免疫力

病気から回復するため、病気にならないよう予防するため、最も大切なのは免疫力。 人は誰でも体の中に、健康を保つために夜も眠らないで働いてくれる「お医者さん」を持っており、 疲れがたまると疲労物質を除去しようとし、病気になりそうになると予防してくれます。 実は、そのお医者さんというのが「免疫力」なのです。 普段から免疫力を向上させる生活を心がけ、病気知らずの体を手に入れましょう。


■免疫力とは?

侵入してきた異物を排除し、自己を守る仕組み

ウィルスや細菌、癌細胞などが体の中に入ってきたとき、それを排除しようとするのが「免疫機能」です。 免疫機能の最も基本的な仕組みは「自己」と「非自己」を区別し、自己にダメージを与える非自己を排除することです。 自分自身の細胞などが自己であり、体の外から入ってくる病原体などは非自己として認識されます。 病原体を排除するために戦うのは「免疫細胞」で、その主体は血液の中の「白血球」です。 白血球自体は「マクロファージ、リンパ球、リンパ球の中のT細胞やNK細胞、顆粒球、顆粒球の中の好中球や好酸球」など、 細かい種類に分けられ、それぞれが独自の役割を持つとともに、互いに連携することによって病原体と戦うシステムになっており、 白血球中のリンパ球から分化した「T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ」 などが体内の異物を排除し、癌や老化の元凶となる「活性酸素」 を増やさないように働いているというのが、「免疫機能」のおおよその仕組みです。 免疫システムはとても複雑で、免疫細胞のバランスが取れていることが非常に重要です。 しかし、免疫細胞は自律神経の影響を受けやすいことがわかっています。 そのため、自律神経を乱しやすい現代の生活は免疫バランスを崩すことにつながり、免疫力を低下させると考えられるのです。


●「自然免疫」と「獲得免疫」

免疫細胞は「自然免疫」「獲得免疫」の2つに分かれます。 「自然免疫」は、生まれながらに体に備わっている免疫機能。 中心となるのは、「マクロファージ」「好中球」「NK(ナチュラルキラー)細胞」です。 自然免疫は常に、血液やリンパ球に乗って体内を巡り、異物の侵入や発生がないかをパトロールし、敵を発見すると同時に攻撃を開始します。 一方、「獲得免疫」は特定の病原体に感染することで、後天的に得られる免疫機能。 自然免疫だけでは異物を排除できない場合に出動します。 自然免疫だけでは病原菌などの敵を押し切れない場合、自然免疫チームの「マクロファージ」が、獲得免疫に応援を要請します。 理想は自然免疫チームだけで対応を終えること。 病原体が体内に侵入した場合、「獲得免疫」が働くときには必ず発熱などの症状が出ます。 そうなる前に、自然免疫だけで倒すことができれば、感染は拡大せず、かかったとしても症状は軽くて済むのです。

<<免疫力アップの要はNK細胞>>

風邪をひかずに健康でいられるのは、NK細胞が真っ先に敵を叩き、感染を防いでくれるからです。 NK細胞が活発な人は、風邪をひいても治りが早いことも明らかです。 ですが、この細胞はストレスや食生活などの影響を受け、本来の力を発揮できなくなることもあります。 普段からNK細胞が活性化するような生活習慣を身につけることが大切です。


■免疫力チェック

お風呂はシャワーで済ませることが多い
出不精であまり外出しない
ストレスをよく感じる
笑うことがあまりない
生活は不規則なほうだ
深夜まで起きていることが多い
寝不足なことが多い
朝食抜きの日が多い
食事は適当に済ませることが多い
食べるスピードは速いほうだ
平熱が36℃以下である
ヨーグルト、納豆などの発酵食品が苦手
コレステロール値を気にして卵はあまり食べない
キノコ類をあまり食べない
毎日の食生活で野菜不足を感じる
インスタント食品を食べることが多い
お菓子は毎日食べる
ダイエットをよくする
夜寝る直前までスマホを触っていることが多い
汗をかきにくい体質である
風邪をひきやすい
風邪が治りにくい
口内炎ができやすい
肌荒れがひどい
湿疹ができる
傷が治りにくい
便秘や下痢をしやすい
体が冷えている
あまり眠れない
気分が落ち込みやすい

