高血圧対策に「運動で血圧を下げる」

適度な運動をすると、抹消血管が広がって血流がよくなるため、 全身の血液循環が改善され、血圧が低下します。 さらに「心肺機能を高める」「筋力を維持する」「肥満の解消」などの効果もあります。 血圧を下げるには、1日40~50分間の運動を、1週間に4~5回、合計200分程度行うとよいでしょう。 運動は小分けに行っても血圧を下げる効果があるので、午前中と夕方に20分づつ分けて歩いてもかまいません。 軽く息が弾むくらいの運動量を目安にします。歩きながら会話ができる程度がちょうどいい強度です。 運動の種類は、ウォーキング、水中ウォーキングなどの有酸素運動が適しています。 筋力トレーニングのような無酸素運動は、血圧を大きく上昇させるので不向きです。


■運動と血圧の関係

末梢血管抵抗が減少し血圧が下がる

高血圧のある人で、ふだんあまり運動をしない人が、運動をするようになると、血圧が下がるということがわかっています。 これは、運動したグループとそうでないグループの血圧を比較した研究でも、はっきりと示されています。 運動をすると、血液を全身に送り出すために、心拍出量が増え、血圧は一時的に上がります。 しかし、運動することによって手足の筋肉の血流がよくなるため、末梢血管抵抗が徐々に減少して、血圧は下がってきます。 そのため、全身を動かす運動を習慣にすれば、ふだんの血圧も下がってきます。 血圧を下げるためには、適度な強度の運動を長く続けていくことが大切です。


●運動の効果

動脈硬化や肥満などの合併症の予防になる

運動は、末梢血管抵抗を減少させて血圧を下げるだけでなく、健康を維持・増進する上で様々な効果があります。

▼動脈硬化を防ぐ
運動をすると、中性脂肪がエネルギーとして利用されます。すると、"善玉"と呼ばれる「HDL」が増えてきます。 HDLは、全身の余分なコレステロールを回収し、動脈硬化を防ぐ役割を持っています。

▼肥満を解消する
脂肪がエネルギーとして消費されるので、体脂肪を減らすことができます。 内臓の周りに蓄積された脂肪は、皮下脂肪よりも運動時に消費されやすいため、特に内臓肥満の解消に効果があります。

▼糖尿病を予防する
適度な運動は「インスリン」の効きをよくする効果があります。 インスリンの作用で、血液中の糖がエネルギーとして効率よくつかわれれば、 血液中に余分な"糖"が"だぶつく"こともなくなります。

▼その他のさまざまな効果
筋力は、使わないでいると衰えてしまいます。運動を続けることで筋力を維持したり高めることができれば、 腰痛やひざの痛みの予防や解消にもつながります。 また、骨も運動することによって強くなるので、骨粗鬆症の予防にもなります。
そのほか「心肺機能が高まる」「反射神経の働きを維持して転びにくくなる」など、 運動には数多くの効果が期待できます。
加齢を避けることはできませんが"生きている限りは元気でいる"ために、 ウォーキングを中心とした軽い運動を続けることはとても大切です。

■運動を始める前に

医師に相談の上、自分に合った運動を行う

一口に「高血圧」といっても、体の状態は人それぞれ違います。 運動を始める前には、医師に相談して、運動の種類や強度などの指導を受けておきましょう。 そのうえで、ウォーキングなどの運動を始めますが、一人で運動することが不安な人は、スポーツジムなどの施設で、 指導を受けながら行うのも1つの方法です。 スポーツジムを選ぶときは、その人の病状や体力に合わせて、指導してくれるインストラクターがいるかどうかが大切です。 また、運動は長く続けなくては意味がありませんから、通うのに無理がないかどうかも、施設を選ぶ上では重要です。


●準備/整理運動、ストレッチング

運動の前後は、筋肉を伸ばすことが大切

運動を始める前には、必ず準備運動を行いましょう。 一般的な準備運動として、筋肉や腱を伸ばす「ストレッチング」を行うことが大切です。 ウォーキングなどの運動は、全身を使うので、ストレッチングは、特定の部位だけを伸ばすのではなく、全身を伸ばすように行いましょう。

◆息を止めないよう注意する

ストレッチングを行うときに注意したいのは、息を止めないことです。 息を止めてしまうと、体内の酸素が不足します。 すると、交感神経が刺激されて血管が収縮し、血圧が上がってしまうのです。
伸ばす動作をするときは、意識的に息を吐くことを心がけましょう。 声に出して数を数えながら行うと、無意識のうちに息を止めてしまうのを防ぐことができます。 誰かと一緒に行うときは、会話しながらストレッチングするとよいでしょう。 ストレッチングは、どこが伸びているかを意識しながら行うと効果が高まります。 また、運動前後には、整理運動とともに、必ずストレッチングも行いましょう。 運動で緊張した筋肉と腱を伸ばしてほぐしておくと、疲れが翌日に残りにくくなります。


