内臓脂肪とその他の病気

内臓脂肪の蓄積は、高血圧・高血糖・高脂血などの動脈硬化性疾患だけではなく、 「痛風」や「癌」にも関係していることがわかってきました。


■痛風

蓄積した内臓脂肪が尿酸の産生を増やし、排泄を減らす

内臓脂肪の蓄積は、生活習慣病を招き、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の原因になります (→内臓脂肪と生活習慣病)。 しかし最近の研究では、他にもさまざまな病気に関係することがわかっています。 その1つが『痛風』で、血液中に「尿酸」が増えすぎて、 その結果が足の指などの関節に蓄積して炎症を起こし、激しい痛みが生じます。

痛風の原因となる尿酸は、細胞に含まれる「プリン体」という物質が、肝臓で代謝される過程でできる老廃物です。 肝臓で作られた尿酸は、腎臓で濾過されて、体外に排泄されます。 しかし内臓脂肪がたまっていると、尿酸の産生が増え、腎臓からの排泄が低下して、体内の尿酸が増えてしまいます。 内臓脂肪から放出された中性脂肪が肝臓で代謝される過程でプリン体が増えることなどが、理由の1つと考えられています。 まだはっきりとはわかっていませんが、肥満と尿酸値の関係を調べると、肥満度が高いほど、尿酸値も高くなっています。


●癌①

アディポネクチンの減少が癌細胞の増殖を進める

内臓脂肪がたまっていると、いくつかの種類の癌のリスクが、多少高くなることがわかってきています。 リスクの1つは、内臓脂肪が増えると、体に良い影響を与える物質が減り、癌細胞が増殖してしまうことです。 その物質とは、内臓脂肪から分泌される「アディポネクチン」です。 アディポネクチンは、細胞の過剰な増殖を抑える作用を持っています。 しかし内臓脂肪がたまりすぎると、アディポネクチンが減ってしまいます。 そのため、癌細胞の増殖を抑えられなくなり、癌が進行するのです。 大腸癌の患者さんはアディポネクチンの量が少ないことがわかっており、今のところ男性では、 癌の中でも特に大腸癌と関係が深いとされています。


●癌②

内臓脂肪そのものが一部の癌発生のリスクを高める

内臓脂肪は一部の癌の発生そのものにかかわることもわかってきています。

▼乳癌、子宮体癌
「乳癌」「子宮体癌」は、女性ホルモンの「エストロゲン」が多くなると発症しやすくなるとされています。 エストロゲンは、主に卵巣で作られる一方、少量ですが脂肪細胞でも作られます。 閉経後は卵巣の機能が低下し、体内のエストロゲンが大きく減少します。 しかし、内臓脂肪や皮下脂肪が蓄積していると、脂肪の蓄積によってエストロゲンが増え、 乳癌や子宮体癌のリスクが高くなります。

▼肝臓癌
内臓脂肪から放出された過剰な中性脂肪は肝臓にたまります。 内臓脂肪が多いほど肝臓にたまる量も多くなり、「脂肪肝」の状態に進展します。 そして脂肪肝の約1割が「脂肪肝炎」や肝臓が線維化して硬くなる「脂肪性肝硬変」に進み、 その一部に「肝臓癌」が発生します。 肝臓癌は、日本ではウィルス性のものがよく知られていますが、欧米では脂肪が原因の肝臓癌が増えています。 日本でも肥満のある人が増えているため、今後増加する可能性があります。