ビタミン類

ビタミン』は、それ自体は生体の主要成分やエネルギー源とはなりませんが、 代謝活動などを活性化するためには不可欠な有機化合物です。 しかし、ビタミンは体内で生成することができない成分で、野菜や果物、魚等から食事で摂取する必要があります。 しかも、食生活の欧米化や不規則な生活のリズムなどにより、現代人がビタミンを含有する食品を効率よく摂取することが 難しい状況になっています。 加えて、意識して摂取していると思っていてもビタミンは熱に弱いため、調理の影響を受けやすく、 更に昨今では季節に関係なく一年中どんな野菜でも手に入るように、栽培法や流通が変化していることが、 野菜のビタミン含有量に影響を与えているといわれています。 そのためビタミンは、正しい知識がないと効率よく補うことができない栄養素となっています。 そこで、不足したビタミンをサプリメントによって補うことが有効な方法と言えるでしょう。


■ビタミンの定義

『ビタミン』と呼ばれる物質は13種類存在します。最初のビタミンが発見されたのは、1911年ですが、 ビタミン欠乏症として知られる病気は紀元前から存在していたものもあり、長い間原因のわからない病気として 人類を苦しめてきたのです。特に、脚気・くる病・壊血病・ペラグラ・悪性貧血は五大欠乏症と呼ばれ、 世界中で多くの患者や死者が発生したのです。 このようにビタミンは、これらの欠乏症を治す作用のある物質として発見されたので、ビタミンの定義の一つの条件として 欠乏するとヒトに欠乏症を起こす物質であることがあげられます。 そして1900年代に次々とビタミンが発見されましたが、それらの物質は以下の4つの条件を満たすものとして 認識されるようになりました。

①必須の栄養素である
生命を維持するために、毎日食事などから一定量を摂らなければならない物質のことです。

②必要量は微量である
たんぱく質、脂肪、炭水化物、アミノ酸、必須脂肪酸などに比較して、ヒトの摂取しなければならない量は微量です。 一番必要量の多いビタミンCでも100mg/日です。

③有機物である
これがミネラル類と異なる点で、ビタミンは炭素をその構造の中に含んでいます。

④体内で合成することができない
これがホルモンと異なる点で、外界から摂る必要があります。しかし、これには例外があり、 ビタミンDやニコチン酸は一部体内で合成されますし、腸内細菌が合成するビタミンもあります。 「ビタミン必要量の全てを合成により補うことができない物質」と定義すれば、 全てのビタミンが適合することになります。また、最近ではビタミンDはビタミンと考えるより ホルモンとして取り扱う方が適切であるという議論もあります。


●なぜビタミンはヒトの体内で合成できないのか

ヒトでは合成できないビタミンでも、下等動物では合成できるものがあります。 たとえばビタミンCはヒトでは合成できませんが、ネズミなどではブドウ糖を出発物質としてビタミンCを 合成することができるので、ビタミンCを与えなくても壊血病にはなりません。 なぜヒトはビタミン合成能力が下等動物より劣るのでしょうか。 それには次のような推理が考えられます。人の遺伝子の数は20,000~25,000個程度であることが最近解明されました。 この数を他の生物の遺伝子と比較したところ、最初予想していたのと違って、それほどヒトの遺伝子は多くはないのです。 したがって、ヒトが環境に適応して脳の機能などを発達させていくためには必要でない遺伝子を節約し、 より重要度の高い高分子物質を合成する遺伝子の獲得に切り替えていったのであろうと考えられるのです。 最近の研究でヒトよりサルの記憶能力が優れていることも解明されましたし、聴覚、嗅覚などの五感も 動物の方がヒトより優れている点が多々見られます。ヒトは進化の過程でこのような機能を犠牲にして 高度な脳機能を身につけてきたのでしょう。ビタミン合成能力も食事から摂取すればよいとして、 節約される遺伝子グループに入れられたものと考えられます。


●水溶性ビタミンと脂溶性ビタミン

ビタミンはその化学的性質から水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンに分類されます。

●脂溶性ビタミン
通称 別名:同属体名 主な欠乏症 主な生理作用
ビタミンA レチノール 夜盲症、角膜乾燥症 視物質の構成成分、粘膜・皮膚の維持
ビタミンD ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)
ビタミンD3(コレカルシフェロール)
くる病 カルシウム腸管吸収促進
ビタミンE トコフェロール 溶血性貧血 脂質抗酸化作用
ビタミンK ビタミンK1(フィロキノン)
ビタミンK2(メナキノン)
ビタミンK3(メナジオン)
頭蓋内出血 血液凝固作用、
γ-グルタミルカルボキシラーゼの補酵素

