ウォーキング
『ウォーキング』は、特別な技術も必要なく、いつでもどこでもできる、手軽な運動で、 生活習慣病の予防・対策に推奨されている有酸素運動です。 適度な有酸素運動は、肥満・高血圧症・高脂血症・高血糖症(糖尿病)などといった生活習慣病の改善します。
■ウォーキングの効果
多くの医療関係者が生活習慣病対策として薦めている『ウォーキング』。 質のよい適度な運動であるウォーキングは、 肥満・ 高血圧・ 脂質異常症・ 糖尿病などといった症状を改善し、 それによって動脈硬化を防ぐことができる、と考えられています。
- ▼高血圧
- 歩き始めると、10分ほどで体が温まり、溜まった脂肪がエネルギーとして燃え始めます。 同時に血管そのものも温まることで太くなり、血液の流れがよくなります。 運動することで血管が太くなると、だんだんと血管に柔軟性が戻ってきます。 その結果、上昇していた血圧が下がり、安定するのです。 かつて、厚生省は、1日に歩く歩数と血圧値について調べています。 その結果、歩数と血圧の高さは、反比例の関係にあることがわかりました。 つまり、1日に歩く歩数が多い人ほど血圧は低く、歩数の少ない人ほど血圧が高いという結果が出たのです。
- ▼糖尿病
- ウォーキングで血中のブドウ糖(血糖)が消費され、一時的に血糖値が下がります。 継続すると、筋肉などにブドウ糖を取り込みやすくなり、高血糖が改善されます。
- ▼脂質異常症
- ウォーキングを継続することで、血液中の中性脂肪が減り、HDL(善玉)コレステロールが増えます。 血中脂質については、滋賀県立大学の研究グループが214人に歩いてもらって調べています。 その結果、歩いた後は、総コレステロール値は平均9mg、中性脂肪値は平均6.4mgも減っていました。
ウォーキングの効果は、それだけではありません。心臓や肺の機能も強くし、老化を予防します。 さらに、歩くと太ももの前側にある大腿四頭筋が刺激されます。 その刺激は脳に伝わり、脳の働きが活発になります。 また、血流がよくなることで、脳に酸素と栄養も十分に行き渡るようになります。 その結果、物事に対して積極性が出てきて、それが心身の健康を保ち、生きがいを持つことにもつながります。 これが、ひいては健康長寿をもたらしてくれるのです。
厚生労働省が行った「国民栄養調査」によれば、1日に1万歩以上歩く人は、動脈硬化を防ぐ善玉コレステロールの数値が平均より7%も高いことがわかっています。 反対に、1日の歩数が2000歩未満の人は、平均より5%も低かったと報告されています。 別の調査では、1日当たりの歩く歩数が少ない人ほど、血圧・血糖値・コレステロール値・中性脂肪値・皮下脂肪値・ 体重の全ての数値が高くなっていることもわかっています。 以上のようなことから考えても、ウォーキングは、血管・血液を若返らせ、血管・血液の病気を防ぐ特効法であることがわかるでしょう。
●ウォーキングで、滞りがちな下半身の血流が促される
では、歩くことはなぜ血管・血液の若返りと直結するのでしょうか。
私たちが歩き始めるとすぐに、体内で血流が促されて体が温まってきます。
それに伴って、体内では余分な糖や脂肪が燃やされます。
つまり、歩くことを習慣にすれば、血流と代謝が自然によくなるわけです。
しかも歩くことは、下半身の筋肉をよく使います。脚は、全身の2/3の筋肉が集中している筋肉の密集帯。
筋肉には、収縮したり弛緩したりする働きがあり、まるでポンプのように血液を送り出す力があります。
しかし、脚は心臓から最も遠く離れた位置にあり、重力の影響もあって血液が溜まりがち。
そこで、歩いて脚の筋肉、特にふくらはぎの筋肉を使えば、脚のポンプ力がグンと強まり、血液の循環が促されるのです。
そうすれば、血管内の血液はどんどん心臓に戻され、さらに肺に送られるのです。
その結果、血管・血液は若返り、血圧が安定し、血糖値の上昇も抑えられ、余分な脂肪が溜まることも防げるでしょう。
●ウォーキングで癌まで予防できる
さらに、ウォーキングは何と癌まで防げることがわかってきました。 文部省がかつて行った調査では、1日当たりの歩く時間が30分以下の人は、30分以上ある人に比べて、癌死亡率が2倍も高いと報告されています。 日本人に最近増えている大腸癌については、 運動不足の人は、普通に運動している人に比べて2倍以上も死亡率が高いそうです。 同じく、日本人に増えている乳癌と運動の関係についても、 米国・ハーバード大学の研究グループが調査しています。 具体的な調査内容の説明は省きますが、適度な運動をすると乳癌が発病しにくく、例え乳癌になっても死亡率が低く抑えられることが証明されています。
●ウォーキングのその他の効果
