内臓脂肪

お腹の臓器の周りにつく内臓脂肪。 蓄積し過ぎると、体に悪影響を与え、命にかかわる病気を引き起こします。 内臓脂肪が体にどのような影響を及ぼすのか、また内臓脂肪を減らすにはどうするればいいのか、ご説明致します。


■肥満のタイプ

内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満に分けられる

肥満は「内臓脂肪型肥満」「皮下脂肪型肥満」の2つに大きく分けられます。 内臓脂肪型肥満は、胃や腸など、お腹の臓器の周りにつくタイプで、男性に多い傾向があります。 一方皮下脂肪型肥満は、皮膚の下に脂肪がつくタイプで、女性に多い傾向があります。 内臓脂肪は健康に影響するさまざまな物質(サイトカイン)を作り出しているので、体に影響を与えやすく、 皮下脂肪は内臓脂肪に比べると体への影響が少ないのが特徴です。


●脂肪蓄積の影響

皮下脂肪、内臓脂肪ともに、蓄積し過ぎると病気を引き起こす

皮下脂肪も内臓脂肪も、蓄積し過ぎると、さまざまな病気を引き起こします。

◆皮下脂肪が蓄積し過ぎた場合

「月経異常」の原因になります。皮下脂肪で多く作られる「レプチン」というホルモンには、月経開始の指令を発する働きがあります。 しかし、皮下脂肪が溜まり過ぎてレプチンが過剰に作られると、常に月経開始の指令が出ている状態になり、 開始の合図の役目を果たさないので、「無月経」などが起こります。 また、レプチンが過剰になると、卵胞(卵子の元)の成熟が抑制され、排卵しにくくなります。

◆2種類の脂肪が蓄積し過ぎた場合

睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。肥満のある人は喉の周りに脂肪がついて気道が狭くなっているので、睡眠中に気道が塞がれやすくなるのです。 さらに内臓脂肪が蓄積すると、横隔膜の動きも妨げられて肺がうまく膨らまず、呼吸の力が弱まり、睡眠時無呼吸症候群を悪化させます。

▼変形性関節症
肥満が膝や腰などに負担をかけ、その結果、関節の軟骨が変性して、痛みが生じるようになります。

以上のような症状は、「BMI指数(体格指数)」が30以上のかなり高度な肥満の人に現れやすくなります。 また、若いころから肥満が続いている人も要注意です。

◆内臓脂肪が蓄積し過ぎた場合

主に、 「脂質異常症」 「糖尿病」 「高血圧」などの「生活習慣病」の原因になります。 内臓脂肪が溜まり過ぎると、内臓脂肪が作るさまざまな物質のうち、体に害になるものが増え、よいものが減ってしまうためです。 これらの生活習慣病は、 動脈硬化の進行を加速させ、 「心筋梗塞」「脳卒中」を招きやすくなります。


●メタボリックシンドローム

内臓脂肪が蓄積し、心筋梗塞や脳卒中発症の危険性が高い状態

内臓脂肪の蓄積のために、心筋梗塞や脳卒中が起こりやすくなっている状態を 「メタボリックシンドローム」といいます。 おへその高さのCT(コンピュータ断層撮影)画像で、内臓脂肪の面積が100平方センチメートル以上になると、 血糖や血圧に異常が生じることが明らかになっています。 この「内臓脂肪の面積100平方センチメートル」は、腹囲で考えると男性で85cm、女性で90cmに相当します。 メタボリックシンドロームの腹囲の基準値は、これを基に定められています。 女性の方が基準値が高いのは、皮下脂肪が多く、その分、腹囲が大きくなるためです。 また、女性が男性に比べて心筋梗塞や脳卒中の発生率が約1/4と低く、発症リスクが男性と同程度になるのは、腹囲が90cm以上のケースです。 ただし、腹囲が基準値よりも低くても、脂質や血圧、血糖などに異常があるとリスクが高いため、注意が必要です。