■脂肪酸

脂肪酸には「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」があります。

▼飽和脂肪酸
常温で固体の「脂」に多く含まれている脂肪酸です。肉の脂身、ラード、乳製品などに多く含まれ、 摂り過ぎると肝臓でのコレステロールの合成を促進し、動脈硬化を進行させます。 「日本人の食事摂取基準(2015年版)では、摂取エネルギー量全体に占める飽和脂肪酸由来のエネルギー量を、7%以下にすることが目標とされています。

▼不飽和脂肪酸
常温で液体の「油」に多く含まれている脂肪酸です。主に植物性の油や魚から摂取することができます。 化学的な構造の違いにより「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。 さらに、多価不飽和脂肪酸は、「n-6系」「n-3系」に分類されます。 一価不飽和脂肪酸はオレイン酸に代表され、オリーブ油や紅花油などに多く含まれています。 飽和脂肪酸の代わりに使うと、血液中の悪玉(LDL)コレステロール値を下げる働きがあります。 n-6系多価不飽和脂肪酸にはリノール酸などがあり、大豆油やコーン油などに多く含まれています。 悪玉コレステロール値を強力に低下させる働きがありますが、善玉(HDL)コレステロール値も下げてしまうので、摂り過ぎには注意が必要です。 n-3系不飽和脂肪酸にはα-リノレン酸などがあり、エゴマ油や アマニ油などに多く含まれています。 αリノレン酸は体内に入ると EPADHAという脂肪酸に変化します。 サンマやサバなどの青魚の油には、このEPAやDHAが豊富に含まれています。 EPAやDHAは中性脂肪値や血圧を下げたり、血液を固まりにくくして血栓を予防するなどの働きをします。




■脂肪酸

大きく3つの系統に大別される

私たちが日常摂っている油脂は、一般によく動物性植物性に分けられますが、体内での働きからは、 ①飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸系、②n-6系脂肪酸、③n-3系脂肪酸【オメガ3】、の3つの系統に大別されます。 飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸系は、肉や卵、乳製品に多く含まれ、体内では主にエネルギーとして消費され、 ラードやオリーブオイルはここに分類されます。 オメガ6系(リノール酸)とオメガ3系(α-リノレン酸)脂肪酸は、体内合成が出来ず、 必ず食品から摂らなければならないので、「必須脂肪酸」と呼ばれています。 菜種や綿実、コーンなどの脂肪酸がオメガ6系に分類されます。

食品から取り込まれた脂肪酸は、からだの中で様々な脂肪酸に変換され、 健全な細胞膜と局所ホルモン(プロスタグランジン)を作るのに重要な役割を果たしています。 このプロスタグランジンは、炎症や痛み、腫れの調節、血圧や心機能の調節などに深く関わっています。 オメガ6系のリノール酸は、体の中で「γ-リノレン酸」を経て「アラキドン酸」に変換されます。 このアラキドン酸から作り出される局所ホルモンは、炎症を促進させたり、痛みを増強させる方向に働きます。

一方のオメガ3系α-リノレン酸は、「DHA」を経て「EPA」に変換されます。 EPAから作り出される局所ホルモンは、炎症や痛み・アレルギーを抑制したり、血栓を抑制させる働きがあります。 両者がバランスよく働いていれば問題はないのですが、現代の食生活は圧倒的にリノール酸やアラキドン酸の 過剰摂取に傾いています。その結果、炎症系の局所ホルモンが過剰に作られるため炎症や痛み、 アレルギーを誘発するようになるのです。


●n-6系脂肪酸

過剰摂取は生活習慣病の元凶

「n-6系脂肪酸」は植物の種子が原料のベニバナ油やコーン油、ひまわり油に特に多く含まれます。 n-6系の代表的な脂肪酸である「リノール酸」は、体に不可欠の必須脂肪酸(体内で合成できない脂肪酸) なのですが、最近は摂りすぎによる弊害の方が問題視されるようになっています。

具体的には、リノール酸が体内でアラキドン酸に変化し、さらにプロスタグランジンやトロンボキサンと呼ばれる ホルモン様物質に変化します。これらは少量では重要なホルモン作用を営みますが、多量に生成されると、 血小板を固まりやすくしたり、血管を収縮させたり、炎症を起こしたりすることが明らかで、 多量の摂取は避けなければなりません。 そのため、今ではリノール酸の過剰摂取は、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞・認知症(ボケ)のほか、 肺・乳房・子宮癌、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー病、肺炎や大腸炎などの炎症性の病気を招く 元凶と目されています。しかし今の日本人は、リノール酸を1日の必要量(体重60kgの人で1~2g) の7倍以上も摂取し、完全に摂りすぎ状態に陥っています。


●n-3系脂肪酸

「オメガ3系脂肪酸」(DHA EPA DPA)は血をサラサラにする効果やコレステロール値を下げる効果があると言われています。 そのため、動脈硬化予防や血が固まって血管が詰まることによる重篤な病気の予防効果もあるとされ、 心筋梗塞や狭心症の発症リスクも低下させるというデータも残っています。 その他にも脳内細胞や神経伝達物質であるニューロンが作られるための材料になるというデータもあります。 最近の研究でうつ病の人は脳の前頭前野部分の脳細胞が萎縮していることがわかっているため、 脳内細胞の材料となるオメガ3脂肪酸(DHA EPA)の摂取が効果的であるという医学博士による研究もあります。

【関連項目】:『オメガ3系脂肪酸』