ストレス脳をリラックス脳に変えよう!
例えば自分の行動について、誰か他人から注意を受けたとします。あなたはどんな反応を示しますか?
言われたことが気になって、ずっとくよきょしてしまう。
あるいは、気には止めても、すぐに気分転換・・・・・。
同じ出来事に遭遇しても、それをストレスと感じやすい人と、そうでない人がいるようです。
感じやすい人の脳は、ストレスに対して過敏に反応します。それが『ストレス脳』
「ストレス脳」でいると、体のあらゆるところで、さまざまな異常が発生します。
すぐにでも決別して、『リラックス脳』をつくりませんか?
■ストレス脳とリラックス脳
脳がストレスに過敏に反応すると自律神経のバランスが崩れる
脳が過大なストレスを感じると、体を守ろうと全身に指令を発信、緊急事態の発令です。 緊急事態とあっては、体は穏やかでいられませんし、そして、ストレスが続くと、あちこちに不調が現れることになります。
●ストレスを受けると、おでこの内側当たりの脳が反応する
人が生きていく以上、ストレスを避けて通るわけにはいきませんが、毎日の生活の中でストレスを感じやすい人・感じにくい人の 両方がいることも事実です。なぜ、人によって違いが生じるのでしょうか。 最近の研究で、ストレスに反応しやすい人の脳と、そうでない人の脳の状態が目で見てわかるようになってきました。 ストレスがかかった時、思考や物事の判断といった機能を司る、脳の「前頭前野」という領域に違いが出るのです。 前頭前野は、おでこの内側当たりに位置し、脳の司令塔と呼ばれる、前頭葉の大部分を占めています。 前頭前野の働きは左右で異なり、右側(正面から見ると左側)は、怒りや不安といったネガティブな感情に反応し、 左側(正面から見ると右側)はポジティブな感情に反応します。
●ストレスに反応しやすい脳は前頭前野の「右側」が活発に
ストレスに反応しやすい人の脳は、前頭前野の右側で血流量が多くなっています。 それは、右側が盛んに活動しているため。これが、都市部を中心に日本人に急増しているといわれる「ストレス脳」 の正体です。一方、ストレスに過剰に反応せずやり過ごせる人の脳は、ストレスがかかると、前頭前野の左側が活発になり、 血流量も左側の方が増えるか、左右で違いが見られません。 このような脳は、「リラックス脳」と呼ばれます。 ストレス脳の人は、ストレスを感じて前頭前野の右側が活発になり、ストレスに対抗するような全身に指令を発信します。 ところが、ストレスが長期間続くと、体は過度の緊張状態になり、ホルモンや自律神経のバランスが崩れることに。 下記のような不調が現れたり、さらには免疫力が落ちて、病気になりやすい体になることもあります。
◆こんな症状ありませんか
体のあちこちに生じる不快な症状。これらは、ストレス脳が原因で起こることもあります。
次のうち、2つ以上が当てはまる人は、「ストレス脳」かもしれません。
- ▼吹き出物が出やすい。
- ▼いつも体がだるい。
- ▼頻繁に頭痛がする。
- ▼肩や首のコリが取れない。
- ▼ぐっすり眠れない。
- ▼便秘や下痢をしやすい。
ストレス脳になりやすいかどうかは、性格的な要因によるところもあります。次のテストで診断しましょう。 もしもストレス脳になりやすいという結果が出ても、大丈夫! 次ページ以降でリラックス脳でいられる秘策を紹介します。
Q1 | Q2 | Q3 | Q4 |
今度行く旅行について、親友とメールでやり取り、しかし、突然返信が来なくなって1時間が経ちました。どうしますか? | スーパーに買い物に来ました。牛乳を買うのにパックを取るとき、いつもどうしていますか? | 夜、家でくつろいでいると連絡もなしに夫が同僚を連れて帰ってきました。家は散らかっています。どうしますか? | 結婚記念日に夫が珍しくプレゼントをくれました。開けてみると、ちょっと趣味に合わないネックレス。さてどうしますか? |
A.電話をかけてみるか、メールをしてみる。 | A.手に取りやすい手前にあるパックを取る。 | A.すぐに片付け、テキパキと対応する。 | A.たまに着けてみる。 |
B.自分のメールを見直して、ひたすら連絡を待つ。 | B.賞味期限を考え、棚の奥にあるパックを取る。 | B.慌ててしまい、夫に怒りをぶつける。 | B.絶対に着けない。 |
2つ以上Bがあれば、ストレス脳になりやすい人、といえそうです。 それぞれ、どんな性格がその行動を招いているのかをまとめました。 |
|||
ネガティブ思考 | 神経質 | パニック傾向 | 完璧主義 |
小さなことでも否定的にとらえたり、自分を否定して考えるため、ストレスを受けやすい。 | あちこちに気が回り、いろいろなことが気になるので、その分、ストレスを受けやすい人。 | 脳の右側がストレスを過敏に受けているため、想定外のことが起きると、冷静さを失う。 | 求める理想が高いほど、現実との間にギャップが生じ、ストレス脳になるきっかけに。 |
■リラックス脳を作る3つの秘訣