歩きながら考え事をすると、じっとしている時よりよいアイデアが浮かんでくることが多いものです。 歩くと足の裏の神経を通して、脳も刺激されるのです。 また、歩いて汗をかくと、ストレスの発散にもなり、熟睡にも繋がるなど、ウォーキングは、心にも体にも、よい効果がいっぱいです。
■ウォーキングの仕方
体調を整え、徐々に距離を延ばす
では、毎日どのくらい歩けば生活習慣病の予防や改善に効果を期待できるのでしょうか。 それまであまり歩いていなかった人が、急に無理をして歩くと、腰痛や膝痛を起こし、かえって体調を損ねることにもなりかねません。 まず、自分の体調を整え、2000~3000歩から始め、体が慣れてきたら徐々に距離を延ばすようにするといいでしょう。 また、血圧の高い人がいきなり長い距離を歩くと危険な場合もあります。 そういう人は、かかりつけの医師と相談してから始めるようにしてください。 大切なことは、毎日歩くということです。ウォーキングを毎日の生活の一部に取り入れて、実行していってください。
●ウォーキングの前準備
ウォーキングを始める前に、次のようなものを準備しておくとよいでしょう。
- ▼ウォーキング時の持ち物
- 長距離のウォーキング時には、地図、帽子、手袋、タオル、水筒やペットボトル、おやつ、雨具などを持っていきましょう。 手袋は、山道でロープや木の枝などに掴まるときに役立ち、防寒や日焼け防止にもなります。 雨具は、折り畳み傘のほか、小さくたためるポンチョが便利です。 荷物はできるだけ軽くして、リュックサック、ウェストポーチなど、両手の空けられるるものにします。
- ▼5本指ソックス
- ウォーキング時に5本指ソックスを履くと、足で地面を蹴るときに指が十分広がり、しっかりと地面を捉えて歩き方に安定感が出ます。 靴の中で靴下がたるみにくく、湿気もこもりにくいため、マメ防止にもなります。 休憩時には靴を脱いで汗を乾かし、中敷もはずして湿気を逃がせば、いっそう効果的です。 また、靴下を2枚重ねて履くときには、しわが寄ってマメができないように注意しましょう。
- ▼『ウォーキングシューズ』
- 膝や足などに負担のかからない運動用の靴で、窮屈でないものを選ぶことが大切なので、 ウォーキング用の靴(ウォーキングシューズ)がおススメです。 ウォーキングの際に、ランニングシューズなど目的の異なる靴を履いて歩き続けると身体に大きな負担がかかり、かえって膝や腰を傷めてしまうことがあります。 ウォーキングを行うときは、「ウォーキング専用シューズ」を履きましょう。 一般的にウォーキング用の靴は、紐を持って吊るしてみると前に約5度傾くように作られており、平らな道でも緩い下りのように楽に歩けます。 また、必ずしも軽いウォーキングシューズがよいわけではなく、ある程度の重さがあった方が、振り子のように脚を動かしやすくなります。
- ウォーキングシューズの爪先には指を動かせる程度の余裕を持たせることが大切です。 紐を緩めて足を入れたら、1回結び、紐を左右に振り分けて持ちます。 爪先を上げ、かかとで軽く地面を叩くようにして靴のかかと部分をぴったりとフィットさせます。 次にゆっくりと体重を爪先へ移し、かかとを上げ、爪先で地面を蹴る体勢をとり、紐をしっかり結んで固定します。
- ▼『歩数計』
- なかなか継続できないウォーキングも、燃えた脂肪がグラムでわかれば、やる気も出てきますし、音楽を聴きながらなら、楽しく歩けます。 歩数計には、手首に巻くタイプや帽子につけるタイプなど、いろいろな種類がありますが、誤差が少ないのは腰に付けるタイプです。
●ウォーキングの仕方
実際のウォーキングでは、次のようなことを心がけるとよいでしょう。
◆ウォーキング前の準備運動
ウォーキング前の準備運動としては、反動をつけないストレッチングが向いています。 静かにゆったりと行いましょう。その際、呼吸を止めずに行うことがコツです。 筋肉を伸ばすときには、息をゆっくりと吐きながら伸ばしていきます。 さらに、伸びている部分を意識しながら行うとよいでしょう。 また、「これから動かすよ」と身体へ合図するように軽く足踏みすると、血行がよくなってきます。
◆効果的な歩き方
ウォーキングでの歩き方は、速度によって「普通歩」「急歩」「早歩」の3種類に分けられ、有酸素運動にちょうどいいのは「急歩」で、時速5km前後です。 普通に歩いているときは、一般に時速4km程度ですので、急歩は「いつもよりちょっと早め」の速度です。 高血圧の予防や改善のために、楽しんで有酸素運動を行いましょう。
◆休憩時間を有効活用
1日中ウォーキングするなら、昼休みは45分くらいとりましょう。ただし休憩中も時間を有効活用します。 休憩場所に着いたらまず軽い整理運動として、ストレッチングやマッサージなどをしてリフレッシュ。 休憩中もこまめにストレッチングを。再び歩き始める前には準備運動をします。 歩いているときも、赤信号で止まっている間にストレッチングや膝の屈伸をすると、疲労回復に効果的です。