●水溶性ビタミン
通称 別名:同属体名 主な欠乏症 主な生理作用
ビタミンB1 チアミン 脚気、
ウェルニッケ・コルサコフ症
糖代謝酵素の補酵素、神経機能維持
ビタミンB2 リボフラビン 口角炎、口唇炎、舌炎 フラビン酵素の補酵素、脂質抗酸化作用
ビタミンB6 ピリドキシン 皮膚炎、けいれん アミノ酸代謝に関与、GABA産生、
アミノトランスフェラーゼ等の補酵素
ビタミンB12 シアノコバラミン 悪性貧血 プロピオン酸代謝、
メチル転移酵素等の補酵素
ニコチン酸 ビタミンB5 ペラグラ 脱水素酵素の補酵素、酸化還元
パントテン酸 ビタミンB3 血圧低下、
副腎機能低下
エネルギー代謝、
アシル基転移酵素群の補酵素
葉酸   大球性貧血、
神経管閉鎖不全症、
高ホモシステイン血症、
皮膚炎
核酸合成、細胞増殖
ビオチン   皮膚炎 プリン・ピリミジン合成酵素の補酵素、
炭酸固定反応酵素群の補酵素
ビタミンC アスコルビン酸 壊血病 酸化還元、コラーゲン生成


●ビタミンの名称の消滅した物質・ビタミンと呼ばれるがビタミンではない物質

1930~1940年代は、次々と新しいビタミンが発見されブームとなっていました。 ビタミンの研究でノーベル医学・生理学賞を学者は7名いますが、このようなブームにより、 発見された物質にビタミンという名前を冠することが頻繁に行われたようです。 1934年に必須脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸が発見され、ビタミンFと名づけられましたが、 必要量がビタミンより多いという理由で、ビタミンから除外され必須脂肪酸と呼ばれるようになったのです。 下に、かつてはビタミンと呼ばれていて、現在はビタミンと呼ばれていない物質を挙げます。 このうちニコチン酸とパントテン酸は現在もビタミンB群の一員ですが、ビタミンをつけないで呼ぶのが慣例になっています。 その他の物質は現在ではビタミンと認められないため、ビタミン様作用物質と呼ばれるようになったもの、 その後の研究で物質の同定ができなかったり、作用が認められなかったりして消滅した物質等です。 一方、現在でもビタミンを冠して呼ばれることがある物質で、まだビタミンと認められていない物質があります。 それらはビタミンPとビタミンUで、両方ともビタミン様作用物質です。 ビタミンと認められない主要な理由は、先述したビタミンの条件の「必須栄養素」ではなく、 むしろ「薬理作用」であると考えられたからです。

▼現在はビタミンという名前で用いられていない物質
ビタミンB3:パントテン酸
ビタミンB4:酵母より見出された鶏の麻痺予防因子、アデニンであったという報告あり
ビタミンB5:ニコチン酸
ビタミンB7:糠中から得られた鳩の消化障害を予防する因子、物質は同定されていない
ビタミンB8:アデニル酸、その分解物のアデニンが栄養失調等の患者に有効とされた
ビタミンB9:葉酸の一種らしい
ビタミンB10:葉酸はじめ各種ビタミンB群の混合物。ビタミンRともいった
ビタミンB11:葉酸類似化合物。ビタミンSともいった
ビタミンB13:肝臓、野菜から単離された白血球予防因子。オロット酸のこと
ビタミンB14:葉酸またはリポ酸などの混合物
ビタミンB15:パンガミン酸(ジメチルグリシンやトリメチルグリシンなど:ビタミン様作用物質)
ビタミンB16:
ビタミンB17: アミグダリン
ビタミンBT:カルニチン(ビタミン様作用物質)
ビタミンBH:イノシトール(ビタミン様作用物質)
ビタミンBP:コリン(ビタミン様作用物質)
ビタミンBT:カルニチン
ビタミンBX:パラアミノ安息香酸(葉酸の部分構造)(ビタミン様作用物質)
ビタミンF:リノール酸などの必須脂肪酸
ビタミンI:米糠の抽出物。かつてはビタミンB7とも呼ばれた。
ビタミンJ:カテコール、フラビンまたはコリン
ビタミンL1:アントラニル酸
ビタミンL2:アデニルチオメチルペントース
ビタミンN:チオクト酸(α-リポ酸) (ビタミン様作用物質)
ビタミンP:ケルセチン、ヘスペリジン、ルチンなどのフラボノイド(ビタミン様作用物質)
ビタミンQ:ユビキノン(ビタミン様作用物質)
ビタミンT:テゴチン
ビタミンV:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
ビタミンU:塩化メチルメチオニンスルホニウム(ビタミン様作用物質)