◆運動の前後に行う軽い体操とストレッチング(厚生労働省 エクササイズ2006)

運動の前後には、軽い体操とストレッチングを。 ウォーキングの初めに、歩きながら腕や肩を回して、筋肉と腱をほぐしてもよい。 体をゆっくり大きく動かして、筋肉や関節をほぐす。膝や腰に痛みがある場合には、無理なくできるものを選んで行う。 反動をつけすぎないようにする。

◇軽い体操
1.膝の屈伸
手を両膝に添えて、膝を屈伸する。膝が痛む人は痛みのない範囲で行い、できない人は無理に行わなくてもよい。

2.足を延ばす
足を肩幅よりやや大きく開く。右膝を軽く曲げながらゆっくり腰を落とし、左脚の後ろ側を伸ばす。 反対側も同様に行う。

3.上体の屈伸
足を肩幅程度に開いて腰に手を当て、ゆっくり前屈と後屈をする。 腰を曲げられるところまででよい。決して無理はしない。下腹部を引き締めて行うと、腰への負担が少ない。

4.体側を伸ばす
足は肩幅よりやや大きく開く。右腕を上げて、上体を左にゆっくり倒しながら右の体側を伸ばす。 反対側も同様に行う。

5.上体を回す
腕を伸ばして、上体をゆっくり回す。腰が痛む人やできない人は無理をしない。

6.背伸びの運動
足を肩幅程度に開き、両腕を上げて背伸びをする。

7.手首・足首を回す
手を組んで両手首を回す。足首は片方ずつ回す。

8.軽く飛ぶ
体の力を抜いて、その場で軽くジャンプする。できない人は行わなくてよい。

9.深呼吸
腕を後ろに大きく回して、深呼吸する。

■運動で血圧を下げる「おススメの運動」

高血圧対策に「おススメの運動」としては、 「ふくらはぎ強化」「ウォーキング」「水中ウォーキング」 「ボート漕ぎ(ローイングエクササイズ)」「自転車漕ぎ」「乗馬運動」などがあります。

ふくらはぎ強化
血圧を上げる体質の第一はよく歩かない人に多い「血流不足体質」で、 血流を改善するには、ふくらはぎを強化することが有効です。 ふくらはぎは、「第二の心臓」と呼ばれるほど、全身の血流を左右する急所として知られ、 ふくらはぎの筋肉によるポンプ作用(ふくらはぎの筋肉が収縮と弛緩を繰り返すこと)によって、 周囲の血管が刺激されて血流が促進され、下半身の血液が上半身に押し上げられるのです。

▼ウォーキング
運動の中でも、最も手軽にできる運動の一つが「ウォーキング」です。 ウォーキングは、特別な技術も必要なく、いつでもどこでもでき、 歩く距離や速さを自分で調節できるので、高齢者の方にもお勧め出来る運動です。 1日に歩く歩数と血圧は反比例し、よく歩く人ほど血圧は低くなることがわかっています。
【関連製品】:『ウォーキング』

▼水中ウォーキング
膝が痛む場合には、関節にかかる負担が少ない水中ウォーキングがおすすめです。

▼ボート漕ぎ(ローイングエクササイズ)
「ローイングマシン(ボート漕ぎ運動機器)」は、 有酸素運動と筋力トレーニングが同時に行える運動機器です。 全身を使うローイング(ボート漕ぎ)運動は、円滑な呼吸によって取り込まれた酸素が、 体内の炭水化物や脂肪を「体を動かすエネルギー」に変えるため、脂肪がどんどんエネルギーに変わり、 メタボリックシンドローム対策のエクササイズやダイエットに効果的です。 一方、ローイングマシンの負荷を重くすることで、筋肉量を増加させる筋トレ運動の効果が得られ、 筋肉量を増やして基礎代謝を高め、肉体の消費カロリーをアップさせます。 さらに、ローイングマシンによるエクササイズを継続することで心肺機能も高められます。
【関連項目】:『ローイングマシン』

▼自転車漕ぎ
十分な運動効果を得るには、ウォーキングの場合は大またで腕を大きく振り、 ふつうに歩くときより2~4割増しの速さで 歩く必要があります。 しかし、肥満の人や、膝痛・腰痛のある人がそうした運動強度を保ちながら歩くのは難しいことです。 そうした人に、おススメなのが「自転車漕ぎ運動」。自転車なら、膝や腰への衝撃が少ないため、 足腰の衰えた人でも、継続して安全に運動できることがわかってきました。
【関連項目】:『サイクリング(サイクル運動機器)』

▼乗馬運動
座ってバランスをとるだけの「乗馬運動機器」は、 ひざへの負担が少なく無理のない運動を効率よく行うことが可能であるため「乗馬医療」として 世界中で注目されています。乗馬運動機器は、自分で体を動かすのではなく、無意識に体が動くため、 体力や年齢に関係なく、 誰にでもできる運動機器です。
【関連項目】:『乗馬運動機器』