体重管理で血圧を下げる

高血圧』の治療の目的は、血圧を適正範囲内に保ち、「心筋梗塞」や「脳卒中」などの命にかかわる合併症を防ぐことにあります。 治療の基本は生活習慣の改善で、体重管理で血圧をコントロールするには食生活や運動などが重要になります。 体重が増えてくると、それに伴って血圧も上がりやすくなり、肥満があると高血圧が起こる確率が2倍に増えます。 高血圧の人の過半数に肥満がみられるので、血圧をコントロールするためには、肥満がある人は減量して肥満を解消し、 肥満がない人は適正体重を維持することが有効です。 高血圧対策として減量の効果は大きいので、まずは3kgの減量を目標にして、減った体重を維持するよう心がけましょう。


■生活習慣改善のポイント

血圧を上げる要因の多くは、日常生活の中にあります。 そうした要因を改善するだけでも、血圧を下げる効果が期待できます。

▼食事
食塩の摂取や、コレステロールや飽和脂肪酸を多く含む食品の摂取を抑え、 野菜や果物を積極的に摂るようにします。

▼適正体重の維持
太っている人は減量し、そうでない人も体重が増えすぎないように気を付けます。

▼運動
適度な量の有酸素運動を習慣づけます。

▼節酒・禁煙
血圧はもちろん、健康全般に影響を与える過度のアルコールに注意し、禁煙します。

こうした生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない時や、腎臓などの臓器に障害が現れている場合は、 降圧薬が用いられます(薬物療法)。 しかし、薬物療法を始めてからも、治療の基本は生活習慣の改善にあります。 薬は血圧を下げる効果に優れていますが、肥満などの、血圧を上げる要因を解消するものではないからです。 生活習慣の改善は、自分でできる高血圧の治療法です。しっかりと身につけて、血圧をコントロールしていきましょう。


■血圧と体重

適正体重の維持が血圧コントロールにつながる

肥満のある人は、体重を減らすだけでも、血圧が下がります。

●減量の効果

体重と血圧の関係を調べたある研究では、体重が1kg減ると、血圧は約1.7mmHg下がることがわかっています。 つまり、3kg減量するだけでも、血圧が5mmHg下がることになるので、減量の効果は大変大きいと言えます。 減量することは、高血圧だけでなく、「糖尿病」や「高脂血症」などの生活習慣病の改善や予防になります。 したがって、動脈硬化の進行を防ぎ、 心筋梗塞や脳卒中などの命にかかわる合併症を予防することにもつながります。
また、体重が重いと、腰や膝などにも大きな負担がかかります。 腰や膝の痛みなどを予防する意味でも、減量は大きな効果があります。 肥満のある人は、減量を心がけることが、高血圧の治療の第一歩なのです。

●肥満の目安

肥満とは、体に余分な脂肪がたまっている状態です。肥満かどうかを判定する方法としては、次のようなものがあります。

▼BMI(ボディ・マス・インデックス)
日本語では「体格指数」で、
BMI = 体重 ÷ 身長 ÷ 身長
BMI = 体重 ÷ (身長 × 身長)
という計算式で算出することができます。 BMIが18.5以上で25未満であれば標準体重ですが、25以上は肥満と判定されます。
BMIを計算します。身長と体重を入力してください。
身長・体重を入力して「判定」ボタンを押すと結果が表示されます。
身長:cm
体重:kg
BMI :
判定:


▼腹囲
「メタボリックシンドローム」の診断基準では、 腹囲が、男性では85cm以上、 女性では90cm以上あると、「内臓脂肪型肥満」とされています。

これらの基準を目安として、例えば、自分の20歳くらいの頃の体重や体型と比べてみるのもよいでしょう。 体重が増えて若いころのズボンやスカートがはけなくなっていたら、要注意といえます。

●減量の際の注意点

体重を減らすには、食事の量を抑えるだけではなく、適度な運動が必要です。 食事だけで減量しようとすると、少ない食事の量で活動できるように体が適応し、 基礎代謝量(生命維持に最低限必要なエネルギーの量)が減ります。 基礎代謝量が減ると、消費するエネルギー量も減るので、少しでも食事の量が増えると、 そのエネルギーが余剰分として体にたまり、体重が増えてしまいます。 こうした、いわゆる”リバウンド”を起こさないためには、食事と運動を上手に組み合わせて減量することが大切です。


■体重を減らすには

食事と運動でまずは3kgの減量を目指す

●食事のポイント

エネルギー制限を厳格に行うのは、なかなか難しいので、まずは糖質と脂質の摂取を少なくして、 1日200~300Kcal程度の量を減らすことを考えましょう。 糖質といっても、お米など、主食の炭水化物をやめる必要はありません。 砂糖や砂糖が入った、甘いものを控えることから始めましょう。 また、揚げ物を控えるだけでも、脂質の摂取を抑えることができます。 ただし、大豆や肉などのたんぱく質に含まれる「必須アミノ酸」は食事からしか摂れません、 これらは過度に制限せず、ある程度の量は摂るように心がけてください。

食事の量が少なくなるとつらいという人は、油分の入っていないドレッシングをかけた葉物野菜のサラダを、 食事の前に10分間かけて、よく噛んで食べることをお勧めします。 砂糖の入っていないガムを10間噛むのもよいでしょう。 こうすれば満腹感が出て、食欲が抑えられ、200~300kcal程度のエネルギーを抑えることにもなります。

早食いは太る原因となります。食事はよく噛んで、ゆっくりと食べる習慣をつけることが大切です。

肥満を防ぐ食事のコツ


●運動のポイント

日常生活では体をよく動かして、消費エネルギーを増やしましょう。運動には、血圧を下げる効果もあります。 軽く息がはずみ、少し汗ばむ程度の有酸素運動を、長く続けていくことが大切です。

●目標を作る

肥満のある人は、適正体重に近づけることが大切ですが、現実にはなかなかうまくいかないことが多いものです。 まずは3kg体重を減らすことを考えましょう。3kg程度減量できたら、さらに次の目標を決める、というように、 段階的に減量して適正体重に近づけていきます。急激な減量は、健康を害することもあります。 1ヶ月に1kg程度のペースで進めていくとよいでしょう。 どうしても体重が減らない場合は、あまり焦らず、まずは今よりも体重を増やさないように注意してください。

●体重の記録をつける

減量を成功させるのに役立つのが、体重を記録することです。 朝食の前など、一定の時間帯に、一定の条件で毎日体重を量り、それをグラフにします。 グラフという目に見える形になると、減量を続けていく励みにもなります。 体重と一緒に血圧も記録しておくと、体重と血圧の関係が実感でき、これも減量を続ける原動力になります。