●ビタミン様作用物質

歴史的にはビタミンと考えられていたこともあるが、現在の定義ではビタミンに当てはまらないものは ビタミン様物質として区別されます。 ビタミン様物質のなかには、生物から抽出して得られた混合物をそのままビタミンとしたために、 他のビタミンと重複しているものや、正確な化学物質名が不明なものが含まれています。 ビタミン様作用物質は、どの物質がビタミン様作用物質であるかという定義も範囲もありません。 以下は、昨日が科学的に明確になっているビタミン様作用物質です。

ビタミン様作用物質 機能
コエンザイムQ10(ユビキノン) 細胞のエネルギー産生
リポ酸 ケト酸代謝酵素の補酵素、肝機能障害改善
オロット酸 抗脂肪肝作用、貧血予防
カルニチン 動脈圧低下、心拍数減少
イノシトール 抗脂肪肝作用
コリン アセチルコリン生成、メチル基供与
パンガミン酸 循環器疾患・肝臓疾患改善
パラアミノ安息香酸 葉酸の構成成分、皮膚疾患改善
ビタミンP 毛細血管の抵抗力強化
ビタミンU 抗胃潰瘍作用
フェルラ酸(γ-オリザノール) 成長促進、胆汁分泌促進
ピロロキノリンキノン 脱水素酵素の補酵素


■ビタミン関連項目

ビタミンA
ビタミンAは、発育を促進したり、肌の健康を維持したり、暗いところでも目が慣れて見えるようになる機能 (視覚の暗順応)に関わったり、さらにのどや鼻などの粘膜に働いて細菌から体を守ったりなど、 たくさんの重要な役割を持っています。

ビタミンB群
ビタミンB群には、8種類のビタミン(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)があります。 B群のビタミンはお互いに協力関係をもちながら、様々な物質代謝に関わっているためビタミンB群とひとまとめにされるのです。 摂取されたビタミンB群は、小腸から吸収されて体内を巡り、体内すべての細胞にエネルギーを供給するために働きます。

ビタミンC
「ビタミンC」はしわやしみをできにくくしたり、皮膚の老化を防いだり、 強い抗酸化作用で活性酸素を除去し、かぜや老化を防ぐ効果も期待できます。 また、血管を丈夫にして動脈硬化を予防する働きがあります。 ビタミンCは極度に不足すると、老化の速度が4倍速まることがわかり、医師も抗老化治療に活用しています。 ビタミンCは実にさまざまな面で健康に貢献するのですが、水に溶けやすく熱に弱い性質をもちます。 積極的に補給しなければ、すぐに体外へと排出されてしまうビタミンでもあるのです。 とくにストレスの多い方、タバコを吸う方、お酒をたくさん飲む方などはビタミンCが不足しがちです。

ビタミンD
ビタミンDには、カルシウム吸収を促進したり、骨の再生を促進する働きがあります。 また、近年増加している欧米型癌の中でも女性の死亡率第一位の大腸癌の主原因は、 ビタミンDの不足であることがわかり、ビタミンDを体内に増やせば、 大腸癌は半減するということが研究で明らかになりました。 ビタミンDは、食べ物から取り入れられるほか、日光に当たることで体内で作られます。 また、肝臓や腎臓で活性化されてから働きます。

ビタミンE
「ビタミンE」は、血行を促進したり、ホルモンバランスを整えたり、 老化予防、不妊などに効果があるとされているビタミンです。 特に、活性酸素を撃退する強力な抗酸化力を持つ健康ホルモンとして、脚光を浴びています。

ビタミンK
ビタミンKは脂溶性ビタミンの一種であり、血液凝固と骨代謝に関与します。 これにはタンパク質の活性化を促し骨の形成を促進する働きがあることから、健康な骨作りに有効です。 また、肝臓での血液凝固因子の合成に必要な補酵素として作用したり、 カルシウムを骨に取り込む作用を持つオステオカルシンの合成にも必要です。

葉酸
葉酸はビタミンCと同じく、ビタミンの一種です。 葉酸が不足すると、悪性の貧血(巨赤芽球性貧血=DNAの合成障害が原因で起こる貧血)、 口内炎、食欲不振、舌炎、下痢、顔色が悪い、などの症状が現れます。 さらに、重要視されているのが妊婦の葉酸不足。 とくに、妊娠初期(4週~12週)は胎児の細胞分裂がさかんな時期であり、 この時期に葉酸不足を起こすと胎児に神経障害が起こりやすくなるといわれています。

マルチビタミン
「マルチビタミン」は、1日分で厚生労働省が定める日本人の摂取基準をみたす ビタミンを手軽に摂ることができます。ビタミン類は体の調子を整えるのにとても重要な働きをします。 健康管理の第一歩はマルチビタミンで。

コエンザイムQ10
コエンザイムQ10は、ビタミンではなくビタミン様物質の一つです。

▼その他
L-カルニチン