共役リノール酸

共役リノール酸(CLA)』は、リノール酸の異性体のうち、 共役二重結合(炭素-炭素間の二重結合が2個共役した形の部分構造)を持つ持つリノール酸の異性体の総称で、「異性化リノール酸」とも呼ばれます。 共役リノール酸の効果としては基礎研究や臨床試験により体重減少効果が報告されています。 減量のメカニズムは、摂取エネルギーの減少や消費エネルギーの増大によります。 基礎研究では、CLAの体重減少作用がさまざまな動物モデルにおいて検証され、多くの実験ではCLA投与による体重増加の抑制が示されてきました。 臨床試験では、CLAの経口投与によって、肥満者における体組成の改善作用が示唆されてきました。


■共役リノール酸について

▼期待される効果
抗肥満作用

▼作用メカニズム
CLAによる減量作用のメカニズムとして、摂取エネルギーの減少作用、消費エネルギーの増大作用、脂肪酸化の促進、脂肪細胞のサイズの減少、 脂肪組織におけるアポトーシス(細胞自死)促進を介した体脂肪の減少が示唆されています。 また、基礎研究において、CLAによる抗癌作用が報告されています。 CLAによる腫瘍増殖抑制作用では、細胞周期への影響やアポトーシス誘導による作用メカニズムが考えられています。

▼科学的根拠
臨床試験では、CLAの経口投与によって、肥満者における体組成の改善作用が示唆されてきました。 各種の臨床試験では、1日当たり0.7~6.8gのCLAが4週間から1年間投与された結果、体脂肪量の有意な減少が示唆されました。 一部の試験では、除脂肪体重の増加傾向も認められました。 一方、体重やBMI(体格指数)に対する改善作用は明確ではないという結果も報告されています。

▼摂取方法
短期間では効果が期待できないので、継続して用います。 なお、通常の食事では、反芻動物に由来する肉類(牛肉等)や乳製品がCLAを含みます。 これらは、cis-9、trans-11、t11(c9、t11)異性体とtrans-10、cis-12(t10、c12)異性体の両方を含みますが、c9、t11異性体が多いです。 一般に、c9、t11異性体が90%以上です。

▼注意事項
一般に安全性は高いと考えられており、適応となる病態に対して適切な品質の製品を用法・用量を守って利用する場合、 現時点では特に問題とる副作用は報告されていません。 なお、肥満患者において、CLAのtrans-10、cis-12(t10、c12)異性体が、高プロインスリン血症を生じ、 インスリン抵抗性を促進するというデータが示唆されています。高プロラクチン血症やインスリン抵抗性は メタボリックシンドロームの危険因子であるため、これらのデータに基づくと、 CLAを肥満者に投与することは好ましくないことになります。 しかしサプリメントのCLAは、t10、c12異性体単独ではなく、他の異性体との複合剤として利用されています。 たとえば、c9、t11とt10、c12の複合剤を投与した試験では、インスリン感受性の改善が示されました。
一般に、肥満がメタボリックシンドロームの一因であることから、肥満を放置することによる長期的なリスクと、 CLAを利用することによる潜在的なリスクを比較する必要があります。その上で、肥満改善のためにCLAを短期的に利用する選択肢も考えられます。 CLAによるインスリン抵抗性亢進の潜在的リスクに関して、現時点における臨床での対策は、 CLAの長期投与時には血糖値やHbA1c値(ヘモグロビンA1c、血糖コントロールの指標)といった関連指標の経過観察を行うことです。