に注意が必要です。 家庭血圧で、夜寝る前と朝起きた時の血圧の両方が高ければ、夜間高血圧が疑われます。 就寝中の正確な血圧を知るには、24時間血圧計で測定することが必要です。 これは医療機関を受診して測定します。

▼職場高血圧(ストレス性高血圧)
診察室血圧や朝と夜の家庭血圧が正常でも、日中、仕事をしている間に血圧が高くなる「職場高血圧」は、 仕事による精神的なストレスに疲れなどが重なることで、血圧が上がるので「ストレス性高血圧」ともいわれています。 例えば、仕事による精神的なストレスに疲れなどが重なることで、血圧が上がります。 仕事のストレスで血圧が上がると、調整できないまま、勤務中ずっと高血圧が続いてしまう場合です。 夜間や早朝の血圧は正常なのに、仕事による精神的なストレスに疲れなどが重なることで、血圧が上がるのですが、 医療機関で測るときには、仕事から解放されるため、診察室血圧は低くなるのです。 また、仕事だけでなく、家庭でも同じように血圧が上がることがあります。 この場合は、育児や家事などによるストレスが原因になると考えられます。 さらに、気温の変化や大きな音などちょっとした刺激やでも血圧は上昇します。 これもまた、自分では気づきにくく、こまめに血圧を測り、実態を知ることが重要となります。 昼休みなどの空いた時間に、家庭用血圧計で測定する習慣をつけることが勧められます。 また、外出先で家庭用血圧計を見つけたら、血圧を測ってみるのもよいでしょう。

白衣高血圧や仮面高血圧は、家庭用血圧を調べなければわかりません。 自分がどのタイプなのかを知る上でも、家庭での血圧測定が重要です。



■本当の血圧を知るには?

なるべく毎日同じ時間、同じ環境で測定して平均を出す

血圧はもともと一定なものではなく、体の状態に応じて変動することで、私たちの生命活動を維持しながら、自然な生活リズムを作っています。 昼間の活動中と夜の就寝中では異なり、怒っているときと穏やかな時でも異なります。測定するたびに違ってくるものなのです。 自分の”本当の血圧”を知るには、同じ時間に同じ環境で測定して、その平均値を見ていくことが大切です。 そのためには毎日測ることになるので、家庭での測定が欠かせません。 「高血圧治療ガイドライン」にも、診察室血圧家庭血圧に差がある場合には、家庭血圧による診断を優先するように記載されています。

●家庭での血圧の測り方

家庭での測定には、上腕式の血圧計を使うようにしましょう。正確な血圧を知るために、正しい方法で測定してください。 朝と夜それぞれ2回ずつ測定し、血圧手帳やノートに記録しておきます。 朝、夜2回ずつ、すべての数値を記載するのが基本ですが、記入するスペースがない場合は、平均値を記入します。 その日の体調や出来事もメモしておくと、どんな時に血圧が上がりやすいかなどを知ることができます。 自分の思うような数値が出ないからと何度も測定する人がいますが、続けて4回以上測定しての値を判断に用いることは、正確ではないので避けましょう。 また、横になりながらの測定、散歩や運動後の測定など、正しい方法ではない測定では、正確な数値が得られないので注意してください。

●高血圧の基準値

診察室で測る数値と家庭で測る数値では異なる

血圧は、医療機関などで診察時に測定した値よりも、家庭で測定した血圧のほうがリラックスしているためか低く出る傾向があります(あくまで、一般的傾向です)。 そのため、高血圧の基準値も2種類あります。

▼医療機関や検診で測る場合
上の血圧が140mmHg以上または下の血圧が90mmHg以上。

▼家庭で測る場合
上の血圧が135mmHg以上または下の血圧が85mmHg以上。