GLP-1

ある実験で、健康な40歳代男性の心臓をMRI動画像で横から捉えたところ、心臓全体が大きく拍動しながら血液を送り出すのがわかりましたが、 70歳代男性の心臓では、全体が小さく縮んでいるばかりか、拍動のリズムも遅くなっていることがわかりました。 二つの動画を比べてみると一目瞭然、そう、これが「心臓が老化する」ということなのです。 実は、この現象の裏にあるのは「心臓の血管の減少」なのです。 若いころの心臓は、たくさんの毛細血管が張り巡らされ血流も豊富、栄養分もたくさん届けられているため元気に拍動することもできています。 しかし、年齢とともにこの毛細血管が少しずつ減少、心臓に届けられる栄養分も減り、拍動も弱くなってしまうのです。 そして、そのまま気付かずに放っておくと、ある日突然、生死にかかわる心疾患を起こしてしまう場合もあります。 実は、平成の初めの頃に13万9千人だった心疾患による死亡者数は、平成最後の年までにゆっくりと着実に増加してしまい、約20万人にまでなりました。 というのも、平成が始まった頃には、心臓の老化を食い止める方法は、暗中模索、見つかっていなかったからです。 ところが、平成も終わる頃には、名医たちのたゆまぬ努力のおかげで、心臓の老化を防ぐ可能性のある方法の一つが判明したのです。 それこそが、心臓の老化ストップ物質GLP-1。 世界的に認められた権威ある医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載された、アメリカなどの研究チームの発表で、 このGLP-1を3年半投与された人は、そうでない人に比べ、心血管病による死亡率が約22%も減少したと報告されました。 つまり、GLP-1が心臓の老化を防ぎ、元気な拍動を保つことが期待できることがわかったのです。


■GLP-1とは?

GLP-1というホルモンは、元々血糖値を下げる働きが注目されたホルモンで、 2010年から「糖尿病」の治療薬として既に使われているのですが、 血糖値を下げるだけでなく、心血管を守る働きもあることが判明しました。 GLP-1には、これまでの医学界の常識を覆す驚くべき2つの働きがわかっています。
1つは心臓に張り巡らされている毛細血管への働き。 毛細血管は加齢とともに減少、すると、心臓に届く栄養が減るため、拍動が弱まってしまいます。 しかも毛細血管が再び増えることはない、これまで、そう考えられてきました。 しかし、最新のGLP-1研究によって、その考えは大きく変わろうとしています。 毛細血管は加齢とともに減少するもので元に戻ることはないと考えられていましたが、GLP-1の研究によって、 GLP-1は毛細血管を再び増やす可能性があることが、さまざまな研究から示唆されています。
そして、GLP-1がもう1つ働きかけるのは、心臓の冠動脈に溜まったプラークです。 プラークはもし破裂すると 「心筋梗塞」を発症、生死の事態を招く恐ろしいもの。 このプラークは、これまでは、一度できたらなくならないと言われていましたが、GLP-1が働くと有り難い変化が起きるのです。 まだ、正確なメカニズムはわかっていませんが、GLP-1がプラークを減らす可能性があるということで、 「動脈硬化」の促進を防ぎ、ひいては心臓の働きを守ってくれると考えられています。


■GLP-1の分泌量の差で心臓の若さは違う

GLP-1は、小腸から分泌されるホルモンで、きちんと必要量分泌できている人とそうでない人がいます。 つまり、GLP-1は誰の体にも存在するホルモンの一つですが、人によって分泌量に違いがあるのです。 これを、調べるためには「6分間歩行テスト」があります。 方法はいたって簡単。6分間できるだけ長い距離を歩き、その距離を測定し、それを各年代の平均値と比較して心臓の機能を判定するというものです。 下記の表が平均値です。これを超えれば年齢より若い心臓、下回ったら年齢よりも老化した心臓、つまり、心臓の機能低下の疑いがあると判断します。


- 女性 男性
60歳〜64歳 655.4m 689.8m
65歳〜69歳 638.1m 678.1m
70歳〜74歳 634.5m 673.5m


GLP-1は、食事を摂るとその刺激で小腸から分泌されます。 そこで、食前と食後の2回血液検査を行い、血中のGLP-1がどれだけ増えたかを比較して、 食前のGLP-1の値に比べ、食後のGLP-1の値が2倍以上になっていればクリア、しっかり分泌できており、 2倍を超えなかった場合は、GLP-1があまり分泌できていないと判定します。

GLP-1の分泌を増やすことにおいて重要なことが2つあります。 1つは「食べるものの種類(何を食べるか)」。2つ目は「食べる時間」。 では、どんなものをどんな時間に食べるとよいのでしょうか?
どんなものを食べるかで重要だ言われているのは、「適度な糖質を摂ること」「不溶性食物繊維をたくさん摂ること」。 このことがGLP-1をよく出すという研究結果が出ています。 適度な糖質は腸の奥までしっかり届き、不溶性食物繊維は小腸を刺激して、GLP-1の分泌を促します。 適度な糖質と不溶性食物繊維を含む食材は、ゴボウ、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、里芋、山芋などの根菜類。 炭水化物と違い野菜が含む糖質は、小腸の刺激には最適なのです。しかも、不溶性食物繊維も豊富に含まれています。 GLP-1の分泌には最適な食材といえます。
では、もう1つのポイント、食べる時間とは?
それは、朝・昼・晩の3食を決まった時間に食べることです。 これによっていつも同じタイミングで小腸が刺激されます。 この習慣化がより多くのGLP-1を分泌することになります。


●お手軽食材でGLP-1をしっかり分泌

とは言え、根菜類を3食規則正しく食べるのは難しいものです。 しかし、これを一挙に解決できるお手軽食材があります。 それは、「アーモンド」。 ナッツ類の中でもアーモンドに含まれる不溶性食物繊維の量はダントツのトップ (アーモンド:10.0g、クルミ:6.9g、ピスタチオ:8.3g、マカダミアナッツ:6.2g)。 この100g中10gという量は、優秀な根菜類をも上回る数値なのです。 アーモンドをなるべく多く摂ることで、GLP-1の分泌効果が期待できます。 決まった時間に食事を摂れない時や、外食などで根菜類が摂れない時などにおススメです。
ただし、アーモンドだけで済ますのではなく、3食の食事で根菜類を含めバランスの良い食事を摂ることも必要です。