新しい肝癌の検査

・検査技術の進歩により、小さな肝癌でも発見が可能になっている。
・肝癌発見のために重要なのは、血液検査と画像検査。
・肝臓や癌の状態により詳細にわかる画像検査が登場している。

■肝癌

B型やC型肝炎のほか、脂肪肝なども原因となる

日本における「肝癌」による死亡者数は、年間約3万3千人です。「肺癌」「胃癌」「大腸癌」に次いで、死亡者数が多い癌 とされています。肝癌の最大の原因は、「B型肝炎」と「C型肝炎」で、慢性肝炎や肝硬変から肝癌へと進行します。 こうしたウィルス性肝炎による肝癌が多くを占めていますが、近年は、それ以外の原因による肝癌が増える傾向にあります。 その原因としては、主にアルコールの過剰摂取や肥満などによる「脂肪肝」が挙げられます。 ウィルス性肝炎以外の原因で癌を発症した場合、ふだんから定期的な検査を受けていなかったために、その進行に気付かない ということがあります。

◆より良い治療のためにも検査を受ける

肝癌の治療は進歩しています。肝癌と診断され、治療を受けた患者さんの5年後の生存率は、1978~85年では9.5%、 1986~95年では26.8%、1996~2005年では39.3%でした。治療後の生存率は年々向上しているのです。 治療後の生存率の向上には、治療法の進歩だけでなく、検査技術が進歩したことも関係しています 小さな癌でも発見できるようになったことで、治療がうまくいくケースが増えたのです。 肝癌をできるだけ早く発見するためには、「血液検査」「画像検査」を併せて受けることが大切です。


●血液検査

アルブミンや血小板などの値から肝臓の状態を確認する

血液検査では、主に次の4つの項目が調べられます。

▼アルブミン
肝細胞で作られるタンパク質で、肝機能が低下していると値が低くなります。3.5g/dL未満の場合は注意が必要です。

▼プロトロンビン
プロトロンビンは止血に関わる因子で、肝臓で合成されます。血液が凝固するのにかかる時間から、 この因子が十分に合成されているかどうかを調べます。肝機能が低下していると、凝固するまでの時間が長くなります。 値が80%未満になると注意が必要です。

▼総ビリルビン
ビルビリンは古い赤血球が壊されてできる色素で、肝臓で分解されます 2.0mg/dL以上の場合は、肝機能が低下していると考えられます。

▼血小板
肝臓の線維化が進行するほど値が低くなり、10万個/μL未満になると、肝癌のリスクが高いといえます。

◆腫瘍マーカーの値も確認する

血液検査では、「AFP」と「PIVKA-Ⅱ」という腫瘍マーカーも調べます。腫瘍マーカーは癌が作り出す物質で、 肝癌があると、多くの場合、これらの値が上がります。ただし腫瘍マーカーの異常だけでは診断は確定されません。


●画像検査

基本は超音波検査で肝癌の状態を確認する

画像検査で重要な役割を果たすのは、「超音波(エコー)検査」です。腹部に超音波を当て、患者さんの体に 負担をかけることなく肝臓を画像化します。慢性肝炎と肝硬変を鑑別できるほか、直径1~2cmの小さな癌も見つけられます。 脂肪肝がある人や肝炎ウィルスに感染している人は半年に1回、慢性肝炎や肝硬変がある人は3ヶ月に1回程度の間隔で 受けることが勧められます。最近行われている「マイクロバブル」という造影剤を使った超音波検査では、 直径1cm以下の癌も発見でき、癌に流れ込む血流を見ることも可能です。血流から癌の悪性度もある程度診断できます。

◆CT検査やMRI検査も行われる

肝臓の奥の方にできた癌は、超音波検査では見えにくいので、その場合には「CT(コンピュータ断層撮影)検査」「MRI(磁気共鳴画像)」も行われます。CT検査やMRI検査は、癌の状態、数、大きさ、癌への血流などを 詳しく調べるうえでも重要です。造影剤を使用することで、さらに詳細に癌の状態を確認できます。 特にMRI検査で使われる新しい造影剤は、直径1cm以下の小さな癌の発見に役立ちます。


●画像検査で重要なこと

癌が原発性か転移性かを確認することが治療に役立つ

肝癌には、もともと肝臓に発生した癌である「原発性肝癌」と他の臓器の癌が転移してできた「転移性肝癌」 があります。肝臓は血流が豊富な臓器なので、血流に乗って他の臓器の癌が転移してきやすいのです。 原発性肝癌と転移性肝癌は、癌の数、形、血流などに異なった特徴があり、これらから見分けられます。 原発性と転移性では治療法が異なるため、どちらなのかをはっきりさせておく必要があります。 転移性肝癌の場合は、大腸癌からの転移なら大腸癌の、乳癌からの転移ならば乳癌の性質を持っています。 そのため、元の癌に準じた抗癌剤治療が行われます。