職場ストレス解消法

多くの人が、仕事や職場でストレスを感じています。「不調のサイン」に早く気付き、適切に対処しましょう。


■働く人の約60%が抱える「職場ストレス」

「平成30年 労働安全衛生調査」(厚生労働省)によると、働く人の約60%が、仕事や職場で強いストレスを感じていることがわかりました。 休職に至った人は約7%に上っています。特に30歳代や40歳代の働き盛りの男性に多い傾向があります。 ストレスの原因としては、「仕事の質や量」を挙げる人が最も多くみられます。 仕事上の失敗や仕事に伴う責任、上司や同僚などとの人間関係、また「今の仕事をいつまで続けられるのか」といった雇用状況への不安も原因になっています。 ストレスによって心身に不調を来した場合は、一人で抱え込まず、早めに専門医に相談するなど、適切に対処することが重要です。 働く人のストレスがどのような状態にあるかを知る方法として「ストレスチェック制度」を導入している職場が増えています。 制度が導入されていなかったりして、このチェックを受けられないなどの場合は、厚生労働省のホームページで公開されている 「5分でできる職場のストレスセルフチェック」を活用してみてください。 簡単な質問に答えることで、ストレスの原因や心身の反応などがグラフで示され、結果に対するアドバイスも得られます。
一方で、強いストレスを感じている本人が、ストレスによる不調のサインに自分で気付くのは、難しい場合が少なくありません。 同僚や上司、家族などの周りの人は、日頃からコミュニケーションをよくとり、不調のサインがあれば、見逃さないようにしてください(下図参照)。 周りの人が不調のサインに気付いた場合は、困っていることやストレスの原因などについて、本人と話をする時間をとるようにしましょう。 初めは、「疲れているのではないか」と本人に聞いてみるだけでも構いません。 本人が置かれている状況をよく観察しつつ、話を聞くときには、”ありのまま”を受け止め、認めるようにします。 そのうえで、解決すべき問題があると感じた場合は、4段階のケアを意識した対策をしましょう。 本人による「セルフケア」「職場の上司によるケア(ラインケア)」から、職場の産業医や保健師などの「専門のスタッフが行うケア」につなぎ、 さらに必要であれば、専門の医療機関や相談機関などの「職場外のケア」に連携します。 産業医や専門医の診断を受け、「仕事が病状に影響している」と判断された場合は、休職して治療と休養に専念することも必要になります。

周りの人の「不調のサインを見逃さない」


■安心して休むために押さえておきたい確認事項

休職が必要と判断された場合は、職場の産業保健スタッフや人事担当者などと、「休職期間」「休職期間中の給与」「休職期間中の社会保険料の負担」 「休職期間中の会社との連携方法」「復職する際の手続きの方法」などについて確認しておきましょう。 休職に関するこれらの事項について、よくわからないことがあると復職に向けて不安が募り、かえってストレスを感じてしまうことがあります。 じっくり時間をかけて安心して休職し、治療に専念するためにも、きちんと確認しておくことが大切です。 また、休職中も会社と定期的に連絡を取り合い、現状を報告するとよいでしょう。


■復職を支援する「職場復帰のための専門プログラム」

休職している人が、スムーズに復職し、病気の再発や再び休職することを防ぐように支援するのが、職場復帰のための専門プログラムで、 「リワークプログラム」とも呼ばれます。リワークプログラムは、全国の医療機関や地域障害者職業センターなど、約200の施設で実施されています。 地域や施設によって細かな内容は異なりますが、基本的な構成は同じです。 プログラムの利用を希望する場合は、治療を受けている医療機関の担当医に相談してください。 リワークプログラムでは、自分の病気について学んだり、他の利用者と簡単な共同作業を行うなどのプラグラムに参加して、段階を踏んで復職の準備を進めます。 期間はおよそ3~6ヵ月間で、主に3つのステップがあり、徐々に就業時の状態に近づけていきます。 プログラムが終了すれば復職となりますが、職場復帰がゴールではありません。 復職後も継続的なケアは必須で、勤務時間の長さや仕事の量、人間関係などを職場に調整してもらいます。 また、復職した直後は不調が再発するリスクが高いため、週に1回通院し、プログラムに参加している仲間と話をしたり、 診察を受けるなどして、再び休職することを防ぎます。
働くことは、本来、自分の暮らしや幸せ、やりがいをかなえる手段ですが、それに伴うストレスを完全に避けることはできないため、 働く上で心身に不調を来すこともあるでしょう。 自分らしく、安心して働くためにも、身近な人や専門のスタッフの協力を得ながら、より良いストレス対処に取り組んでいただきたいと思います。