ストレス解消!リラックス法
『体からリラックス』
心の状態は体に影響しますが、体の状態も心に影響を及ぼします。 それを利用し、体の緊張を緩めることで、心もリラックスさせる『ストレス対策』があります。
■ストレス対策
「力まず、避けず、妄想せず」でストレスに対処する
ストレスが病気の原因になるのは「生理的ルート」「行動的ルート」「情動的ルート」という3つのルートを通って、その影響が心身に及ぶためと考えられています。 したがって、それぞれのルートに対策を講じることが、ストレスの影響が心身に及んで病気を引き起こすことを防ぐのです。 その時に心がけたいのが「力まず」「避けず」「妄想せず」です。 「力まず」は生理的ルートへの対策です。体を力まずに力を緩めることが、心もリラックスさせることに繋がります。 「避けず」は行動的ルートへの対策です。 ストレスの原因となっている大変なことや嫌なことを避け、やけ食いなどのストレスを発散をしても、本当の意味でのストレスへの対処にはなりません。 抱えている問題を避けずに、行動を変えることで根本的な解決に取り組むことが、ストレスをためないことに繋がります。 「妄想せず」は情動的ルートへの対策です。過去への後悔や、将来への取り越し苦労が、問題を実際以上に大きく、 複雑なものとしてとらえさせ、ストレスを生み出します。心を”今”に向け、「現実に起こっていること」と「妄想」を区別することで、 ストレスを減らすことができます。
■「力まず」
体の緊張を緩めて、心の緊張もほぐす
ストレスにより緊張や不安があると、その影響で体がこわばります。心がリラックスしているときは、体もゆったりと緩んでいることが多いのです。 心は体に影響を及ぼしますが、その逆に体も心に影響を及ぼします。 体を緩める方法を覚えれば、心も緩み、ストレスに対処することができるようになります。
- ▼筋肉を緩めるトレーニング
- 筋肉を緩めるには、まず筋肉に力を入れます。ギュッと力を入れ、そのあとにフッと力を抜くと、筋肉が緩むのを感じることができます。 目の周りや額に力を入れて緩める方法などがあります(下図参照)。筋肉が緩むと、心もリラックスします。 手軽な方法なので、いつでも行うことができます。緊張しているときや、疲れを感じた時に行うようにしましょう。 回数に決まりはありません。快適に感じられる範囲で繰り返してください。
- ▼体を温めるトレーニング
- ストレスで緊張状態にあると血流が悪くなって手足が冷たくなり、リラックスしていると手足がポカポカになります。 その逆に、手足を温めることにより、心がリラックスした状態を作りだすようにします。 手足を温めるといっても、カイロを使ったり、運動したりするわけではありません。 太腿に置いた手の温かさから出発して、イメージを使うことで手足を温めます(下図参照)。 この方法は、慣れるのに時間がかかりますが、より深いリラックス効果が得られます。 朝起きた時や夜寝る前など、毎日決まったタイミングで行いましょう。
ストレスの原因を失くし、ストレスを発散しようとしても、限界があります。 ここで紹介するのは、ストレスに対処する抵抗力を高め、ストレスの影響が心身に及ぶのを防ぐのに役立つ方法です。
■「避けず」
”その場しのぎ”でストレスから逃げず、原因に向き合う
ストレスが溜まると、やけ食いや酒、衝動買いなどの行動に走りがちです。 一時的につらさを忘れられるため、こうした行動が癖になってしまいます。 しかし、しばらくするとその行動を後悔し、自己嫌悪に陥ることも少なくありません。 場合によっては、体調を崩したり、経済的な負担が大きくなったりすることもあります。 このように、ストレスを発散するつもりがさらに大きなストレスを抱え込んでしまうことになるのは、よくない行動パターンといえるでしょう。 こうした状況を生み出しているのは、”その場しのぎ”の行動です。 誰でもストレスが溜まるのはつらいため、その状態を避けようとして、目先の楽しいことに飛びついてしまいがちです。 しかし、基本的なストレスの原因は、その場しのぎの行動では解決しないままです。 そのため、しばらくするともっとつらくなってしまいます。 まさに、目先の楽を手に入れて、長期的な苦しみを抱え込むという最悪な結末になってしまいます。 このような行動パターンから抜け出すためには、前向きにストレスを解消したり、ストレスの原因を減らすことが大切です。 具体的に2つの対処法を紹介します。
●コーピング
前向きなストレス解消法をあらかじめ考えておく
溜まったストレスを前向きに解消するには、「コーピング」という対処法を身に着けることが役立ちます。 コーピングとは、「上手に対処する」という意味の英語で、ストレスの対処法として使われる場合は、 適当な気晴らし、適切なストレス解消法という意味になります。 コーピングのポイントは、自分にとってのストレス解消法の内容を「あらかじめ考えておく」ことです。 ストレスが溜まった状態では、精神的に余裕がなく、何とか対処しようと思っても、なかなか良い方法が思い浮かびません。 そのため、やけ食いなど、その場しのぎの方法を繰り返し、後で落ち込むというパターンに陥ってしまうのです。 そうした状態にならないためにも、元気な時に、自分にとってストレス解消になること、つまり自分のコーピングは何かをあらかじめ考えておくことが大切になります。 できるだけたくさんのコーピングを箇条書きにして、コーピングリストを作っておきましょう。 コーピングを考えるときのコツは、後で後悔しない「自分のためになる行動を選ぶ」ことです。 また、「行動を細分化する」のも項目を増やすコツです。 コーピングは多ければ多いほど、その時の気分や状況にあったものを選ぶことができます。 ストレスが溜まってきたと感じたら、コーピングリストから選んで試してみましょう。 試した結果、効果があったかどうかを記録しておくと、次に選ぶ時の参考になります。
