ストレス

ストレス高血圧を初めとするあらゆる病気の発症に関与しているといわれています。 人間が精神的なストレスにさらされると、 自律神経やホルモンが失調して免疫力が低下し、 免疫力が低下すると、高血圧をはじめとするさまざまな生活習慣病の種が勢力を拡大することになります。 なかでも、 胃潰瘍「十二指腸潰瘍」などは精神的、肉体的ストレスにより誘発されることが知られており、 「ストレス潰瘍」と呼ばれています。 ストレスにより自律神経が強い刺激を受け、胃液分泌亢進、蠕動運動亢進などにより消化器系潰瘍が誘発されるためです。


■ストレスと社会

ストレスを抱えている人の数は年々増加している

長時間労働や強いストレスが原因でで鬱病などの精神疾患を発症し、 労災認定を受ける人の数が年々増えています。2016年度は過去最多で、498人が認定を受けています。 精神疾患による労災を申請する人の数は増え続けています。2016年度には1500人以上が労災の申請をしました。 2001年度が265人でしたから、15年ほどの間に約6倍にも増えていることになります。 ストレスの影響を受けているのは、仕事をしている人だけではありません。 これだけ忙しくて複雑な社会になると、学生、主婦、高齢者など、誰もがストレスを抱えています。 スマートフォンは便利ですが、ちょっとした時間にいつも画面をのぞき込んでいると、作られた世界の中でアップダウンを感じ続けることになってしまいます。 人がリフレッシュできるのは、自然と触れ合ったり、お風呂に入ったりするなど、画面上ではないリアルな現実と接した時だと考えられています。 それが失われると、ストレスによる悪影響がどんどん大きくなっていってしまう可能性があるのです。


■ストレスの原因

環境の変化や日々の積み重ねによってストレスが生じる

ストレスの原因は主に大きく2つに分けられます。1つは人生を左右するような大きな出来事で、もう1つが、小さくても日々重なるものです。 人生を左右するような大きな出来事とは、家族の死や災害などの辛い出来事だけでなく、結婚や就職、入学など、 一般にはよい出来事とされているものも含まれます(下図参照)。 例えば、希望する学校や会社に入ることができても、生活が急変すると、新しい環境に適応していかなければなりません。 その負担が大きくて適応できなくなってしまったり、あるいは逆に、環境に適応しようと無理に頑張りすぎる過剰適応になってしまったりすると、 どちらもストレスになってしまいます。 一方、一つ一つはストレスが小さくても、日々積み重なるものが、いつの間にか大きなストレスになってしまうことがあります(下図参照)。 大きな出来事に比べると、すぐには気付きにくいのですが、積み重なると心と体に様々な問題が生じてきます。

ストレスの原因


■ストレスの影響

溜まっていくと心身に不調を来す

ストレスが溜まると、イライラしてつい食べ過ぎたり、飲酒量が増えたりすることがあります。 便秘や下痢など、体の不調が現れてくることもあります。 心身の不調の現れ方は人それぞれですが、これらは、ストレスが溜まっていることを示す大切なサインがあります。 ストレスの蓄積が関係する病気の種類は多く、ストレスはまさに「万病の元」であるといえます。 ストレスが病気を引き起こすのには、次のような3つのルート(経路)があると考えられます。

▼生理的ルート
ストレスがかかると自律神経のうちの交感神経が緊張した状態になり、血圧が上昇します。 また、ストレスホルモンが分泌され、その状態が続くと、血圧や血糖値などが上昇し、血管にも影響を及ぼします。 胃酸の分泌が増えて胃や十二指腸に潰瘍ができることもあります(⇒胃潰瘍)。 さらに長期化すると、体を守っている免疫の働きが低下し、 様々な病気になりやすくなってしまいます。

▼行動的ルート
飲酒量が増える、やけ食いする、といった行動が現れます。 過度の飲酒は肝臓に悪影響を及ぼし食べ過ぎると体重が増えるなどして、生活習慣の心配が出てきます。

▼情動的ルート
ストレスが溜まると、気分が落ち込んだり、イライラしたり、不安になったりします。 脳の深いところには大脳辺縁系という感情や記憶を司る部分があります。 ストレスが溜まると、この部分が影響を受け、感情のコントロールがうまくいかなくなり、 抑うつ気分不安を引き起こしやすくなります。 これらのルートは、お互いに複雑に絡み合っているため、ストレスが溜まると、さまざまな病気にかかる可能性が高くなります。

ストレスの原因


■ストレスへの反応

生まれつきの体質や生育環境、行動や考え方が影響する

同じ様にストレスを受けていても、あまり変わらない人もいれば、すぐに心身の不調が現れる人もいます。 こうした反応の違いの要因として、1つには生まれつきの体質があると考えられています。 脳の中の不安や緊張に関係している物質のもともとの量の違いにより、鬱病 の発症率に差があるとする報告もあります。 生まれつきの体質以外に、生育環境も関係します。幼いころに虐待やネグレクト(育児放棄)、いじめなどの辛い体験があると、 鬱病を発症しやすい傾向があることがわかっています。反対に、適度な愛情を受けながら育った人は、ストレスに対して強い傾向があります。 生まれつきの体質や生育環境は大きな要因ではありますが、すべてではありません。 日頃の行動の仕方や考え方も大きく関係しています。日頃の行動パターンや思考パターンは、自分で変えることができます。

ストレスの原因


■適切に対処するためには

自分のストレスの程度を把握することが大切

どのくらいストレスが溜まっているかを自分でチェックする簡単な方法があります。 1日の終わりに、自分の余力がどの程度残っているかを、0~100%で表し、それを手帳やカレンダーなどに記入していくのです。 例えば、「化粧を落とす気力すらない→0%」「録画したドラマを見る余力がある→60%」といった具合です。 あまり深く考えず、直感で記入するようにしましょう。また、その日の出来事や感想などを書き添えておくと、後で振り返る際に役立ちます。 数字で記入することにより、ストレスが溜まっている度合いを「可視化」することができます。 自分のストレスの程度を把握することで、休息をとるか何かするかを決めるなど、適切に対処することも可能になります。 頑張り過ぎてストレスで心身に支障を来すことのないように、自分でストレスを調整していくことができるようになるのです。