肥満症対策ダイエット
「肥満」は生活習慣病や 「メタボリックシンドローム」になり易い要因の一つです。 「ダイエット」により自己管理しましょう。 特に動脈硬化を進行させる「内臓脂肪型肥満」 はさまざまな病気を引き起こすため、早急にダイエットを始めることが必要になります。
■ダイエットが必要かどうかの目安
肥満かどうかを判定する方法にBMI(⇒参照)があります。 BMIは25以上で肥満と判定されますが、25を超えたからといってすぐに減量が必要だとは言い切れません。 例えば、一般的に、病気の発症が少ないといわれている「標準体重」はBMIが22とされています。 しかし、高齢者の場合、BMIが22まで減量すると、筋肉量が減ってしまうことがあり (フレイル)、その場合は、かえって病気を発症しやすいことがわかってきました。 ダイエットの必要性は、BMIだけで判断せずに、内臓脂肪型肥満かどうか、またメタボリックシンドローム(以下、メタボ)や 肥満に伴う病気があるかどうかから、考えることが必要です。まずは、自分の肥満のタイプを知りましょう。
■ダイエット
ダイエットは、大きく2つの段階に分けられます。
第一段階は内臓脂肪を減らすダイエットです。食生活の改善や運動不足の解消によって、すぐに内臓脂肪が減ってきます。
第二段階は、皮下脂肪を減らすダイエットです。内臓脂肪を減らすときよりも時間がかかりますが、腰や膝にかかる負担を軽減できます。
●内臓脂肪型肥満の場合のダイエット
内臓脂肪型肥満とわかったらすぐにダイエットを始めましょう。ただし、急激なダイエットは健康を害してしまいます。 3~6か月間で現在の体重の3%を減らすことを目標に、 緩やかなダイエットを心がけてください。 わずか3%のダイエットでも、血圧、血糖値、脂質などが改善できることがわかっています。 体重が減れば、その分、内臓脂肪から先に減少すると考えられます。
●皮下脂肪型肥満の場合のダイエット
皮下脂肪は、内臓脂肪に比べると落ちにくいので、6ヵ月~1年かけて体重の3~5%を減らすことを目標にしてください。 ウォーキングや 自転車こぎなど、 エネルギーを消費しつつ、筋肉量を増やすことができる運動がお勧めです。 筋肉が付くと、ダイエットのリバウンドも起こりにくくなります。 皮下脂肪型肥満は、内臓脂肪型肥満のように 高血圧や 糖尿病、 脂質異常症などを引き起こすリスクは低く、今すぐにダイエットが必要なわけではありません。 しかし、放置していると、体重が膝や股関節、背骨などの負担となって、関節の疾患を招く場合があります。 また、眠っている間に一時的に呼吸が止まる 睡眠時無呼吸症候群も、 脂肪が軌道を圧迫して狭くなることが原因の一つとして考えられています。 女性の場合、肥満があると月経異常や不妊に繋がりやすいことがわかっています。 また、閉経後の女性では、乳癌の発症との関連もわかっています。 「皮下脂肪型肥満だから大丈夫」などと考えず、時間をかけて体重を減らすようにしましょう。
●リバウンドによる脂肪の蓄積
「肥満」は生活習慣病の要因であり、健康を守るために減量を目指すのはよいことですが、ダイエットには大きな落とし穴があります。 減量に成功しても、痩せた状態を保つのは減量すること以上に難しいものなのです。 つい気が緩んで食べ過ぎてしまうと、以前より体重が増えてしまいます。 これが「リバウンド」です。
ダイエットで体重が減少すると脂肪とともに筋肉も落ちます。
逆に体重が増加するときには筋肉は増えず、脂肪だけが増加します。
元に戻っても体脂肪率は前より増加しています。
脂肪組織はエネルギー消費量が少なく、痩せる前と同じ量の食事でもエネルギーが過剰となり、さらに体重を増やすことになるのです。
最小限の脂肪蓄積は生存のために不可欠で、体重が減ると蓄積の効率を高めるように防御機能が働きます。
ダイエットを中断して体重が戻っても蓄積の効率は高いままで、減量前に比べ脂肪が付きやすくなっています。
また、脂肪細胞は内部に溜められる脂肪量に限界があって、脂肪の蓄積が進めば脂肪細胞は分裂して、その数を増やします。
一度増えてしまった細胞の数はなかなか減りません。脂肪がより溜まりやすい体質になってしまいます。
脂肪蓄積を促すもう一つの変化として、「食物嗜好の変化」があります。
無理なダイエットなどで急激に体重が減ると、甘いものやエネルギー効率のよい脂肪を好むようになります。
嗜好の変化は体重増加後も続きます。
●ダイエットと生活習慣病
ダイエット時には全身から脂肪が減りますが、体重が戻るときには内臓脂肪が付きやすいので、 ウェストが大きくなって内臓脂肪の多いメタボリックシンドロームになり、 糖代謝や脂質代謝を妨げて糖尿病、高脂血症、高血圧のリスクになる可能性があります。 さらに、急激な体重変動自体が全身の代謝機能や内蔵機能に大きな負担を与えます。 無理なダイエットを実施すると、 カルシウム、 鉄、 各種ビタミンなどが不足することもあります。 ダイエットはつらいですが、それ以上にスリムになった状態を長く維持することは難しいものです。 健康を目指してのダイエットが、かえって体を不健康な体質に変えてしまうことすらあります。 リバウンドに注意して無理のないダイエットをすることが大切です。
■40歳以上の人は「特定健診」を必ず受けよう
日本では、生活習慣病のリスクが高い内臓脂肪型肥満の早期発見と改善を目指すシステムが整っています。 40~74歳までの人を対象にした、年に一度の特定健診(通称・メタボ健診)です。 対象となる人には、自治体や職場からその知らせが届き、指定された医療機関で、多くは無料で受けることができます。 特定健診の結果、内臓脂肪型肥満と診断され、さらに高めの血圧や高血糖、脂質異常症のうち1つ以上がある場合には、 特定保健指導を受けることができます。医師や保健師、管理栄養士から適切な減量方法や生活改善のサポートを受けられる制度です。 ぜひ利用してください。