発達障害
『大人の「注意欠如・多動症(ADHD)」』
「注意欠如・多動症(ADHD)」は、
多動性(過活動)や衝動性、また不注意を症状の特徴とする神経発達症もしくは行動障害です。
多動性障害の発症率は学齢期で3~7%であり、その内30%は青年期には多動と不注意は目立たたなくなり、
40%は青年期以降も支障となる行動が持続し、残りの30%は感情障害や
アルコール依存症などのより重篤な精神障害が合併します。
ADHDが報告された頃は、ADHDは子供特有の病気と考えられており、成長に従って多動が目立たなくなることから、ADHDの特徴も消失するものと考えられていました。
しかしADHDの児童の追跡調査から、成人期に達しても多くの患者では不注意などの症状が残る事が明らかになりました。
このことは医学界でも論争を呼びましたが、現在では発達障害の特性はおおむね生涯に渡って持続するものであるという事が受け入れられています。
ただし、鬱病などでADHDに似た症状が起ることがあるので、発達障害との鑑別には注意が必要です。
『大人の「注意欠如・多動症(ADHD)』は、適切な治療によって社会生活で生じる支障をコントロールすることが可能です。
■発達障害『大人の注意欠如・多動症(ADHD)』の特徴
発達障害とは、生まれた時から脳の一部の機能に偏りがあることで生じる、言語や行動などの発達に関する特有の特性(症状)を指します。 ただし、発達障害があっても、軽度の場合や、周囲の環境によっては、子供の頃には見過ごされてしまうことがあります。 しかし、大人になり、就職や結婚などによって行動の範囲が広がったり、人間関係が複雑になったりして、問題が生じて対処しきれなくなったことで、 発達障害を疑い、医療機関を受診する人が増えています。 発達障害の一つである注意欠如・多動症(ADHD)は、成人の3~4%にあるとも考えられています。 大人のADHDでは、主に次のような特性が現れます。
- ▼多動性・衝動性
- 子供の時に気付かれることが多く、大人になると明らかな多動性や衝動性は目立たなくなる傾向があります。 ただし、大人になっても手足の動きや内面の落ち着きのなさが残ることがあり、「貧乏ゆすりなど目的のない動きをする」 「感情が不安定になりやすい」「過度のおしゃべりや不用意な発言をする」などの言動が見られることがあります。 これらのほかにも、衝動買いを繰り返したり、アルコールや薬物への依存が起こったりするなどの特徴が見られることもあります。
- ▼不注意
- ADHDのある人が社会に出てから仕事上の問題として現れるのが不注意です。 「会議や事務処理で注意を持続するのが難しい」「単純なミスが多い」「片付けが苦手、忘れ物が多い」「指示をすぐに忘れる」 「人の話をきちんと聞けない」など、働く上での問題として現れることが多くあります。 一般に大人になるとさまざまな場面で社会的に許容されない言動の範囲が広くなり、責任も大きくなります。 そのため、ADHDのある人は、仕事など社会生活に支障を来しやすくなり、自己否定感が強くなってしまいがちです。
■大人のADHDの治療
大人のADHDの治療では、薬物療法や心理社会的治療が行われます。
●薬物療法
薬は、ADHDを根本的に治療するものではありません。 しかし、薬物療法によって、一時的にコントロールし、社会生活での困難さを軽減することが期待できます。 大人のADHDの治療薬には、メチルフェニデート徐放錠やアトモキセチン、グアンファシンがあります。 これらの薬は、ADHDの特性である多動性・衝動性や不用意に対して、効果が認められています。
- ▼メチルフェニデート徐放錠
- 脳内の神経伝達物質の一種であるドパミンの濃度を上昇させる薬です。 服用後、効果が速やかに現れ、12時間ほど続きます。
- ▼アトモキセチン、グアンファシン
- 脳内の神経伝達物質の一種であるノルアドレナリンの働きを調整する薬で、速効性はありませんが、効果が持続するのが特徴です。
これらの薬の効果の現れ方はその人の特性によって異なるため、個人差があります。 また、メチルフェニデート徐放錠、もしくはアトモキセチンとグアンファシンのずれか1種類だけでは、十分な効果が現れない場合は、併用することもあります。 ADHDの治療で使われる薬の副作用には、頭痛や食欲不振、吐き気などがあります。 また、メチルフェニデート徐放錠では、不眠や動悸などの副作用が現れることがあります。 副作用の現れ方には個人差がありますが、いずれも軽微なものとされています。 副作用が軽い場合は、効果を見ながら容量を徐々に増やしていきます。
●心理社会的治療
ADHDの特性によって生じる支障に対処するために、心理社会的治療が行われます。 ADHDについてよく知り、ADHDのある自分を理解することを通して、自己肯定感を高めることに繋げていきます。 また、社会生活の様々な場面での対処法を身に付け、習慣化していきます。 そのための有効な方法の1つとして、一部の医療機関で行われている「グループ・プログラム」があります。 グループプログラムでは、ADHDの特性によって生じる支障について、同じ悩みを持つ人同士が集まって悩みを共有し、 話し合いなどを通して新しい知識やスキルを習得していきます。 ADHDのある人たちと出会い、会話をすることで、共感が得られたり、自分の特性が明確になって自己理解が深まったりするとともに、 自分が抱えている困難に対処していけるようになることが期待されます。 グループ・プログラムを行っている医療機関は、少ないのが現状ですが、徐々に増え始めています。 参加を希望する場合は、担当医や医療機関、地域の精神保健福祉センターに相談してみましょう。