◆水分補給が大切
夏の暑い日に1日中ウォーキングを行う場合は、最低でも1人約1リットルの水分摂取が必要です。 まずは、ウォーキング前に必ず水分を摂っておきましょう。 歩き始めたら、30分に1回くらいの間隔で、200cc(コップ1杯程度)の量を飲むとよいでしょう。 脱水症の防止のためには、喉が渇く前に水分補給をすることが大切です。 スポーツドリンクなど、運動のために成分調整されたものが適しています。 また、アミノ酸で基礎代謝を促進する スポーツサプリメント や 健康ドリンクの補給も効果的といえるでしょう。
◆ウォーキング後の整理運動
ウォーキング後には、整理運動(クールダウン)を必ず行います。 脚を重点的に行いましょう。軽いストレッチに加えて、丁寧なマッサージも必要です。 座って、心臓から遠い足先から順に、軽く揉んでいきます。 血流をよくして、疲労物質の溜まった血液を心臓に戻し、新しい血液を全身に送り出すイメージです。 ウォーキング後の整理運動を習慣づけて、その日の疲れはその日のうちに解消するようにしましょう。
◆ウォーキングのポイント
- ▼視線は少し遠くに
- 顎を引いて、少し遠くを見るようにする。
- ▼背筋を伸ばす
- 肩の力を抜き背筋を伸ばして歩く。
- ▼腕を大きく振る
- 腕を大きく振って、上半身の筋肉も動かすようにする。
- ▼下腹部を引き締める
- 少しきつめのベルトをした気分で下腹部を引き締めて歩く。
- ▼歩幅を大きめにとる
- できる人は歩幅を大きくとって歩くと、よりダイナミックに筋肉を使うことができる。
- ▼平らな場所で行う
- 坂道や階段では膝などに負担がかかるため、まずは平らな場所を歩くようにする。
- ▼かかとから着地する
- 段差につまづいて転倒しないためにも、かかとから着地するよう心がける。
ただし、あまり型にこだわりすぎるのもよくありません。まずは”始めてみる”ことが何よりも大切です。 最初はゆっくりでも構いません。運動を続けていくうちに、同じ運動量でも、だんだん楽にできるようになります。 慣れてきたら、少しずつ早く歩くようにしたり、歩幅を大きくしたりしてみましょう。
●雨の日でもウォーキング
ウォーキングは誰にでもすぐに始められ、なおかつ高い運動効果を期待できますが、 気候や天候に左右されやすく、毎日続けるのは難しいものです。 そこでおススメなの「ウォーカー」や「ステッパー」。 省スペースで歩行運動ができる室内健康器具です。
●その他
ウォーキングで体力向上や高血圧対策を目指すなら、「一日1万歩」を目標にしましょう。 体重にもよりますが、ウォーキングは、30歩でおよそ1kcalを消費するといわれており、1万歩歩けば300kcal以上消費できる計算になります。 ウォーキングは、特別な技術も必要なく、いつでもどこでもできる、手軽なスポーツです。 歩きたいときに、気軽に始めましょう。
- ▼体調が悪いときは運動を控える
- 体調の悪いときには、休むことも必要です。肥満のある人が急にウォーキングを始めると、膝や腰を痛めることがあります。 「水中運動」などで少し体重を落としたり、筋力をつけたりしてからウォーキングを始めるとよいでしょう。 膝などの病気や生活習慣病のある人は、担当医に相談してください。 心臓病や高血圧を治療している人は、運動の強度に注意し、心拍数が上がり過ぎないようにしましょう。
- ▼ウォーキングに費やす時間がない人は?
- 健康維持のためには「1日1万歩」が必要とよく言われます。 成人の1日の平均余剰カロリーは300kcalなので、これを消費するのに1日約1万歩が必要ということです。 これは理にかなったことです。しかし、1万歩を普通に歩くと90~100分もかかってしまいます。 忙しい現代人が簡単に費やせる時間ではありません。そこで、お勧めなのが、歩幅を3割ほど広げて大股で歩くこと。 そうすると、時間にして30分で、歩く歩数でいうと5000歩で1日の余剰カロリーが消費されることになります。 個人差はありますが、成人の1日の平均的な歩数は5000歩前後といわれています。 普段歩くときに歩幅を3割ほど広げて歩くことを心がければ、わざわざウォーキングの時間を設けなくても、いい運動になります。
■関連項目
- ▼『ウォーキング「心拍数に気を付けて」』
- ▼『足に痛みがある人に「ゆっくりウォーキング」』
- ▼『メタボ対策に効果的なウォーキング「腰回し歩き」』
- ▼『ウォーキング豆知識』
- ▼『高血圧対策の運動「ウォーキング」』
- ▼『運動で血圧を下げる』
■スポーツ用品専門店
- ▼スポーツ用品の通販【スーパースポーツゼビオ】
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