内臓脂肪と高血圧

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の第一構成要素である「過剰な内臓脂肪」は、 アディポネクチンの減少によって血管壁の弾力性が低下して、動脈硬化、高血圧へとつながります。


■高血圧とメタボリックシンドローム

動脈硬化性合併症が増えている

「血圧」は、「加齢」や「体質」を基盤に、「ストレス」「塩分の過剰摂取」「喫煙」などのさまざまな生活習慣が、 複雑に絡み合って上がっていきます。 しかし最近では、「内臓脂肪の蓄積」が大きく影響していることがわかってきています。 例えば、高血圧の合併症というと、かつては脳の血管が破れる「脳出血」が多かったのですが、 現在は、「心筋梗塞」「脳梗塞」などの、動脈硬化によって起こる病気が大半を占めています。 これは、内臓脂肪の蓄積によって動脈硬化の危険因子が集まってくる 「メタボリックシンドローム」が増加しているためであると考えられます。


●内臓脂肪が血圧を上げる仕組み

血管の壁は、加齢とともに少しづつ硬くなっていき、弾力性を失って広がりにくくなった血管に血液が流れ込むと、 血管の壁にかかる圧力が高くなるので、血圧が上昇します。 それに対して、血圧の上昇を防ぐ働きをしているのが、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカン(生理活性物質) の一種である「アディポネクチン」 という善玉の物質です。アディポネクチンが血管内をパトロールしながら、硬くなりかけた血管壁に働きかけたり、 血管壁の機能をコントロールして、血管を柔軟に、広がりやすくしているのです。

内臓脂肪が蓄積すると、”パトロール役”のアディポネクチンの分泌量が減少して、血管壁の弾力性が低下し、 血圧が上がりやすくなります。また、過剰に溜まった内臓脂肪からは、血管を収縮させる 悪玉の「アンジオテンシノーゲン」という物質が分泌され、このことも、血圧が上がる要因の一つです。 さらに、アディポネクチンが減少すると、インスリンの働きが低下して、「インスリン抵抗性」が起こります。 すると、膵臓からのナトリウムの排出が低下して、血液中のナトリウム量が多くなります。 その結果、血液中のナトリウム濃度を一定に保つために、血液の量が増えて、ますます血圧が上がっていくのです。