肝臓癌最新治療

ウィルス性肝炎や脂肪肝などの肝臓病が原因となって、肝臓癌は発症します。 他の肝臓病の治療と同様に、日々進歩する肝臓癌の最新治療を紹介します。

■肝臓癌

ウィルス性肝炎や脂肪肝が原因で起こる

肝臓癌には、肝臓の細胞にできる肝細胞がんと胆管の細胞にできる肝内胆管がんがあります。 ここでは、肝臓癌の大部分を占める肝細胞がんを取り上げます。 肝臓癌の原因で最も多いのがB型肝炎やC型肝炎の肝炎ウィルスですが、 最近はウィルス性肝炎の治療が進歩しており、他の原因による肝臓癌の発症が増えています。 なかでも、アルコール性脂肪肝非アルコール性脂肪肝などの脂肪肝が原因で起こる肝臓癌の増加が注目されています。 アルコール性脂肪肝は大量飲酒が原因で起こり、非アルコール性脂肪肝は肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病が原因で起こります。 特に、中高年以降に多い2型糖尿病のある人の約69%が、非アルコール性脂肪肝を合併するとの報告もあります。 2型糖尿病の人が最も多く発症するがんは、肝臓癌です。 B型やC型のウィル性肝炎や脂肪肝が慢性肝炎に進むと、その結果、肝硬変、肝臓癌に進むことがあります。 B型肝炎の場合は、慢性肝炎から肝硬変を経ずに肝臓癌を発症することがあります。

●自覚症状がほとんどない

肝臓癌は、初期では自覚症状がほとんどありません。がんがある程度大きくなると、腹部のしこりや痛み、黄疸、腹水、吐血、下血などが現れますが、 その時点ではがんがかなり進行していることになります。そのため早期発見が大切になりますが、肝臓癌の原因となる病気によってポイントが異なります。 B型肝炎やC型肝炎がある人の場合は、治療を通じて定期的な検査を受けていれば、肝臓癌を早期に見つけることが可能です。 まずは肝炎ウィルス検査を受けて、感染がわかったら必ず治療を受けましょう。 脂肪肝については、まだ深刻な病気だと考えていない人も多いと思いますが、まずは「脂肪肝も肝臓癌の原因になる」ということをしっかり認識してください。 そのうえで、きちんと治療を受けて定期的な検査を継続していけば、がんができても早期に発見することは可能です。


■肝臓癌の治療

がんの大きさや肝機能の状態などによて治療法が異なる

肝臓癌の治療法には、肝切除、ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法、抗がん剤、肝移植などがあります。 治療法を決める際の重要なポイントは、がんの大きさや数、がんのある場所、肝機能がどの程度保たれているかなどです。

●肝切除

開腹して、がんのある部分を切除します。肝臓の機能をできるだけ残すために、門脈と肝静脈に沿って肝臓を8つのブロックに分け、 がんのあるブロックごとに肝臓を取り除きます。ブロックごとに切除するのは、がんの周囲にもがん細胞が散らばっている可能性があるからです。 肝切除は、がんの数が3個以下で、肝機能の状態が軽度〜中等度の患者さんに行われます。がんの大きさはそれほど問題にはなりません。 最近は、患者さんの肝臓のCT(コンピュータ断層撮影)画像から立体画像を作成し、手術の前に、がんの位置と血管の位置関係などを詳しく確認することで、 より安全に肝切除を行うことができるようになってきています。

●ラジオ波焼灼療法

超音波検査でがんの位置を確認しながら、電極計をおなかの上からがんやその周りの組織に刺し、高周波を流して焼き固めることで、がんを死滅させます。 ラジオ波焼灼療法は、がんの数が3個以下で、大きさが3cm以内の患者さんで、肝機能の状態が軽度から中等度までの場合に行われます。 ラジオ波焼灼療法は少ない回数で治療効果が高いため、こうした条件に当てはまらない患者さんでも、適用されるケースがあります。 一方、条件を満たしている場合でも、がんの位置が門脈などの近くにある場合は行うのが難しくなります。 最近では、ラジオ波よりも1回の照射範囲が広く、より短時間で治療を行えるマイクロ波を使った新たな治療法の研究も進められています。


●肝動脈塞栓療法

肝臓に栄養を運ぶのは、冠動脈と門脈の2つの血管です。肝臓のがん細胞は、冠動脈からだけ栄養を受け取っているので、その冠動脈を塞いで、 がんをいわば”兵糧攻め”にする治療です。冠動脈を塞いでも、正常な肝細胞は門脈からも栄養を受け取ることができるので、 栄養不足に陥る心配はありません。 脚の付け根の血管からカテーテルを挿入して、がんに栄養を運んでいる冠動脈まで送り込み、ゼラチンスポンジなどの物質を詰めて冠動脈を塞ぎます。 そこから先には栄養や酸素が運ばれて行かなくなるため、がんが死滅します。大抵の場合は、同時に抗癌剤も使用します。 最近、ビーズを呼ばれる新しい塞栓物質が使用されるようになりました。 従来のゼラチンスポンジに比べて冠動脈に隙間なく詰めることができ、がんに栄養を運んでいる冠動脈を長期に塞ぐことができます。 肝動脈塞栓療法の適用になるのは、肝機能の状態が軽度から中等度までで、がんが2〜3個以下で、大きさが3cmを超えている、または4個以上ある場合です。

●抗がん剤

がんに栄養を送る血管ができるのを防ぐ働きがあり、がんの進行を抑える効果が期待できます。 「肝動脈塞栓療法の効果が乏しい」「がんが大きくて切除が困難」「肝臓以外に転移している」といった場合は、 抗がん剤による治療が行われます。 この治療は、肝機能の状態が軽度から中等度までで、がんの数が4個以上の場合に行われます。 従来の抗癌剤は効果が十分ではなく、また正常な細胞にも影響を及ぼすために副作用が起こりやすい、という課題がありました。 しかし、最近では、がんの特定の分子だけを捉えて作用する分子標的薬というタイプの新しい薬が登場しています。 肝臓癌には、ソラフェニブという飲み薬の分子標的薬が2000年に保険適用となりました。 重い副作用が少ないのが特徴ですが、手足の皮膚に湿疹や腫れ、痛みなどが起こることがあります。 ただし、それらに対抗する薬や方法は確立されています。

●肝移植

機能が低下した肝臓を摘出し、ドナーの健康な肝臓を移植する治療法が、肝移植です。 肝移植には、家族などから提供された肝臓の一部を移植する生体肝移植と、亡くなった方から提供された肝臓を移植する方法があります。 肝移植の対象となるのは、肝機能の状態が重度で、他に治療の手立てがなく、余命1年と考えられる患者さんです。 がんが3個以下なら大きさは3cm以内、1個なら5cm以内の場合で、年齢は65歳以下であることが目安となります。