●アサーショントレーニング
相手のことを尊重しながら、自分の主張を伝える
ストレスの原因として多いのは、人間関係やコミュニケーションに関わるものです。 日常生活では、「思っていることをうまく伝えられない」「嫌なのに断れない」といったことが多々あります。 そのとき、自分の言い分だけを強硬に主張したり、或いは我慢して自分を抑え込んだりすることは、人間関係の悪化やストレスに繋がります。 特に自分の思ったことを言わないでいると、不安や緊張が高まってしまい、大きなストレスになるのです。 そうした対人関係のストレスを作らないようにするのが「アサーション」です。 アサーションとは、自分も相手も大切にしながら上手に自己主張する方法のことです。 この方法を身に着けるためのアサーション・トレーニングは、ストレスの原因を減らすことを目指しています。 アサーションでは、状況に応じたアサーティブな表現を使えるようにします。
そのポイントは、次の4つです。
- ▼現在の状況を客観的に説明する
- ▼そのうえで、自分の気持ちを伝える
- ▼さらに、相手をおもんぱかる
- ▼代替案を出して相談する
この4つのポイントを押さえた表現をすることで、自分で主張しているのに柔らかな印象になり、相手に受け入れてもらいやすくなります。 こうしたアサーショントレーニングは企業や医療機関、学校現場などで取り入れるところが増えています。
●繰り返すことが大切
行動は意識して練習すれば変えることができる
人の性格は、変えられないと思うかもしれません。しかし、性格とは日々の行動の癖です。その行動は意識して練習すれば、変えることができます。 コーピングやアサーションは、その場しのぎの行動をやめて、解決に繋がる行動を身に着けるための助けになります。 最初は慣れない方法でも、繰り返すことで新たな習慣になり、自然と身に着いていくようになります。 行動を変えることで、ストレスを避けずに解消したり、ストレス自体が生じにくくなるようにしていきましょう。
■「妄想せず」
”今”に心を向け、ストレスを増やす妄想をやめる”
私たちは今この瞬間を生きているようでいて、実は、頭の中では過去や未来のことを考えていることが多いといわれています。 ふと過去の失敗を思い出し、「自分は社会人失格だ」と落ち込んだり、「昨日は言い過ぎたかな」と悩み始めることがあります。 或いは、未来のことについて、「うまくいかなかったらどうしよう」などと考え始めたりもします。 時として、それらは頭の中で大きくなり、やがてその考えに飲み込まれていってしまいます。 特に、過去の後悔や失敗、未来への不安といった負の感情については、いつまでも頭の中でグルグルと考え続けてしまい、なかなかやめることができません。 このように頭の中で繰り返されるものは、実は”妄想”に過ぎません。 この妄想が、私たちのストレスを大きくしたり、増やしている可能性があります。
●マインドフルネスな状態を目指す
妄想によって起こる、「心ここにあらず」の状態をマインドワンダリングといいます。 このマインドワンダリングに費やされている時間は、生活時間の約半分を占めているともいわれています。 一方、私たちはグルグルと考え続けているときに、ハッと我に返ることがあります。 この瞬間、妄想から抜け出して現実に戻ることができ、自分が妄想に飲み込まれていたことに気付きます。 この「気付き・目覚めの状態」を「マインドフルネス」といいます。 過去や未来への妄想が作り出すストレスを軽減するには、心ここにあらずの状態から抜け出し、”今”この瞬間の現実に戻ることが大切なのです。
●マインドフルネス瞑想
心を”今”に向ける方法として、最近注目されているのが「マインドフルネス瞑想」という方法です。 聞き慣れない言葉かもしれませんが、その考え方は、日本では、古来様々な武道、芸道などで心の訓練法として重視されてきました。 マインドフルネス瞑想には、集中する瞑想と気を配る瞑想という2つの方法が含まれています。 多くの場合、集中する瞑想から気を配る瞑想へと練習を勧めていきます。 集中する瞑想の一つである呼吸の瞑想(下図参照)は、マインドフルネス瞑想の基本で、呼吸をしているときの体の感覚に意識を集中させます。 気を配る瞑想としては、音に耳を澄ます瞑想(下図参照)があります。 様々な音を含む周囲の音の中から、順番に、一つの音に意識を集中したり、その対象を切り替えていったり、すべての音に同時に意識を向けたりするものです。 マインドフルネス瞑想を行うと、体の感覚や感情に関係している島(とう)と呼ばれる脳の部位が高まるとされています。 ただし、効果を求めると、焦ってしまい、”ありのままを受け止める”状態から遠ざかってしまうため、”効果を求めない”よう心がけて、 ”今日の自分の体験に気付く”練習と思って行うことが大切です。 最初は期待したほどの効果が出ないと感じるかもしれませんが、これから変化する自分を楽しみにしながら、淡々と挑戦していきましょう。