ストレスと心身症

軽度なストレスは、生活に張りを与えてくれますが、過剰なストレスがかかり続けると、体にも心にも大きな影響を及ぼします。 ストレスの影響が体に現れて、病気が発症したり、症状の悪化や治りにくさを招くこともあり、そのような状態を『心身症』と呼びます。 特に「失感情症」の人はストレスを自覚できないことが多いので注意が必要です。


■ストレスと心身症

私たちの体には、健康を守るための仕組みが備わっています。 例えば、自律神経やホルモンは、体の状態を一定に保ったり、さまざまな臓器の働きを調節しています。 また、免疫機能は、病原体など外から侵入してくる異物から体を守っています。 これら自律神経系や内分泌系、免疫系などは、連携して働いており、互いに影響しあっています。 ストレスが適度なものであれば、その刺激に応じて自律神経系などが働き、心身症は起こりにくいと いえます。しかし、強いストレスを受け続けると、自律神経系の働きが乱れたり、その乱れが 内分泌系や免疫系の働きにも影響を与えて、心身症が起こることがあります。


■心身症が起こる仕組み

自律神経には、主に心身を緊張させるように働く「交感神経」と主にリラックスさせるように働く 「副交感神経」があります。脳がストレスを感じると、交感神経の働きが強まりますが、 次に副交感神経の働きが強まり、体の状態を元に戻そうとします。 しかし、強いストレスがかかり続けると、交感神経が強く働き続けたり、それを打ち消そうとして 副交感神経の働きが強くなりすぎたりして、バランスが乱れます。
内分泌系も、通常はストレスから体を守るように働きますが、強いストレスがかかったり、 自律神経系が乱れると、ホルモン分泌のバランスが乱れます。
また、ストレスが長く続くことによって、免疫系も影響を受けることがあります。


■心身症の可能性が考えられる病気

▼頭痛、めまいなど
自律神経系の働きが乱れ、筋肉が緊張することなどによって頭痛が起こることがあります。 めまいの中にも、ストレスが大きく影響しているものがあるといわれています。

▼胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群
自律神経系の働きが乱れ、粘膜の血流が低下して、潰瘍ができやすくなったり、 腸の働きが乱れて下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群になることがあります。

▼糖尿病
膵臓から分泌されるホルモンである「インスリン」の働きが悪くなり、血糖値が高くなることがあります。

▼狭心症、心筋梗塞
自律神経系の働きが乱れ、血管が収縮して、起こりやすくなることがあります。

▼ぜんそく、アトピー性皮膚炎 
詳しい仕組みはわかっていませんが、ストレスによって症状が悪化することがあります。

■ストレスによるダメージを受けやすい人

▼仕事を一人で抱え込む
いつも時間に追われ、何かしていないと落ち着かず、さまざまなストレスを自ら抱え込みがちです。

▼細かいことにこだわる
他人から見れば細かいことまで、自分の思い通りになっていないと、ストレスを感じてしまいます。

▼常に刺激を求める
冒険好きの性格で、あちこちに手を広げ、うまくいかないことがあると、それがストレスになってしまいます。 賭け事がすきなのもこのタイプです。

▼自尊心が強い
高い目標を掲げがちで、目標と現実のギャップがストレスになります。

▼責任感が強い
常に自責の念を持ちやすく、ストレスを抱えることになります。

▼物事を決め付ける
自分が決めたとおりにならないと、ストレスを感じてしまいます。

■心身症になりやすい人

多くの人は、ある程度以上働き続けると「きつい」「疲れる」「だるい」「もう嫌だ」と感じ、 これが休養をとるサインとなって、働きすぎによって受けるストレスに歯止めがかけられます。 しかし、このようなサインを感じにくく、気付かないうちに働きすぎに陥ってしまう人もいます。 このような人は「失感情症」である可能性があります。 「失感情症」とは、「自分の感情に気付きにくい状態」のことで、さまざまな感情や気持ちを 自覚したり、うまく表現することができません。その結果、さまざまなストレスを溜め込んで、 心身症を招きがちです。このような失感情症の人には、「まじめ」「働き者」「責任感が強い」 などの性格の人が多いといわれています。