内臓脂肪と糖尿病
「糖尿病」の発症原因として、最近は、遺伝的な体質よりも 過食や運動不足などの生活習慣を原因とする糖尿病(内臓脂肪による発症)が増加しています。
■糖尿病
『糖尿病』には、何らかの原因で膵臓からインスリンが分泌されなくなる「1型糖尿病」と 遺伝的な体質や生活習慣を背景として起こる「2型糖尿病」があり、 「内臓脂肪」が関係しているのは2型糖尿病です。 2型糖尿病に体質がどの程度関与するかは、人によってさまざまですが、 最近は、血縁者に糖尿病の人がいないなど、体質的な関与が強くなくても糖尿病になる人が増えており、 体質よりも過食や運動不足などの生活習慣を原因とするケースが多くなってきています。
「糖尿病の判定基準」では、空腹時血糖値が126mg/dl以上の場合に糖尿病と判定されますが、
「メタボリックシンドロームの診断基準」では、
「境界型」(空腹時血糖値で110mg/dl以上、126mg/dl未満)の段階から注意が必要として、
メタボリックシンドロームの要素の1つに入れています。
これは、内臓脂肪型肥満が背景にある場合は、高脂血症や高血圧症を合併していることが多く、
たとえ境界型の段階でも、動脈硬化が急激に進んでしまう可能性が高いためです。
また、生活習慣を原因とする糖尿病は年齢に関係なく起こります。
●内臓脂肪が血糖値を上げる仕組み
「糖」の原料となるのは、脂肪細胞が分解されてできた「グリセロール」です。 グリセロールは肝臓で糖に作り変えられ、血液中に送られます。 血液中の糖は、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きによって、 筋肉などの全身の組織に取り入れられ、エネルギーとして使われます。 糖尿病は、インスリンの分泌が低下したり、働きが悪くなることで、糖が十分に利用されずに、 血液中に増えてしまった状態を指します。 そのインスリンの働きを活性化しているのが、脂肪細胞から分泌される 「アディポネクチン」という物質です。 アディポネクチンはインスリンを元気にして、筋肉などに糖を取り入れさせて、血液中の糖の量を一定に保っています。
内臓脂肪が過剰に蓄積されると、肝臓へ送られるグリセロールが増え、糖も多くなります。 その一方で、アディポネクチンの分泌が低下して、量が少なくなります。 すると、インスリンの働きが低下して、血液中の糖をうまく処理できなくなります。 この状態を「インスリン抵抗性」といいます。 ただでさえ糖が増えているのに、エネルギーとして利用されないため、 糖が血液中で余ってしまい、血糖値が上がってくるのです。 また、アディポネクチンには血管壁を健康に保つ働きがあるため、 アディポネクチンの分泌量の低下は、動脈硬化の直接の原因になります。
体質的な要因が強い人などでは、痩せていても糖尿病を発症することがありますが、 内臓脂肪型肥満を背景とした糖尿病でも、進行すると体重が減ってきます。 血液中の余った糖は脂肪細胞に蓄えられますが、このときにもインスリンの働きが必要です。 しかしインスリン抵抗性が進むと、蓄えることもできなくなり、徐々に痩せてきます。 その状態に至る前に、適切に対処することが大切です。