ストレスを感じたら、脳をリラックスさせる方法を考えましょう。 いつ襲ってくるかもしれないストレスに備えて、どこででもできる3つの秘策を紹介します。
●秘策Ⅰ:好きな香りを楽しむ
アロマ効果でストレス脳がリラックス脳に
好きな香りを嗅いだときは、パッと気持ちが明るくなり、反対に、不快な臭いに遭遇すると、瞬間的に鼻をふさぎたくなるものです。 このように、嗅覚は脳が大変素早く快・不快を判断できる感覚です。そこで、心地よい香りをかぐことが、 ストレス脳を改善する近道であることがわかってきました。 日本大学の酒谷薫先生は、香りがリラックス脳の形成に効果があるという論文を発表。 某テレビ番組で、ストレス脳と診断された女性が2週間、好きなアロマを嗅いだ後に計算に挑戦するという実験を行いました。 すると前頭前野の左側の血流が優位になり、リラックス脳に変わったことがわかったのです。 リラックス効果があるアロマとしては、ラベンダーやゼラニウムなどが有名ですが、 好きな香りでなくてはリラックス効果は期待できません。 好きになれるアロマを見つけて試してみましょう。
【関連項目】:『アロマセラピー』
●秘策Ⅱ体の芯で呼吸する
ストレスを感じたら、まずは深呼吸をしてみましょう。 ここでは、体に元気を呼び込める呼吸法を紹介します。
◆中国の伝統療法「気功」にリラックス呼吸法がある
中国の伝統医学では、人の体の中に巡っている「気」が重視され、その流れを整える「気功」 という療法があります。酒谷薫先生によると、「気功の『気』は現代科学でいうと、脳の神経伝達物質に大いに関係している」 のだそうです。例えば、やる気を生み出すドーパミン。この物質が分泌されると、快感を覚え、ポジティブな気分になりますが、 増えすぎると興奮状態になってしまいます。それを鎮めて安静化するのがセロトニンです。 この2つのバランスがとれている状態が、活力に満ち、リラックスした「気」が流れている状態といえそうです。 セロトニンを増やすには、太陽を浴びることと、深呼吸をすること。 ここでは、気功の基本とされている呼吸法を紹介します。1日1回、またはストレスを感じるたびに実行しましょう。
- 1.基本姿勢
-
・ゆったりとした服装で椅子に座ります。深く腰を掛けず、少し前側に。
背筋をスッと伸ばして肩やお腹の力を抜き、体全体をリラックスさせて。 -
・両足を平らに床につけるのが基本。膝は少し開きましょう。
両手を重ね、おへそから9cmほど下の位置の下腹部に軽く当てます。 - 2.呼吸の基本
-
・背筋を伸ばしたまま前を見て、顎を少し引き、目を軽く閉じます。
息を吐くときも吸うときも、「鼻から」が基本です。 - 3.息を吐く
-
・体を前に傾けるようにして、鼻から息をゆっくり吐きます。
肺の中に残っている汚れた息を、全部吐き切ることをイメージして。 - 4.息を吸う
-
・体を起こしながら、鼻から息を吸い込みます。
肺ではなく、下腹部で空気を吸い込むことをイメージしましょう。 - 5.息を止める
-
・いっぱいまで吸いこんだら、下腹部に力を込めて息を止め、5~10秒キープ。
最後に鼻から静かに息を吐き出します。
●秘策Ⅲ自分の体を感じ取る
日常のストレスを超えて大きなショックを受けたとき、優しく体に触れてストレス脳を脱しましょう。
◆自分の体を手で感じ取ると自然と気持ちが落ち着く
心理的ショックを受けると、誰もが気持ちが不安定になり、大きなストレスに襲われます。 それが予期せぬ出来事なら、なおさらでしょう。 ここでは、東日本大震災の際、被災者の皆さんに紹介されたリラックス法をまとめます。 自分の体を自分の手で感じてみてください。優しく体の一部をさすったり、抱きしめたりしながら、ゆっくりと呼吸をしていくと、 自然と気持ちが落ち着いていきます。体のどんな部位でもOK。一番い方法で触れていきましょう。
●物忘れに脳トレは、逆効果になることがある
ストレス脳を放置していると、自律神経やホルモンのバランスが乱され、さまざまな体の異常を引き起こしますが、 最近、脳そのものにもダメージを与えることがわかってきました。 例えば「物忘れが増えた」という人は、ストレス脳かもしれません。ストレスによって分泌されるストレスホルモンが、 学習や記憶を司る脳の海馬に作用して、物忘れなどの症状を引き起こすのです。 認知症の兆候ではなく、いわば脳の使い過ぎによる物忘れ。そんな時に、脳トレなどで脳を鍛えるのは逆効果です。 脳をリラックスさせて、ストレスをリセットさせましょう。 実は、体がリラックスすると脳もリラックスできるのです。脳と体は五感によって一つになっていると考えましょう。
◆手の力を緩めることで脳もリラックス
その考え方を応用した、どこでも簡単にできる呼吸法を紹介しておきます。 まず、両手をぎゅっと握ります。そして、息を吐きながら両手の力をゆっくり抜いて開き、自然呼吸に戻りましょう。 手を握るという体の力が緩んでリラックスすることで、脳もリラックスしていきます。