*5つ以上の項目にチェックが付いた人は要注意です。


●食事による免疫力チェック

免疫の主役ともいえるリンパ球には、自律神経のうちの副交感神経の影響を受けて増減するという性質があります。 そのため、免疫力を強化するには副交感神経を優位に保つ必要があります。 では、どのようにして副交感神経を優位に保てばいいのでしょうか。 それには、毎日の食事が深く関わっていることを忘れてはいけません。 私たちが日々口にする食品には、副交感神経を優位にする食品があるからです。 そこで、免疫力を強化するためには、下記に述べるような食品を摂ることが重要になってきます。


【免疫力が強いかどうかがわかる食事診断】
チェック項目 はい いいえ
主食
おかず
味噌汁
①ご飯 玄米や発芽玄米より白米が好き    
②肉など 肉や揚げ物などを好んで食べる    
③味付け 味付けは、どちらかというと塩分の多いもの(塩辛いもの)が好き    
④大豆食品 納豆や豆腐などの大豆食品を自分からあまりすすんでは食べない    
⑤野菜など 野菜や果物を全く食べない日がある    
⑥キノコなど キノコや海藻類を食べる機会が、ほとんどといっていいほどない    
⑦魚 魚は嫌いで、小魚や小エビなども食べない    
⑧味噌汁 味噌汁は、数日に1杯程度しか飲まない    
間食
食べ方など
⑨菓子など 甘いお菓子やケーキが好きでよく食べる    
⑩早食い よく噛まない。しかも早食いである    
⑪満腹感 いつも、お腹がいっぱいになって満腹するまで食べるのが習慣になっている    
⑫偏食 好きなものばかりを食べる傾向があり、栄養が偏っていると自分でも思う    
⑬外食 会社での昼食は外食や、決まった弁当類を食べることが多い    
⑭欠食 休日や家にいるときの食費を簡単に済ませたり、欠食することがある    

【判定】

「はい」が2個以下・・・・・免疫力の低下は全く心配ありません。
「はい」が3~5個・・・・・免疫力の低下はほとんど心配ありません。
「はい」が6~9個・・・・・免疫力の低下がやや心配です。
「はい」が10個以上・・・・免疫力が低下している可能性が大です。

①ご飯
玄米は、副交感神経を優位にする食べ物の一つです。 玄米には、 ビタミンB1、B2ビタミンEをはじめ、 脂質、リン、ミネラルが、白米より2~4倍多く含まれ、 食物繊維は6倍も多いのです。 特に、副交感神経を優位にする栄養は、 マグネシウムカリウムカルシウムなど。 これらも玄米に含まれています。そうした意味から、免疫力強化のためには玄米が最適なのですが、 炊き方が難しかったり食べたとき硬かったりするのが難点です。 そこで、5分づきや7分づきの玄米、あるいは 発芽玄米を白米に混ぜて食べれば、免疫力の強化に役立ちます。

②肉や揚げ物
現代の食事には、肉や揚げ物などがたくさん取り入れられるようになり、 肥満の人が急増しています。 肥満の予防には、食欲のコントロールが必要です。 ストレスを減らし精神が安定すれば、 腸の粘膜にある白血球の働きが正されて、食べる量も減っていきます。 ところが、脂肪を摂り過ぎれば食欲のコントロールが乱れ、免疫力を担う白血球が正しく働かなくなるのです。

③塩分の摂りすぎ
塩分の摂り過ぎも、の発生に関係しています。 最近では、胃癌の発生にピロリ菌の感染が深く関わっていることがわかりました。 国立がんセンターによれば、ピロリ菌に感染していて塩分の多い食事をする人に、 胃癌が多発しているそうです。

④大豆食品
納豆や豆腐などの大豆食品も、副交感神経を優位にする食べ物です。基本的には毎日摂りたい食品です。
【関連項目】:『大豆製品』

⑤野菜や果物
野菜や果物は、毎食摂ることが望まれます。
【関連項目】:『野菜不足解消』

⑥キノコや海藻類
キノコや海藻類は、豊富な食物繊維やミネラルに加えて、キノコも海藻類も低カロリー。 しかも、キノコのβグルカンという成分は免疫力を強化して癌を予防します。 一方海藻類に含まれている水溶性の食物繊維のフコイダンには、 大腸癌を抑える働きのあることがわかっています。
【関連項目】:  『キノコ』 / 『海藻類』 / 『βグルカン』 / 『フコイダン』

⑦魚
魚には、EPAやDHAという脂肪酸が含まれています。EPAやDHAは、体の中でリンパ球を増やします。 また、小魚や小エビなどのように、豊富な栄養をバランスよく含んでる食品を摂れば、副交感神経が優位になります。
【関連項目】:  『EPA』 / 『DHA』

