肥満症

肥満症は、脂肪が体内に蓄積しすぎている状態です。 肥満には皮下脂肪型肥満」と「内臓脂肪型肥満がありますが、 特に「内臓脂肪型肥満」は さまざまな生活習慣病の原因になる危険性が指摘されています。 肥満は、 動脈硬化高血圧糖尿病高脂血症動脈硬化狭心症・心筋梗塞脳梗塞胆石症脂肪肝高尿酸血症(痛風)歯周病腎臓病睡眠時無呼吸症候群、 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)月経異常・不妊、膝・股関節・背骨・手指などの関節の疾患など実に多くの生活習慣病に関与しています。 このうち、関節の疾患、睡眠時無呼吸症候群、月経異常・不妊などには皮下脂肪が関係していることがあります。 肥満は、生活習慣病の元凶といっても過言ではありません。


■肥満症

少し太っているだけでも病気を発症しやすい

日本における肥満の割合は、成人男性で31.3%、成人女性で20.6%です。 欧米に比べると日本人の肥満の程度は軽いとされています。しかし、安心してはいけません。 なぜなら、日本を含む東アジアの人々は、軽度に肥満でも病気を発症しやすいからです。 その理由は、内臓脂肪にあると考えられています。 東アジアの人々は食べ物から摂取したエネルギーを皮下脂肪ではなく内臓脂肪として溜めやすいため、内臓脂肪の蓄積によって起こる病気のリスクが高くなるのです。 世界的には体格を示すBMI(下参照)が30以上の場合に肥満とされていますが、 日本人の場合、BMIが25以上30未満の軽度肥満でも、健康への影響が大きい危険な状態だと判断されます。

◆肥満症と病気

太っているとそれが高血圧の原因になったり、痛風の原因となる高尿酸血症になったり、 高血糖症(糖尿病)や血清脂質の異常(脂質異常症)、血液がドロドロなるといったことがあり、 さらにはこのような異常が動脈硬化や心臓病、脳卒中などの原因になってしまうのです。 男性ではウェストが85cm、女性で90cmを超えると(このサイズには異論もありますが)、 内臓脂肪が蓄積して「メタボリックシンドローム」となる可能性が高くなります。 内臓脂肪を増やさないようにするには、体重コントロールでウェストを細くすることが重要です (ただし、痩せ過ぎていることも、身体にさまざまな悪影響があります)。 いったん太ってしまうと、なかなかダイエットに踏み切れない人も多いようですが、 ”体重の5%”を減らすだけでも、生活習慣病予防の効果が期待できます。

◆癌の発症にも関与している

肥満は、の発症にも関連していることがわかってきています。 国立がん研究センターの大規模な調査の結果では、閉経後に起こる乳癌は 肥満との関連が「確実」とされました。大腸癌肝癌では、 肥満との関連が「ほぼ確実」とされています。 子宮体癌と閉経前の女性の乳癌では、「肥満と関連している可能性がある」とされています。

◆病気を引き起こす「内臓脂肪」

体の中で脂肪が付きやすいのは、皮膚の下と内臓の周りの2か所です。 皮膚の下につくものを皮下脂肪といい、下腹部やお尻、太腿に付きやすいため、下半身太りの体型になります。 一方、内臓の周りに付くものを内臓脂肪といい、臍周りがポッコリと出た体型になります。 これらのうち、健康への影響が大きいのは内臓脂肪です。 内臓脂肪が溜まり過ぎると、脂肪細胞に炎症が起こって、脂肪細胞から分泌されるTNF-αやアディポネクチン、アンジオテンシンシノーゲン、 PAT-1といった生理活性物質に異常が起こり、 その結果、さまざまな病気を引き起こすことがあります。

◆病気を引き起こす「異所性脂肪」

内臓脂肪と同様に、健康への影響が大きいのが、異所性脂肪です。 脂肪は本来、皮下脂肪や内臓脂肪といった脂肪組織に溜まりますが、体内の脂肪が増えすぎると、 本来は脂肪が溜まらない場所に蓄積されてしまいます。 これを異所性脂肪といい、下図のような病気を引き起こします。

異所性脂肪


◆肥満による病気を防ぐには

内臓脂肪や異所性脂肪には、「溜まりやすく減りやすい」という特徴があります。 ダイエットをして体重を減らせば、内臓脂肪も異所性脂肪も減っていくので、肥満の予防と改善に取り組みましょう。 特に日本人は、軽度の肥満でも病気を発症しやすいので、早めの対策が必要です。 BMIが25以上であることに加えて、肥満が引き起こす病気のいずれかがある場合、或いは腹部CT検査によって内臓脂肪型肥満と確定診断された場合には、 「肥満症」と診断され、治療の対象となります。 健康保険の適用となり、肥満そのものの治療と肥満に伴う病気の治療を受ける必要があります。 太り気味で肥満が引き起こす病気が1つでもある場合は、内科などを受診して、肥満症かどうかを調べてもらいましょう。