社交不安症

人前で何かをするときに強い不安を感じ、日常生活に支障を来すようになる社交不安症。 「社交不安障害」とも呼ばれています。よく知られている「対人恐怖症」とほぼ同じものです。 「人前で話をする」「会食をする」「知らない人に話しかける」といった、人と関わるほとんどの状況で、不安や恐怖を感じてしまいます。 それによって、「赤面」「体や声の震え」「硬直」「発汗」といった体の症状も現れてきます。 非常に多くの人に見られる病気です。患者さんの大半は、子供のころから、人とかかわるような状況で強い不安に悩んでいることが多いです。


■社交不安症とは?

「失敗したくない気持ち」が不安のもとになる

社交不安症は、「人と話すのが怖い」「視線が気になる」など、人と関わるさまざまな状況で強い不安を感じ、 日常生活に支障を来すようになる病気です。かつては「対人恐怖症」と呼ばれていました。 社交不安症の有病率は高く、人口の約1.8%が一生に一度はこの病気を発症するという研究報告があります。 10歳代半ば~20歳代前半の若い人に多いのも特徴です。 社交不安症があると自分に注意が向き過ぎて、「失敗したくない」という気持ちがあるのに、”自分は人前で失敗する”という悪い予想にとらわれ、 不安を募らせます。さらに”相手に自分の不安や緊張を気付かれ、変な人だと思われて嫌われたらどうしよう”など、常に最悪の場面を考えてしまうのです。 こうした不安は裏を返せば、「よいところを見せたい」「好かれたい」という気持ちの現れです。 「対人関係を完璧にしたい」という気持ちが、結果的に不安につながっているのです。

社交不安症には、人前で顔が赤くなるのが怖い(赤面恐怖)、人前で話すのが怖い(スピーチ恐怖)、視線が怖い(視線恐怖)、 人前で文字を書くと震える(書痙)などの様々な症状があります。 人前で何かを行う時に不安が生じることは誰にでもあります。しかし、社交不安症では極度の不安を感じ、それに伴って、発汗、震え、赤面などの症状が現れます。 そのため、不安を生じさせる場面を回避するようになります。学校や職場に行けない、家から出られないというような状態になると、 毎日の生活に支障をきたしてしまいます。そのままにしていると、 鬱病アルコール依存症を併発することもあります。


●”人前で悪いことが起こる”と思い込んで悪循環に陥る

強い不安を感じるようになるのは、悪循環に陥るためです。 社交不安症のある人は、不安や緊張を隠そうと自分に注意を向け過ぎると、不安や緊張が余計に大きくなります。 やがて、人と接することを避けるようになると、人と接する際の不安や緊張がさらに大きくなります。 こうして悪循環に陥っていくのです。人を避けるようになると、人と接する経験を積めなくなり、社交不安症から抜け出すのが一層難しくなってしまいます。


■社交不安症の治療

薬物療法認知行動療法があります。なかでも高い有効性を示すのが認知行動療法です。 認知行動療法は、心の病気に繋がっている考え方の偏りや行動パターンの偏りを修正し、バランスをよくしていきます。 それにより症状を改善していくのです。また、バランスのとり方を身につけることでストレス対処能力が高くなり、再予防にも繋がります。 社交不安症かもしれないと思った場合は、精神科、心療内科、メンタルクリニックなどを受診することが勧められます。


●社交不安症の認知行動療法の例

社交不安症の認知行動療法の例
社交不安症の認知行動療法の例
社交不安症の認知行動療法の例