⑧味噌汁
味噌汁も食事に欠かせません。厚生労働省の研究班が行った調査では、1日に味噌汁を3杯以上飲む人は、 飲まない人より乳癌の発症率が4割も減ることがわかっています。

⑨甘いものの摂り過ぎ
甘いものの摂り過ぎは、食欲のコントロールを乱し、肥満を招きます。

⑩早食い、⑪食べ過ぎ
食事のときによく噛まないで飲み込む人は、2つの面で問題があります。 1つは、よく噛まずに唾液が十分に分泌されないと、体にとって有害なものが素通りしてしまう危険があること。 唾液中に含まれる酵素には、食品添加物や残留農薬などの害を消す働きがあるので、1口食べたら最低30回は噛むようにしたいものです。 もう1つは、よく噛まないで早食いをすると、食べ過ぎにつながります。 1口ずつ、よく噛んで食べれば、腹八分目で満腹感が得られるので、食べ過ぎる心配はありません。 食べ過ぎは交感神経優位の状態を作り出し、反対に、腹八分目は副交感神経を優位に保ってくれます。

⑫偏食、⑬外食、⑭欠食
偏食はいうまでもなく栄養のバランスを欠く原因です。 栄養のバランスを整えることが、副交感神経優位の状態を作り出します。外食や欠食も同様です。

■免疫力アップに大切な3つのこと

免疫力を左右するのは生活習慣と食生活

免疫力を上げるために大事なことは3つあります。 1つ目は「腸内環境を整えること」。 口にしたものが運ばれる腸には、常に異物侵入の危険があり、その内側の粘膜には体内の約7割の免疫細胞が存在しているからです。 また、腸内には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類の細菌が生息していますが、悪玉菌が優勢になると、免疫細胞の働きは低下してしまいます。 2つ目は、「自律神経のバランスを程よく保つこと」。自律神経には、緊張・興奮状態にあるときに働く「交感神経」と リラックスしているときに働く「副交感神経」がありますが、どちらかに偏り過ぎると、免疫力に影響が出てきます。 ストレスは免疫力の天敵です。 3つ目は、「基礎代謝を上げること」。基礎代謝とは、生命活動に必要なエネルギーを生成・消費すること。 基礎代謝量が低いと、体温は下がる傾向があります。体温が1℃下がると、免疫力は30%下がるといわれています。 日頃から体を温める食材を意識することや、筋肉量を減らさないようにすることが、加齢とともに下がりやすい基礎代謝を維持するコツです。

●自律神経と免疫力

自律神経の乱れが免疫バランスを崩す

昔から「病は気から」ということわざがあります。 免疫力も心の状態と深く関係があり、心の状態が良好なとき、免疫力は高いのですが、 心が暗くなって落ち込んだり、怒ったりすると、精神状態が不安定になり、免疫力が低下します。 また、私たちの体は自律神経によってバランスが保たれています。 自律神経は、体が活発に活動するときに優位に働く交感神経と、リラックスしているときに優位に働く副交感神経から成り、 この2つが適切にバランスをとることで、私たちの健康がコントロールされています。 ストレスが強いと交感神経が優位になり、リンパ球が減ってきます。 だから病気のときはリラックス状態である副交感神経を優位にして、免疫力を強めようとするのです。

◆自律神経を整えて免疫力を強化する

免疫細胞の顆粒球は交感神経の支配を受け、リンパ球は副交感神経の支配を受けます。 そのため、例えばストレスによって交感神経が優位になり過ぎると、顆粒菌が過剰に増えて体の組織を破壊すると考えられており、 反対に、運動不足などによって副交感神経が優位になり過ぎ、リンパ球が過剰になると、 アレルギー疾患の誘因になると考えられます。 自律神経はストレスを自覚していなくても、頑張り過ぎていたり、睡眠不足であったり、体を冷やしたりすることでも乱れてしまいます。 免疫力を高める第一歩として、自律神経を整える生活を心掛けるとよいでしょう。


●最後に

「風邪を治す薬はない」と、よく言われます。 熱を下げたり、鼻水や咳を抑える薬はありますが、最終的に風邪を治すのは、風邪を引いた人の免疫力です。 また、風邪を引かないように予防するのに必要なのも免疫力です。 しかし、不健康な生活習慣や過剰なストレスなどにより、現代人の免疫力は低下しやすくなっているといわれます。 自分自身や家族が免疫力を弱めるような生活をしていないか、見直してみる必要があるのではないでしょうか。