慢性疲労症候群(CFS)

慢性疲労症候群』の症状は、「体を動かせず、日常生活が送れないほどの疲労感・脱力感」 「微熱、頭痛、のどの痛み、リンパ節の腫れ、筋肉痛、関節痛」「思考力・集中力の低下、不眠、過眠」「気分の落ち込み」などが6ヶ月以上続く場合です。 慢性疲労症候群の原因は、過去に感染して潜伏しているさまざまなウィルスが、ストレスなどの影響で免疫力が低下すると、活動を再開し、 それを抑え込もうと各種の免疫物質(インターフェロン、TGF-βなど)が体内でつくられ、悪影響が生じるのです。 慢性疲労症候群の治療の中心は、「漢方薬、ビタミンB12、C、SSRI」などの薬物療法ですが、認知行動療法などもあります。


■「慢性疲労症候群(CFS)」とは?

忙しい現代社会では、多かれ少なかれ、多くの人が慢性的な疲労を感じていますが、 一般的な慢性疲労はある程度の休養をとれば解消されます。 しかし、慢性疲労の原因となる病気がないのに、非常に強い疲労状態が長期に続き、 日常生活に支障をきたすほどの疲労に襲われる「病気としての慢性疲労」もあります。 これが『慢性疲労症候群(CFS)』です。 「慢性疲労症候群(CFS)」の慢性疲労は、一般的な慢性疲労とは異なり、体を動かせないほど強く、 休養をとっても軽減されません。

「慢性疲労症候群」では、非常に多岐にわたる不定愁訴があり、 内科を受診しても通常の血液検査などでは異常が見つからず、精神科を受診するよう勧められたり、 精神科を受診しても不定愁訴を説明できるような精神疾患が見つからずに診断書がもらえなかったり、 学校や会社を休み「怠け病」と陰口を叩かれたりと、周囲の人々の理解が得られないばかりか、 医療関係者の間ですら、「慢性疲労症候群(CFS)」の認知度は低いのが現状です。 診断基準は定められていますが、正しい診断を受けるまでに何年もかかることもあり、 つらい思いをする人も少なくありません。なかには、周囲の無理解などから気分が落ち込み、 二次的に「鬱状態」になる人もいます。

慢性疲労症候群患者は、強い慢性疲労のため、日常生活でできることが健康なときの半分以下に減ってしまい、 仕事や学校を休まざるを得なくなったり、家事を行うことができなくなったりします。 人によっては、「椅子に座るのもつらい」「箸やペンさえ持てない」ということもあります。 一般に疲労の感じ方は主観的で、人によって異なりますが、最近は疲労の影響を客観的に評価する検査法も 取り入れられています。日常生活の活動量を「アクティブグラフ」という機器で測定すると、 慢性疲労症候群の患者の活動量は、健康な人よりかなり低下しており、疲労の影響が大きいことがわかります。

慢性疲労症候群は1988年にアメリカで病気の概念が発表されたのですが、 最近では各国でさまざまな研究が進んで、この病気の起こる仕組みなどがわかってきました。


■新しい血液検査法

疲労の程度を評価するためのさまざまな検査法が研究されていますが、現在のところ、慢性疲労症候群の診断は、 主に自覚症状や医師の診察所見を元に行われています。この病気に特有の血液成分を調べることができるようになれば、 より正確な診断が可能になります。現在、低エネルギーで透過性の高い近赤外線光を用いて血液を調べる 「近赤外分光解析」が、慢性疲労症候群の治療に役立つのではないか、という研究が進められています。


■慢性疲労症候群が疑われるときは

強い疲労感などが続き、慢性疲労症候群が疑われる場合は、まず内科を受診し、肝臓や腎臓、甲状腺の病気など、 疲労の原因となる病気の有無を調べます。身体的な病気がない場合には、心療内科や精神科を受診し、 鬱病や神経症などの有無を調べます。これらの病気で疲労が生じている場合には、その治療を受けます。 心身の病気がない場合に「慢性疲労外来」などの専門医を受診することが勧められます。

なお、慢性疲労症候群を短期間で完治させるのは難しく、一般に治療は数ヶ月から数年かかります。 専門医の診断による治療を受け、徐々に症状の改善を図っていくことが大切です。


■その他

▼鬱病と慢性疲労症候群
鬱病では「コルチゾール」というホルモンの血液中の濃度が、健康な人よりやや高い傾向があるのに対し、 慢性疲労症候群では、低い傾向があると報告されています。

▼インターフェロンの副作用
ウィルス性肝炎や肝臓癌の治療に使われるインターフェロンの副作用で起きる「倦怠感」や「発熱」などは、 慢性疲労症候群の症状に似ていることが指摘されています。動物にインターフェロンを投与すると、 脳の神経細胞に影響して疲労状態が作られることも確認されています。